ウクライナ危機の裏側 - ブレジンスキーの私怨!? - バイデン政権閣僚たちの怨念とは!?
更新日:「米国は、なぜウクライナ危機を誘発したのか?」
国際外交舞台の重鎮ズビグニュー・ブレジンスキーは 過去半世紀の米外交を牛耳って来た。2017年に逝去したが、現バイデン政権閣僚チームにはその影響が色濃く反映されている。
「ブレジンスキーがわからないと、ウクライナ問題がわからない」というのがジャーナリスト山口敬之氏の主張。本稿は次に紹介する山口氏の動画を参考にさせて頂いた。
ブレジンスキーにはロシアだけでなく、ウクライナにさえ憎悪を抱く過去を持っていたことがわかる。
ブレジンスキーとは?
本名 | ズビグニュー・カジミエシュ・ブレジンスキー* (Zbigniew Kazimierz Brzeziński) |
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生没年 | 1928〜2017年 |
生誕地 | ポーランド |
職業 | 米大統領補佐官 (国家安全保障問題担当)、 政治学者 |
*姓は「ズビグネフ」と表記されることも。
生い立ち
生粋のユダヤ系ポーランド人であり、米国籍を取得したのは30歳。
誕生 | ポーランド・ワルシャワ - 名門貴族で外交官の家に誕生 |
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幼少期 | ドイツ・ベルリン - ナチス・ドイツの台頭を目撃 |
少年期 | ソ連・モスクワ - スターリンの大粛清を目撃 |
学生時代 | カナダ - ドイツがポーランド侵攻。大戦後も共産化したポーランドへの帰国は困難に。 |
エピソード
- マギル大学(カナダ)、ハーバード大学大学院で博士号を取得し、学者としてスタート。
- 1971年には半年間を日本で過ごし、急速な経済発展を遂げたものの政治的には「ひよわな花」であると日本を評した。日本生まれの外交官ライシャワーの教え子でもある。
- 同じポーランド出身のローマ教皇ヨハネ・パウロ2世と密接に連携し、1989年「東欧革命の黒幕」とみなされている。
政治的立場と活動
民主党系大統領のキングメーカー
1966年 | ジョンソン政権 大統領顧問 |
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1977年 | カーター政権 大統領補佐官 |
2008年 | オバマ政権 外交顧問 |
まったく無名だったカーターをロックフェラーに推薦し、1973年日米欧三極委員会で紹介。その数年後カーターは大統領に当選。学生オバマを見出したのは、コロンビア大学の教授時代。
地盤、看板、カバンのない素人をアメリカ大統領に育て上げた。ブレジンスキーの眼力は、超人的。
ロックフェラー両建ての方翼を担う
過去半世紀の米外交システムをざっくり言うと、共和党政権ではキッシンジャー、民主党政権ではブレジンスキーが外交を牛耳って来た。
両者ともに関係が深いのはD.ロックフェラー。
ブレジンスキーの出自
ポーランド生まれのカナダ育ちながら、世界情勢に決定的な影響力を持つ米国の大統領補佐官、それも安全保障問題担当になった。
移民国家だからと言えばそれまでだが、これも奇妙な話だ。米国籍に帰化したのは1958年、30歳の時。
ブレジンスキー家
ブレジンスキーの祖先は、ウクライナに荘園*(現在のベレジャニ市)を持つポーランドの名門貴族(シュラフタ*)。
こうした出自から、ブレジンスキーはロシアだけでなく ウクライナへの個人的憎悪も持っていたと指摘されている。
Brezenski | ブレジンスキー氏 |
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Berezany | ベレジャニ市(ブレジンスキー家の土地の意) |
*ウクライナに荘園 - ウクライナ西部はかつてポーランドの植民地であった。
*シュラフタ - 下記参照。
ポーランド貴族階級「シュラフタ」とは
シュラフタとは、ポーランドの国王選挙投票権を保有した 貴族的階級。
「貴族」という概念が薄いポーランドでは、便宜上シュラフタがそれに該当。西欧の貴族よりも数が多く、もともとは国防の戦士層であったという歴史から、「士族」と呼ぶこともできる。
寛容だったポーランド王国
当時のポーランドは非常に寛容であり、シュラフタ層の母語や宗教は多様であった。タタール人、ドイツ人、スウェーデン人、イスラム教徒でもシュラフタになれたのだ。
カトリック改宗が条件ではあったものの、ユダヤ教徒でも迫害どころか貴族になれたのがポーランドのシュラフタ制度であった。
外国から標的にされたシュラフタ
ソ連によるカチンの森事件で虐殺されたポーランド将校の多くが、シュラフタ出身者。身分制度*を共産主義の敵とみなされたのだ。
名門シュラフタであるブレジンスキー家の関係者が犠牲になったことは、想像に難くない。
*1791年ポーランド憲法では、全国民にシュラフタと同等の権利を与える国民国家建設が目的とされた。日本の明治維新において、全国民に士族と同等の権利を与えることを目指したのと共通する。
ウクライナへの憎悪!? - ポグロム
ウクライナとポーランド自体が、ロシア・ドイツ両大国に挟まれた緩衝地帯バッファゾーン。
