米国による『中国ブラックリスト33企業』の全貌 - ウイグル人権弾圧に日本企業のテクノロジーが悪用か?
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米商務省が『中国ブラックリスト33企業』を公開。
本稿では
- アメリカ政府のブラックリストに載った 中国企業・中国政府機関の全貌
- ウイグル人権弾圧に 日本企業のテクノロジーが悪用されている!?
について解説する。
アメリカ商務省がブラックリスト33社発表 - ウイグル人権弾圧の中国企業・中国政府機関
2020年5月22日、米国商務省が『中国政府機関・中国企業 ブラックリスト33社』を発表。その内訳は以下のとおり。
- 大量破壊兵器に関与 - 24社
- 新疆ウイグル人の人権弾圧に関与 - 9社
2020年5月14日、米上院にてウイグル人権法案可決
2020年5月14日、米上院にてウイグル人権法案が可決。中国当局が「再教育」施設に多数のウイグル族を収容し 拷問などを実施しているとして、トランプ大統領に対し「中国当局の収容施設を即時閉鎖、拷問の中止」などを求めることを要求した。
ウイグル人100万人が投獄
ペンス氏は中国のチベット自治区と新疆ウイグル自治区での宗教弾圧を非難。後者については「ウイグル人をはじめ、100万人以上のムスリムが投獄されており、強制収容所で絶え間なく洗脳が行われている」とコメント。
新疆ウイグル自治区の人口は2500万人で、そのうちウイグル人は1000万人余りとされている。その1割に相当する「100万人の投獄」が事実ならば、深刻な異常事態だ。
ポンペオ氏は中国のウイグル人弾圧を「今世紀の汚点」と断じた。
https://toyokeizai.net/articles/-/293979
ウイグルの人権弾圧とは?
- 100万人が思想教育施設(強制収容所)へ
- モスクの破壊
- 臓器売買
- 核実験
ウイグル問題については、当サイトの下記を参照。
ウイグル人権弾圧に関与した9つの中華系 企業・機関を公開
米国商務省は「テクノロジーを悪用して、ウイグル人に対する抑圧や恣意的な大量拘束・強制労働や ハイテク技術による監視といった人権侵害・虐待に加担した」9つの中華系企業・機関を公開。
- ウイグル人の人権侵害および人権侵害に関与
中国公安部法医学研究所
China’s Ministry of Public Security’s Institute of Forensic Science - ウイグル人の人権侵害および人権侵害に関与
阿克苏华孚纺织股份有限公司云行科技
Aksu Huafu Textiles Co. - 光ケーブル
烽火科技集团
FiberHome Technologies Group - ソフトウェア開発
南京纤之家星空通信发展
Nanjing FiberHome Starrysky Communication Development - 人工知能
東方網力科技 <300367.SZ>
NetPosa - 顔認識システム
深网视界
SenseNets(NetPosa子会社) - 顔認識システム
云天励飞
Intellifusion - IS’Vision
SenseNets(深网视界)社の顔認識システム *出典: SenseNets社
米国商務省は昨年10月も、ウイグル自治区での少数民族弾圧に関与した 監視カメラ世界最大手「杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)」など28企業・政府機関を、輸出規制の対象にすると発表していた。
大量破壊兵器(WMD)と人民解放軍支援の企業ブラックリスト
米国商務省は、人民解放軍の資材購入を支援することにより大きなリスクを引き起こし、米国の国家安全保障 または 外交政策の利益に有害な活動に参加していることを指摘。
将来的には、米国商務省の承認なしに「米国輸出規制規則」の対象となる品目を ブラックリストに登録された事業体に輸出、再輸出、または国内転送を禁止。
商務省はまた、ITセキュリティー大手「奇虎360」や人工知能(AI)開発の「クラウドマインズ」を含む 24の企業・機関について、中国人民解放軍の兵器開発を支援したとして禁輸対象に。
- 北京达闼科技
Beijing Cloudmind Technology Co., Ltd. - 世界最速スーパーコンピューター天河第2を所有
北京计算科学研究中心
Beijing Computational Science Research Center - 産業機器卸売業
北京锦程环宇科贸
Beijing Jincheng Huanyu Electronics Co., Ltd. - 高圧科学・先端技術研究
北京高压科学研究中心
Center for High Pressure Science and Technology Advanced Research - 精密工学部品製造
成都精密光學工程研究中心
Chengdu Fine Optical Engineering Research Center - 中國久遠物資貿易公司
China Jiuyuan Trading Corporation - 人工知能・ロボット
达闼科技 香港
Cloudminds (Hong Kong) Limited - ロボットに使用するクラウド型サービス
达闼科技
Cloudminds Inc. - 科学研究機器製造
哈尔滨创越科技有限公司
Harbin Chuangyue Technology Co., Ltd. - 哈尔滨工程大学
Harbin Engineering University - 哈尔滨工业大学
Harbin Institute of Technology - 哈尔滨蕴力达科技开发有限公司
Harbin Yun Li Da Technology and Development Co., Ltd. - 精納科技有限公司
JCN (HK) Technology Co. Ltd. - 物流
快急送物流(中國)有限
K Logistics (China) Limited - Kunhai (Yanjiao) Innovation Research Institute
- 顶峰多尺度科学研究所
Peac Institute of Multiscale Science - 情報セキュリティー企業
奇虎三六零
Qihoo 360 Technology Co. Ltd. - 奇虎三六零
Qihoo 360 Technology Company - Shanghai Nova Instruments Co., Ltd.
