包括的性教育の不都合な真実⑥ - ジェンダー主流化による性規範・性道徳の解体
更新日:前回の記事では
- 共産主義者たちは、暴力革命による「体制共産主義」から、マスコミ・教育などを通して大衆の意識をじょじょに変えていく「文化共産主義(文化マルクス主義)」へ、作戦変更した。
- 文化マルクス主義者たちが最も狙っているのは「家庭」。
- 包括的性教育は、文化マルクス主義を広める道具である。
等について みていきました。
第6回目となる本稿では、前回 言及した「文化マルクス主義」を踏まえ、「包括的性教育とジェンダー主流化」について解説します。
包括的性教育の実践書「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」
国際家族計画連盟の悪意 でも触れましたが、2009年にユネスコが中心となり「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」と題した 包括的性教育の指針が発表されました。
それから約18年後、日本でも翻訳され「包括的性教育」がネットを通じて大衆にも認知されるようになったのが2017年。
「包括的」という名称の通り、人の生涯を通した "性生活全般" に関する教育として紹介されるようになりました。
包括的性教育の特徴
包括的性教育の学習において とくに重要視されているポイントは、ジェンダー平等と多様性を含む「人権尊重」の観点。
その証拠に、包括的性教育のガイダンスには たびたび「権利」という言葉が登場します。
性に関する学習は 性の権利(セクシュアル・ライツ)である。
包括的性教育の母体である「性の権利宣言」に登場しているように、「すべての子ども達は、性に対する あらゆる知識やスキルを学ぶ権利がある」と主張しているのです。
包括的性教育8つのキーコンセプト
- 人間関係
- 価値観、人権、文化、セクシュアリティ
- ジェンダーの理解
- 暴力と安全確保
- 健康とウェルビーイング(幸福や喜び)のためのスキル
- 人間の体と発達
- セクシュアリティと性的行動
- 性と生殖に関する健康
※ より詳細な説明は 包括的性教育のキーコンセプト、その根底にある思想とは? をご一読ください。
「性教育」と「セクシュアリティ教育」の違い
包括的性教育のキーコンセプトを読んでみると、聞き慣れない言葉も入っていると感じませんか?
例えば 2と7の「セクシュアリティ」。この言葉の意味をはっきりと理解している人は少ないでしょう。
なぜ「セックス(性別)」ではなく、わざわざ「セクシュアリティ」という言葉を使うのでしょうか?
セックス (sex) |
生物学的な性別 Sex Education(性教育)とは、男性と女性が生まれ持った身体的区別(生殖器、ホルモン、脳の違いなど)という科学的事実を伝えることで、両性が互いに理解しあい、相互補完的な男女関係を基にした家庭と社会の構成員となることを目的とする。 |
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ジェンダー (gender) | 人間社会で身につけた性別
|
セクシュアリティ (sexuality) | 人の性に関する全般
Sexuality Education(セクシュアリティ教育)とは、人間は「性的な存在」であり、生まれながらに性的欲求を持っていることを前提とする。Sex(身体的な性別)とGender(社会的・文化的性別)は違うものだとし、自らの意思で性別を選択し性行為を享受する権利を 幼少時から教えることが目的。 |
「セクシュアリティ」の中の「性自認」とは「自分の性別を自分自身で決めることができる」という概念。
(今日は男、明日は女、もしくは無性なんてことも全然OK!)
そして「性的指向」とは「性的欲求を抱く相手が 必ずしも人間の異性でなくてもOK!」という概念です。
(相手が同性、未成年者でも、さらには機械や動物でも良しとする)
日本語では これらすべてを「性教育」で表現できますが、英語の「Sex Education」「Sexuality Education」は その目的自体が全く別もの。
ユネスコ作成「包括的セクシュアリティ(性)教育」を各国へ強要する理由、それはまさに 上述した 多様な性自認・性的指向までも 幼少時から教育せよ! という強力なメッセージが含まれているのです。
ジェンダー:絶対に変えられない「性」を転覆させる!