ゆえにその歴史は、常に悲惨な戦争や事件の舞台であった。特にユダヤ系住民への同情は禁じ得ない。
100年間に四度もの大虐殺
ポグロム | ロシア/ウクライナによる虐殺 |
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ホロコースト | ナチス・ドイツによる虐殺 |
ホロドモール | スターリンによる人為的な大飢饉 (飢餓ジェノサイドと評される) |
カチンの森虐殺 | ソ連によるポーランド将校捕虜大虐殺。NKVD(プーチンが所属したKGBの前身)が建設した強制収容所にて。 |
この100年間、何度も大量虐殺の憂き目に。ロシア、ウクライナ、ドイツへの憎悪・怨念を抱いていないはずはないだろう。
それぞれの事件は凄惨で、筆者は詳述を控えたい。まったく日本人の理解を超えている。
生き残った方々がアメリカへ亡命した例も多く、ブレジンスキー家もその一つ。後述するブリンケン国務長官やヌーランド国務次官など、現バイデン政権の閣僚たちもそれに含まれる。
*1990年ソ連が自国の犯罪を認め謝罪。2010年4月にプーチン首相は、ロシア西部カチンにポーランド首相を招き慰霊式典を開催。その際、ポーランド大統領夫妻が搭乗した飛行機が墜落という新たな悲劇も。
ウクライナへの憎悪
1989年ベルリンの壁が崩壊する十日前、ブレジンスキーはソ連にあるカチンの森事件記念碑を訪問。
ウクライナ危機2022で ウクライナを戦場にし、事実上見捨てているアメリカの姿勢は 奇妙ではないだろうか。
ウクライナ危機を誘発しておきながら、ウクライナを助けない。子供たちが巻き添えを食らうのに、地上戦すら主張した。
米国閣僚たちの出自を知ると、ウクライナをそもそも憎悪していた背景があったことが理解できる。
山口敬之氏の鋭いブレジンスキー分析
ウクライナ系ユダヤ人 ≠ ウクライナ人
ウクライナ系ユダヤ人だからと言って、ウクライナに愛国心があるとは限らない。ここに挙げた人物たちについては、むしろウクライナを憎んでいる。
ユダヤ民族の無国籍主義(グローバリズム)
そもそも世界各地に散らばっているユダヤ民族には、グローバリストが多い傾向がある。
それぞれの居住国への愛国心よりも、民族的アイデンティティの方が上位。生活の便宜上、居住国のパスポートは保持するだけ。
もちろんイスラエルに居住する場合は別だが、そのほとんどがナショナリストを嫌悪するグローバリストである傾向を指摘されている。
ジョージケナン - NATO東方拡大は厳禁
筆者は必ずしも同意しないが、米国の良心と評された外交官ジョージ・ケナン。冷戦における対ソ戦略を決定づけた人物である。
駐ソ連大使だったケナンは、いち早く共産主義の脅威を察知。ソ連への「封じ込め」戦略をアメリカと西側の指針とさせた。
NATO東方拡大による戦争勃発を指摘
そのケナンは1997年2月、下記の警鐘を鳴らしている。
NATO東方拡大は厳に慎まなければならない。ジョージ・ケナン
ロシアを反米に追いやり、深刻な戦争を誘発することがケナンには明らかだったのだ。ロシアが核兵器を持つ大国であることを忘れてはいけない。
ブレジンスキー - NATO東方拡大を主張
ところがブレジンスキーは、ロシア(ソ連)の反発を想定しながら、あえてNATOの東方拡大を主張。
東欧が核戦争に巻き込まれてもいいということなのか?
「壮大なチェス盤」
ケナン発言と同じ1997年に発表した「壮大なチェス盤(邦題:ブレジンスキーの世界はこう動く)」にて こう主張している。
ロシアの覇権を阻止すべく、NATOを東方に拡大すべき。ブレジンスキー
- ウクライナを西側に帰属させる
- ロシアは強く反発するが西洋化し、無害化すれば良い
これは東欧カラー革命で成し遂げたように、ロシアを戦争で崩壊させた後、ロシア人政権の転覆を示唆しているものだ。
この方針は2022年バイデン政権に継承されている。
バイデン政権 - ロシア・ウクライナへの怨念
オバマを大統領に育て上げたブレジンスキーは オバマ政権の最高顧問となり、ホワイトハウスに強大な影響力を有していた。
バイデン政権は人事・政策ともに、オバマ政権を継承。
バイデン家のウクライナ疑惑
- バイデン副大統領自身がウクライナ担当
- ウクライナ汚職疑惑は、2020大統領選挙の時点で 息子ハンターともども指摘されている
- 国務長官だったヒラリーともども、ロシアゲート(オバマゲート)への深い関与が疑われている
主要閣僚の共通アイデンティティ
国務長官ブリンケン | ユダヤ系ウクライナ人 クリントン政権のスピーチライター |
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国務次官ヌーランド | ユダヤ系ウクライナ人 (オレンジ革命に関与) オバマ政権で国務次官補 |
財務長官イエレン | ユダヤ系ポーランド人 |
司法長官ガーランド | ユダヤ系ロシア人 |
親・祖父母世代が東欧出身であるユダヤ系。米国人口のわずか2%に過ぎない人々が、これだけ主要ポストを占めている。
ロシア・ウクライナ両国に憎悪を抱くブレジンスキーの世界観に、彼らがシンパシーを持っていないだろうか? それが現在のウクライナ危機に全く影響がないと、誰が言えるだろうか?
