保守主義とは?「縦軸の哲学」三世代でなる国家
更新日:保守とされる政治家や言論人が、なぜ売国行為に走ることがあるのか? 日本の保守層は、保守思想(保守主義)が何かを理解していないのではないか?
日本が抱える家庭・教育、国防、経済の各問題。すべては保守思想の本質である「縦軸の哲学」が欠落していることに原因がある。
日本国の存亡をかけた闘いが 正念場を迎える令和の御代。保守とは何か? を一度整理しておく必要がある。
保守思想については、保守言論界の論客である 八木秀次麗澤大学教授が2005年に上梓された「国民の思想」にある内容が非常にわかりやすい。本書の主張するものを 今一度世に問う意味でもここにご紹介したい。
*本稿は同書から多くの箇所を抜粋、参考にさせて頂いているが、著者八木教授の本意に沿わない部分があれば、文責は本稿筆者にある。
保守主義とは「縦軸の哲学」
「保守主義」とは、生命の連続性、世代の継承、国家の連続性の重要性を自覚する思想である。八木秀次
過去、現在、未来という縦の時間軸を踏まえて、八木教授は保守主義を「縦軸の哲学」であると表現。
国家は三世代による共同事業
家にある暖炉と祭壇と墳墓は、国家に有機的につながっている。八木秀次
保守思想の父エドマンド・バーク*によれば、「国家とは祖先たちと現在の私たち、そして子孫たちの三者による共同事業」であるという。
当然ながら私たちのすべてが誰かの子であり、子孫である。また子を生めば誰かの親となる。つまり現代の私たちは、生命の糸で 過去の祖先や 未来の子孫とつながっているわけだ。
*エドマンド・バーク - 18世紀英国の哲学者、政治家。フランス革命を批判、名誉革命支持の立場。レーガン大統領が信奉。日本では新渡戸稲造「武士道」序文に登場することで知られる。
保守主義の根幹とは
祖先たちの積み重ねた礎に感謝し、その伝統や文化、遺産、血統を子孫へ正しく継承していく。その継承は家庭でなされ、国家はその家族共同体によって構成されている。
したがって八木教授は「家における祖先崇拝や国家における祭礼は、保守主義の根幹をなす」と主張するのだ。
「国家縦軸」の重要な五要素
八木教授によると「国家の縦軸」における重要な要素は「国防・慰霊・教育・家庭・道徳」の五点。
①国防 ー 国家・生命の連続性
国防は国家の連続性によらなければ説明できない。現実として、我が身優先では自衛隊員はその職務を全うできない。
- 祖先・先人がその生命・自由・財産に代えて守り、伝えてきた国家を何としてでも守っていこうという決意。
- 自らの生命・自由・財産を犠牲にしてでも、国家を子や孫の代に伝えていこうという意志。
②慰霊 ー 祖先へのまなざし
国家においては共通の祖先、子孫がある。祖先崇拝、特に自らの生命を投げ出して国家の連続性を維持した英霊たちの慰霊と感謝の想いが大切だ。
それは同時に、自らも国家の縦軸に連なり、国家を受け継いでいくという意志を表明することでもある。八木秀次
靖国神社の重要性が理解できる。
③教育 ー 文化遺産の正確な継承
教育とは、過去の文化遺産を子供たちに継承させ、彼らを明日の日本を担っていく「将来の国民」として育てる事業である。八木秀次
④家庭 ー 生命と文化の要
日本の保守主義は家族の価値を中心に据えるべきである。家族・地域は保守派の守るべき最高の価値である。八木秀次
家庭こそ私たち国民の生命が誕生し、育まれる まさにその現場である。祖先と子孫が結びつくのが家庭なのだ。
⑤道徳 ー 精神の構え方
道徳とは、日本人としてどのように生きるかの基準である。道徳は誰かの発明品ではなく、過去に生きた先人たちが徐々に積み重ねて来たものだ。
道徳を正しく継承しなければ、次の世代で国家は全く別物、あるいは崩壊してしまうだろう。
「縦軸」が欠落した日本
デラシネ化した日本人
縦軸、すなわち祖先と関係のない人間は「根なしぐさ(デラシネ)」となる。アイデンティティを喪失した人間は必ず自分探しを始め彷徨する。