次に 3「ジェンダーの理解」について。この言葉の意味を正確に理解している人は 多くありません。
ジェンダー(Gender)という言葉は第二波フェミニズム運動の渦中 米国で生まれました。
「Sex - 身体的な性別(生殖器によって区別される先天的な性差)」に対して「Gender - 後天的につくられていく性別」として登場した概念です。
「ジェンダー」の概念を広めた人物たち
「ジェンダー」の概念を正確に理解するためには、2人の人物の思想が必要です。
一人目はジョン・マネー。もう一人はジュディス・バトラーです。
ジョン・マネー 画像出典
1960年代後半 米国で性転換手術を初めて行ったジョン・マネーが、ジェンダー・アイデンティティ(性自認)、ジェンダーロール(性別役割)、性的指向という言葉を初めて世に紹介します。
彼は「先天的な性別は、後天的な手術や育児方法によって、別の性別に変えることができる」という自身の研究を立証するために 悪魔のような行為を行った人物です。
※ 詳細を知りたい方は下記からどうぞ。
ジュディス・バトラー教授 画像出典
さらに1990年代初め、レズビアンでありポストモダン フェミニストであるジュディス・バトラーの著書『ジェンダートラブル』によって、「ジェンダー」という言葉は大衆に知られるようになりました。
彼女は「身体的な性別(Sex)は相対的なもの。ジェンダー(自分がなりたい性別)によってSexは変更可能」という主張を30年以上前から発信し続け、現在クィア理論*の世界的権威として評価されています。
*クィア理論(Queer Theory) - 性とジェンダーに関する反本質主義的理論であり、人間の性自認とは社会的に構成されるものであり、一人の個人を「同性愛者/異性愛者/男性/女性」などと簡単に定義することはできない、とする考え方。
「ジェンダー」という言葉に秘められた悪意
当初から「ジェンダー」という言葉は、ある意図をもって使い始められました。
それは
- 「男性らしく、女性らしく」等 周囲の大人達から後天的に強制される性別意識を拒否しよう!
- (身体的性別から)自由に解放されよう!(ジェンダー・フリー)
というものです。
前回の記事で述べたように、文化マルクス主義者・共産主義者は 神への反逆を企てる人々。
神から先天的に与えられた
「絶対的なもの = 性別」を転覆させる。
ここから「自分の性別は自分で決めてOK!」という性自認の概念が生まれます。
神への反逆行為の2つ目は、一夫一妻制度の破壊(=伝統的な家族観の破壊)の推進です。
「男性と女性が一つになることで、新しい生命(家族)が誕生する」という、神の定めた絶対的な事実を転覆させる。
ここから 同性愛容認*、第三者の生殖器官(精子、卵子、代理母)を借りてでも子供を持つ、という思想が生まれてきます。
*同性愛の容認 - 「容認」の度合いを超えて、昨今では反LGBTの主張に「差別主義」としてレッテル貼りしています。
欧米先進国において、すでに性別は 男性/女性の二択ではなくなっています。
皆さんは米国版facebookで「ジェンダー(性別)選択」をする際に、一時期50個以上のオプションが出ていたことをご存じでしょうか?
日本でも最近、サイト会員登録の際に「男性/女性/その他」を選ぶ項目が登場し始めています。
- 男性の生殖器をもって生まれたので、
「男性らしく」育ち、将来は「女性と結婚」して子を授かる。 - 女性の生殖器をもって生まれたので、
「女性らしく」育ち、将来は「男性と結婚」して子を授かる。
人類がこの地上に誕生して以来、古今東西 普遍的な真理として存在してきた「男性と女性」。そして「愛し合う男女の結合」によって生まれる新しい命という、絶対に変わらない、変えることができない事実を、単なる「選択肢の1つ」として学校で教えているのです。
・・・頭がクラクラしてきます。けれどもこれが現実なのです。
「ジェンダー平等」と「ジェンダー主流化」
日本でも1990年代以降「ジェンダー平等」という言葉が見受けられるようになりました。
この言葉は、一見すると「同じ人間として男女差別をなくそう!」という善き言葉のように錯覚します。けれども本当の意味での「ジェンダー平等」とは、私たち日本人が一般的に考える「男女同権・性差別撤廃」ではありません。
ジェンダー平等の実現とは、いかなる性自認を持つ人でも、いかなる性的指向を持つ人でも(=同性愛者、小児性愛者、獣姦・AIとの恋愛 でも)認められる社会をつくること。これがジェンダー平等(セクシュアル平等と表現する研究者もいます)の本当の意味です。
そして、こういった先進的な考え(=ジェンダー平等)を社会の "あらゆる場面" に侵入させること、それが「ジェンダー主流化」です。
例:文化マルクス主義の温床である 芸能界、教育界、マスコミだけではなく、ビジネス現場 などでも「LGBTの人々に配慮しよう!」という流れをつくることが、ジェンダー主流化。
ジェンダー主流化は、絶対に変えられない「性」を転覆させるという 共産主義者による神への冒涜・反逆行為を、正当化するためにつくられた言葉なのです。
ジェンダー主流化を さらに詳しくみていきます。
ジェンダー主流化(gender mainstreaming)とは?