米国政治の問題点
- 外国人が 世界最強国家アメリカの外交官になれる
- 特定の民族(アメリカ人でない)が外交ポスト重用
外国人に政治決定を支配されるようでは、アメリカを独立国家とは呼べない。
それは我が国を含む世界の安全保障上、重大なリスク。例えば中国大陸出身者が米国務長官になれば…?
ブレジンスキー憎悪の系譜 - オルブライト国務長官
クリントン政権下の国務長官であった マデレーン・オルブライトの存在も 振り返ってみよう。
米外交のウクライナへの方針を知るには、オルブライト国務長官が主導した コソボ紛争(ユーゴスラビア空爆)が参考になる。
本名 | マデレーン・オルブライト |
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生没年 | 1937~2022年 |
生誕地 | チェコスロバキア |
生い立ち
- ユダヤ系チェコ人であり、第二次世界大戦中は英国に避難。
- ホロコーストで祖父母3人が犠牲
- 戦後チェコスロバキアが共産化したことで米国に移住。
- コロンビア大学でロシア研究。ジョージタウン大学でソ連外交を教授。
教え子たち
- コンドリーザ・ライス国務長官
- 河野太郎 外務大臣
- 山本一太 群馬県知事
好戦的な逸話
- NATOによるユーゴスラビア空爆を主導
- 対イラク経済制裁で約50万人の子供が死亡したという実質上のジェノサイドに対して、「それだけの価値がある」と発言(1996年CBS番組にて)
ナチスの民族浄化を身をもって経験して、ドイツだけでなく、ポグロムを行ったロシアやスラブ系国家に激しい憎しみを抱いており、空爆に消極的な西側首脳をまとめ、ユーゴスラビア空爆を行った。(Wikipediaより)
オルブライトの経歴は、安全保障会議における上司であったブレジンスキーとそっくりであり、同じ怨念・憎悪が見て取れる。
ブレジンスキー書簡
ブレジンスキーの1995年5月書簡にはこうある。
ユーゴへは空爆だけでなく、地上軍投入だけが紛争を終わらせることができる。
コソボ紛争 - ユーゴの悲劇
事実として、米国は国連決議なし、国際法違反をしてまで無辜の市民ごとスラブ民族国家ユーゴを空爆*。廃墟には米軍最新鋭の対ロシア前線基地が築かれた。
*90年代の NATOによるユーゴ空爆には、当時 上院議員だったバイデンも、ユーゴスラビアのミロシェビッチ大統領と直接面会するなど関与している。
ブレジンスキーの怨念は息子にも継承?
ブレジンスキーたちの壮絶な出自には、深い同情を禁じ得ない。悲しい過去は本来あってはならなかったもの。
とは言え、悲しみの連鎖は誰かが断絶しなければならない。笑うのは悪魔だけ。
家族を巻き込んだブレジンスキー
実際に ブレジンスキーは最愛であるはずの息子・娘をその怨念ループに巻き込んでいる。現役駐ポーランド大使である息子は、今やウクライナ危機の当事者となってしまった。
一生を憎しみに捧げる人生を、誰が子や孫に? 草葉の陰でブレジンスキー自身も苦しいのではないだろうか。
負の連鎖をいつ終わらせるのか?
我が日本も筆舌に尽くせない過去があるし、誰かを憎もうと思えば憎むこともできる。しかし、それでは人類の悲劇は終わらない。
我が国の歴史・文化では、怨霊をむしろ神として祭ることで供養し、共生して来た。
一刻も早い停戦と和平、憎しみの連鎖が終わることを祈るばかりだ。
この記事のまとめ
ウクライナ危機の裏側 - ブレジンスキーの私怨!? - バイデン政権閣僚たちの怨念とは!?- 歴代民主党政権ジョンソン、カーター、オバマ、クリントン、バイデンの外交に多大な影響を与えた米外交官ブレジンスキーは、ポーランド系ユダヤ人。
- ポーランドはこの100年でポグロム、ホロコースト、ホロドモール、カチンの森事件などロシア、ウクライナ、ドイツから4度もの大虐殺を被った。
- ブレジンスキー自身も30歳で米国籍取得までに、ナチスやスターリンの非道を目撃。
- ブレジンスキーそっくりな経歴を持つ閣僚が米民主党政権には複数存在。
- ブレジンスキーによるロシア、ウクライナへの憎悪、怨念が、米外交に反映されている可能性が高い。
- ブレジンスキーは核保有国ロシアが激怒することを承知した上で、あえてNATO東方拡大を主張。