- 四川鼎澄物资贸易公司
Sichuan Dingcheng Material Trade Co., Ltd. - 四川新天元科技有限公司
Sichuan Haitian New Technology Group Co. Ltd. - 四川圖斯克進出口貿易有限公司
Sichuan Zhonghe Import and Export Trade Co., Ltd. - 航空機搭載ライダーシステム
礪劍天眼科技有限公司
Skyeye Laser Technology Limited - 朱杰进,复旦大学副教授
Zhu Jiejin.
スーパーコンピューター天河二号
达闼科技 Cloudminds Inc.
上述のとおり、米国商務省の承認なしに「米国輸出規制規則」の対象となる品目を、ブラックリスト登録された事業体に 輸出、再輸出、または国内転送することは、今後 許可されない。
米中のこれまでの経緯
2018/03
「通信機器に不正プログラムが組み込まれ スパイ活動に用いられる」と米政府が規制検討を発表。
2018/12
米司法省の要請によりカナダ当局がファーウェイ創業者の娘で同社幹部を逮捕。
2019年11月
「香港人権・民主主義法案」が米国上下院で可決。
2020年1月29日
「チベット支援法」が米国下院で可決。
2020年3月26日
「台北法案(TAPEI Act)」に米トランプ大統領が署名、発効。
2020年5月14日
「ウイグル人権法案」米上院が可決。
2020年5月15日
『中国が信頼できない米国企業リスト』発表(中国紙グローバルタイムズ)
2020年5月22日
同日に開幕した全人代で、中国共産党が「国家安全法制」を発表。
2020年5月22日
米国商務省は大量破壊兵器に関与した24の政府機関・企業、新疆ウイグル人の人権弾圧をした9社を含む、33のブラックリストを発表。
詳細は、当サイトの下記を参照。
2020年1月14日 、Human Rights Watch
台唐鳳(Tang Feng) - 台湾ITデジタル相のコメント
「インターネットやAIは、政府が国民を監視するための道具ではありません。市民が政府を監視するための道具なのです」
日本企業の人権意識は二十年遅れ
他国ほど人種問題が取り上げられていないこともあり、日本の企業は人権について考えてこなかった。
中国新疆ウイグル自治区での弾圧に対する米制裁が人権問題だと認識できていないのではないか。
欧米に比べれば、日本企業の人権意識は二十年遅れとも言われている。米国の規制には従うのだろうが、本来は企業が自主的に判断しなければならない。
東北公益文科大 企業社会論の倉持 一准教授(東京新聞)
日本共産党委員長のツイート
中国指導部に対し、香港に対する人権侵害強化の動きを中止することを強く求める。中国は「一国二制度」の国際公約を守るべきである。自らが支持・署名した世界人権宣言、国際人権規約、ウィーン宣言など、国際的な人権保障の取り決めを真剣に履行すべきである。https://t.co/GqNG4oXcUj
— 志位和夫 (@shiikazuo) May 24, 2020
Nonviolence and Human Rights History Foundation
2019年には米国が制裁対象にした中国の監視カメラ大手、杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)に、ソニーとシャープが画像センサーを供給していることが分かった。制裁違反にはならないが、日本の技術が人権侵害に使われた恐れがある。
共同通信がハイクビジョンの製品パンフレットなどを基に過去の発売分も含めて調べたところ、監視カメラや工業用カメラの少なくとも百八十機種にソニー製画像センサー使用と記載していた。
シャープ製も工業用二機種で確認。画像センサーは監視カメラの「目」に当たる基幹部品(東京新聞)。
すなわち 人権侵害国家の企業に日本のテクノロジーが悪用されているということだ。
2020年5月22日、米国商務省のブラックリストに掲載されている「クラウドマインズ」のロボット・AI(人工知能)には、なんとソフトバンクグループも出資している(朝日新聞デジタル)。
孫正義会長とペッパーロボットの写真が世界に報道されることで、「日本企業は、中国の人権侵害を容認しているのだな」と誤解されかねない。日本のリーダーたちには、国際社会の動きをよく見て 判断・対応していただきたいと切に願う。
この記事のまとめ
米国による『中国ブラックリスト33企業』の全貌 - ウイグル人権弾圧に日本企業のテクノロジーが悪用か?参考資料一覧:
- Commerce Department to Add Two Dozen Chinese Companies with Ties to WMD and Military Activities to the Entity List | U.S. Department of Commerce
- Commerce Department to Add Nine Chinese Entities Related to Human Rights Abuses in the Xinjiang Uighur Autonomous Region to the Entity List | U.S. Department of Commerce