ジェンダー主流化とは「政府などの公的機関が、あらゆる政策を決定していく上で(すなわち、全ての分野において)、ジェンダー平等を目指す」というもの。
1995年に開催された北京世界女性会議から本格的に認知が広まった概念であり、国連経済社会理事会(ECOSOC)は「ジェンダー主流化の目的は、ジェンダー平等の達成である」と定義しています。
ジェンダー主流化に隠された悪意
「あらゆる政策全般にジェンダー平等の視点を取り入れる」
このように聞くと、一般的な感覚としては「男女平等」のことだと錯覚するでしょう。しかし すでに述べたように、「ジェンダー平等」と「男女平等」は、まったくの別物。
男女平等 | 機会、賃金の平等 |
---|---|
ジェンダー平等 | 性別のアイデンティティそのものを無くすこと / いかなる性的指向も正常なものとして認めさせること |
※ マスコミでは、上記の2つを同じものだと錯覚させる報道が見受けられます。
『グローバル性革命 -自由の名のもとに自由を破壊する-』の著者であるガブリエル・クビー女史によれば、ジェンダー主流化とは急進的フェミニストが作り出した「ジェンダーイデオロギー」であるとしています。
ガブリエル女史いわく、ジェンダー主流化の目的は以下の2つ。
【ジェンダー主流化の目的】
- 性別のアイデンティティを破壊すること
- 性行為に関する倫理観を破壊すること
多くの人は「話が飛躍し過ぎではないか」「大袈裟だ」と思うかもしれません。
しかし、本シリーズの過去記事をご一読いただき、そして実際にジェンダー主流化の登場で生じている社会現象をみれば、決して過言ではないと気づくことでしょう。
- 多様な性アイデンティティへの寛容
- 不道徳な性行為をも受け入れる風潮
これらが急速に浸透している現実を直視するならば、上述した「ジェンダー主流化の目的」を否定できないはずです。
ジェンダー主流化がもたらす結果 - 性規範(性道徳)の解体
少し視点を高くすれば、世界各地で「性」に対する感覚に変化が起きていると 感じることができます。
これがまさに世界規模で拡大している「グローバル性革命」であり「ジェンダー主流化」なのです。
性規範(性道徳)の解体
1990年代から「ジェンダー主流化」という概念が登場しはじめました。その目的を簡単にいうならば「性規範の解体」です。
かつての日本もそうでしたが、高度な文化の背景には 必ずといってよいほど 厳格な道徳的基準が存在していました。
その中には一夫一婦制の土台となる「貞操を中心とした性道徳」も含まれます。キリスト教文明の上に建国されたアメリカは、とくにこの美徳を重要視してきました。
しかし現在、そのような長い間 当たり前とされてきた道徳的価値や美徳が脅かされようとしています。
ある一部の人々から始まったそのような思想・運動は、意図的にそれらの美徳を破壊し、人々を快楽主義へと扇動しています。これがまさしく「ジェンダー主流化」なのです。
彼らの思想の根底には「人間はあらゆる抑圧から解放されるべき」というフロイト左派*の価値観があります。つまり「性規範」を、人間を縛る「抑圧」として捉えているのです。
*フロイト左派 - 「性的抑圧からの解放こそが人間の真なる自由を得ること」だと主張する、マルクス主義に侵されたフロイト理論の後継者たち。現在の全世界的な性革命の礎となるマルクーゼ、ライヒなどが代表的な人物。
本当にそうでしょうか? 人は本能のままに生きる動物とは違います。性規範・性道徳は、人らしく生きるために欠かせない重要なものです。
「性」が乱れること、それは一個人の問題だけでなく、家族、そして家族の拡大である社会・国家全体に影響を及ぼします。
フロイト左派の推進する性革命(性的抑圧からの解放)によって「快楽主義」「唯物主義」が多くの現代人の価値観となり、真逆の「自制心」「克己心」「自己犠牲」「献身」などの美徳は死語になりつつあります。
快楽主義は、快楽追求こそが人間の存在意義であると主張しますが、不思議なことに、それは幸福をもたらすのではなく、絶望をもたらしています。
研究者であるジャスティン・ガルシア氏によれば、行きずりの性行為には2つの心理的な問題点があるという。
① どれほどメディアが「一夜限りの恋はすばらしい」と宣伝しようとも、その行為を自分自身がおこなった後には、自己嫌悪に陥る可能性が強い。
② とくに女性には、この種の行為が合意のもとではなかった、という気持ちが強いこと。ほとんどは薬物のために判断力が鈍った状態で一夜限りの行為が行われていたこと。
そして、頻繁にパートナーを取り替える人々の満足度は低く、自尊心も満たされず、鬱病などの精神的疾患を示す割合が高かったという。
出典:行きずりの情事は心理的負担が大きい
これらの言葉が示すように、賢い人は知っているのです。「快楽は真の幸福をもたらさない」ということを。
しかし昨今、極一部の人々の人権保護という名目で「性規範」が著しく解体されていると感じませんか?