我が国が未来への国家戦略を何も描けないことと、日本国のデラシネ化は決して無縁ではない。
グローバル化 = デラシネ化
この約30年間 グローバリズムがもてはやされ、地球市民なる言葉が一人歩き。「保守」言論人でさえグローバル化を推進して来た。
ざっくり言うなら、グローバル化とは 世界中の国々をアメリカ化(ユダヤ化)した上で 廃し、世界政府が統治する世界を目指すこと。
つまり日本国を消滅させる運動を「保守」が推進して来たわけだが、この矛盾を彼らはどう説明するのか。
グローバル化総本山のアメリカですら、小学校で星条旗への誓いを徹底している。建国神話、つまり縦軸の哲学なくして アイデンティティは形成されないのだ。
「教育・家族・道徳」は左翼こそが体制派
八木教授によれば、先述「縦軸の五要素」の中でも特に重要なのが教育・家庭・道徳だという。
わが国の "保守" と呼ばれる人々にはそれらを重視しない人が多い。その原因はどこにあるのだろうか。八木秀次
わが国で "保守" と呼ばれる人々、中でも政治家の多くは、戦後から今日まで、国防と経済に関する事柄にその関心を集中させて来た。
そうしているうちに、実は教育・家族・道徳が国家の縦軸として非常に重要な分野であることを見失い、今日ではそれらの分野はほとんど左翼的な思想家・政治家によってリードされている。八木秀次
左翼は「縦軸」の重要性を理解している確信犯
なぜ左翼や反日と称される群れが 日本の歴史教育や皇室破壊、家庭破壊活動に精を出すのか。「縦軸の哲学」を攻撃することで 日本という国家を破壊できることを、彼らこそよく熟知しているのではないか。
日本衰退を願う人々がLGBTQ、ジェンダーフリーなるものを推進しているのは偶然ではない。冷徹な計算に裏打ちされた確信犯がいるのだ。
左翼の狙いは家庭崩壊
フランクフルト学派や 文化マルクス主義という ステルス共産主義が、音楽やファッション、映画、ドラマ、教科書の姿をとって、私たちの生活や学校教育の教壇を占拠している。
火薬不要の革命が完成しつつある現実を、我々保守はどう認識すべきなのか? 経済という肉を切らせて、教育・家族・道徳という骨を断たれて来たのが 私たち日本の保守層ではないのか?
「縦軸の哲学」を取り戻すことで日本は復活する
日本に欠落した「縦軸の哲学」を取り戻すことこそが、我が国復活への鍵となる。八木教授が日本復活に掲げるのは次の三点。
- 教育の正常化
- 家族の強化
- 国民道徳の再生
誇り高き祖先にならって生きる
私たちの父祖たちは間違いなく高貴だった。八木秀次
- 私たち自身が国家の縦軸を意識し、過去から受け継いできた日本の高い民度を継承する。
- 先祖と子供たちに恥ずかしくない生き方をし、子供たちがそれを正しく継承していく。
これでこそ わが国は本来のあるべき姿に戻っていく。
私たち自身の「浄化作戦」
馬渕睦夫元ウクライナ大使が常々「浄化作戦」と表現される運動は、この「縦軸の哲学」を取り戻す取り組みと重なるところがあるように思う。
亡くなった祖先を隣に感じて暮らすことが、私たち日本人を道徳性の高い民族に育て上げてきた。
「つねに聖化された祖先の面前にあるように行動する(エドマンド・バーク)」ことで、私たちは誇り高く生きることができるはずだ。
忘れられつつある建国神話、祖先との絆、道徳。外敵もいるが、私たち自身が「縦軸」を取り戻すべき時だ。
家族とともに祖先に手を合わせ、日々感謝する生活をしたい。それが我が国再生の第一歩になると信じる。
保守主義シリーズ ① 〜 ⑥
この記事のまとめ
保守主義とは?「縦軸の哲学」三世代でなる国家- 保守主義とは「縦軸の哲学」であり、「縦軸の哲学」とは、生命の連続性、世代の継承、国家の連続性の重要性を自覚する思想。
- 国家とは祖先たちと現在の私たち、そして子孫たちの三者による共同事業。
- 「縦軸の哲学」を喪失したことが国難の正体。
- 「縦軸の哲学」を取り戻すことこそが、日本復活の鍵。