もし道徳的制約のない性行為が可能となったら、この世界は破滅へと向かうことでしょう。
「性」は「愛」「家族」「責任」と、切り離してはいけないもの
「性欲」は、愛・生命と直結しているため 強力に作用します。ですから必ず 自らの意思でコントロールできなければなりません。コントロールが効かなくなった性欲は依存症をもたらし、自分のみならず他人をも傷つけてしまいます。
そして「性」とは、「愛」「家族」「責任」という言葉と 必ずセットで教育すべきもの。決して切り離してはいけないものなのです。
性に関する倫理・道徳は、世の中の美しい秩序を保つために存在する「人が人らしく生きるためのルール」。
自身に与えらえた性別に応じて、男女の関係性が「正しく」あってこそ、夫婦・家庭・地域・国家が繁栄・発展することができます。
このルールを根底から破壊すれば、夫婦・家庭・地域・国家は破壊・衰退していきます。
ジェンダー主流化の手段「包括的性教育」
私たちが知らなければならないことは「日本国を、世界各国を、弱体化させたい勢力が存在する」という事実です。
多少時間が掛かったとしても それを確実に成し遂げるために、彼らは
- 今ある家庭を機能不全にする。
- 未来世代が家庭を築けないようにする。
という戦略をとっています。
※ 家庭が国力と密接に関連していることは、本シリーズで すでに述べた通りです。本来 家庭とは、愛と力の源泉であり、自尊心と思いやりの心を高める場所。そして国の礎です。
彼らは 自分たちの目的を達成するため、あらゆる分野に浸透し 世界規模で未来世代への洗脳教育を行っています。
政治や学校教育だけでなく、エンタメやマスメディアなどの「文化」を掌握し、私たちの根本的な価値観や思考までをも変えようとしています。
包括的性教育もその強力な手段の一つ。
彼らは「既成概念にとらわれる必要はない」と言いながら、自分達に都合のよい新たな概念・価値観を 幼い子ども達へ植え付けようとしてきます。
それはまるで、緩やかに上昇する湯の温度に気づかない茹でガエルのように、いつの間にか人類を死の道へと導いているのです。
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この記事のまとめ
包括的性教育の不都合な真実⑥ - ジェンダー主流化による性規範・性道徳の解体- 貞操を中心とした性道徳・性規範を破壊することが目的である「ジェンダー主流化」。
→ 今ある家庭を機能不全にし、未来世代が家庭を築けないようにする為のもの。 - 家庭と国力は密接に関連している。家庭は愛と力の源泉であり、自尊心と思いやりの心を高める場所。そして国の礎。
- 包括的性教育が目指すのは「ジェンダー主流化」。
→ 日本国を、世界各国を、弱体化させたい勢力が存在する。
包括的性教育のキーコンセプトに「ジェンダー主流化」の概念が含まれていることを、本稿では解説しました。
ところで「ジェンダー主流化」という概念は突然変異的に現れたものでしょうか?
・・・いいえ、そうではありません。
次回は
「ジェンダー主流化」の流れをつくってきた「性解放・性革命」思想について、じっくりと解説します。お楽しみに^^
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