戦争ビジネス②軍需産業編 - 「死の商人」独り勝ち!? 戦争はなぜ起こるか?
更新日:戦争ビジネスは「死の銀行家」だけが儲かる一方、戦争当事国は戦勝国でさえ債務で衰退することを前回記事で学んだ。
「死の銀行家」は「死の商人」を代理人として、国家に武器も販売。
なお、軍需産業とは 武器弾薬だけではない。広義には食糧、医療、科学技術研究、衣料品、土木・建築、車輌、航空機、エネルギー、IT、保険・年金、情報産業、復興事業など、とても多岐に渡る。
本項では便宜上、兵器産業をおもに取り扱った。
「死の商人」とは - ナイ委員会
1936年米国上院で開催されたナイ委員会*の公聴会で、「死の商人」が広く知られるようになった。
ナイ委員会
ジェラルド・ナイ上院議員
正式名称は「軍需産業調査特別委員会」。米国政府が 国際銀行家たちに騙されて 第1次世界大戦に巻き込まれたのでは? という疑惑が発生したことで開催。
ジェラルド・ナイ上院議員が委員長。93回の公聴会ではモルガン、デュポンなどの大物国際銀行家たちを証人として聴聞。
銀行家たちの戦争関与が判明
ナイ委員会の結果、とんでもないことが判明。
- ウィルソン大統領には、第1次世界大戦へ介入するよう銀行家たちからの圧力があった
- 第1次世界大戦で、銀行家と軍需産業が膨大な利益を上げた
死の商人たちによるビジネスの実在が公になり、米国民は大激怒。アメリカは再び不干渉主義に回帰。
「死の商人 」リスト
ノーベル賞のメダル
- バジル・ザハロフ
- トルコ生まれの「謎の男」。英首相ロイド・ジョージを意のままに操作。 - アルフレート・クルップ
- 大砲王。巨大軍需産業クルップ社の経営者。 - アルフレッド・ノーベル
- ダイナマイト王。フランスの新聞社がノーベルの兄の死亡をノーベル本人と勘違いし、「死の商人、死す」と報道。ノーベルは死後の評価に絶望。ノーベル賞を設立するに至った。 - アドナン・カショギ
- サウジアラビアの武器商人。崔順実ゲートで韓国軍にロッキード・マーティン社の次期戦闘機を売りつけようとしていたことが発覚。ダイアナ妃とともに事故死したドディ・アルファイドは甥。
政府の暗部 - 死の商人との関係
建前上、国家に所属する政府や銀行家、企業は、敵国に武器を販売するわけにはいかない。したがって、代理人である死の商人が登場。
死の商人は敵味方の関係なく、マネーの論理だけで武器を販売。各国政府の機密が漏れると大スキャンダルとなるため、死の商人は基本的に追究されない。
軍需産業ランキング
平和教育が圧倒的な日本では、兵器産業の存在すら信じられないかも知れない。
日本にもある軍事企業
しかし現実に三菱重工業は戦車や戦闘機、イージス艦、ミサイルを製造し、自衛隊に納品。我が国の安全保障上、多大な貢献。
川崎重工業、富士通、日立、NECも日本の防衛を担う重要な軍需企業。
2019年千葉県幕張メッセでは、武器見本市が開催。海外からの軍事産業、政府関係者の関心を集めた。
兵器の相場価格
世界9カ国の核保有国が、2020年 核兵器関連に費やしたコストは7兆8800億円。修繕・維持費用も大変なものだ。
軍需産業にもある在庫処分
一般的に、兵器産業が存続するためには、在庫を九年に一度 消費する必要があるとされる。他の多くの産業と同じく、在庫処分はビジネスに付き物。
米ボーイング社の例
年間売上 | 10兆円 |
---|---|
兵器部門 | 3.4兆円 |
従業員数 | 14万人 |
身も蓋もない言い方になるが、戦争がなければボーイング社は倒産するし、アメリカは雇用を喪失する。
戦争大国アメリカ - 大人の事情
軍需産業が重要な基幹産業であるアメリカは、定期的に海外で戦争に介入。
第5代モンロー大統領以来、伝統的に孤立主義であったはずが、いつの間にか世界の警察を自称していたのは こうした背景があったから。
軍需産業大国アメリカ - 戦争が宿命
覇権国家アメリカは、常に戦争状態。戦争において2正面作戦は避けるのがセオリー。しかし2011年には、ほぼ同時に6つの戦争に参加。6正面作戦だ。
戦争が宿命の構造
自信の根拠となる第一要因は、世界最強の軍隊。
もう一つは、世界最大の兵器産業。世界に輸出できるスケールメリットを活かし、潤沢な研究資金と大量生産が可能。
また、次々と受け入れた移民たちは、将来の米軍人候補。事実、米軍に雇用されれば市民権を最短で取得可能。
世界最大の武器生産能力を持つアメリカは、自国こそが最大の消費国。戦争に自信があるのは当然。
軍需産業と政界 - ブッシュ政権の事例
アメリカは巨大な田舎。地方によっては兵器工場以外の産業がないところも。兵器工場の稼ぎで家族を養う有権者たちの職を保護しなければ、選挙には勝てない。
シンクタンクへの献金
軍需産業はシンクタンクへ献金することで、軍備増強を促す報告書を作成。各シンクタンクと政府閣僚ポストが往来する人事は、回転ドアと揶揄されることも。
これらシンクタンクが政界へ与える影響力は非常に大きい。バイデン政権の中枢はCFRという声さえある。
- PNAC(アメリカ新世紀プロジェクト)
- CSIS(戦略国際問題研究所)
- CFR(外交問題評議会)
軍産複合体ロビイスト
アメリカはロビイスト大国。軍事企業が政治家に多額の寄付をするのは当然。
結果として、ホワイトハウスに軍事関連産業の代理人が多いことは、容易に想像がつく。
ブッシュ政権閣僚と軍事産業界
ネオコン政権と揶揄された ブッシュ政権閣僚の経歴には仰天。
軍事メジャー、石油メジャー、食糧メジャー、製薬メジャーの経営者、大株主などのメジャーリーガーによるドリームチームとは言い過ぎだろうか。
政府と業界の癒着
ブッシュ政権では、兵器産業だけで32名の関係者が高官にいたとされる。優秀な人材が国政を担うのは良い。
しかし、彼らが古巣や所有する会社の企業利益を、政治になんら持ち込まないと誰が言える?
世界の警察を自認するのに、民間企業の利益を代表する方々がその要職に就いて、本当に世界平和のバランスは保たれるのか?
発足半年後に911テロ
事実として、第43代ブッシュ政権は戦争三昧。2001年就任した約半年後に911テロが発生。イラク戦争では民間だけで10〜60万名もの犠牲者。
アメリカに向かった援助金
父親である第41代ブッシュ大統領の時代には 湾岸戦争が勃発。
湾岸戦争における日本の援助額は1兆2400億円。その内、クウェートへ渡ったのは僅か0.055%。米国には その約1800倍の金が渡っていたことが、2007年 日本の国会答弁で判明。
クウェート | 6億円 |
---|---|
アメリカ | 1兆1486億円 |
ブッシュ親子で9回の戦争
クリントン、ブッシュ、オバマ大統領の3代によって、世界では1100万人が死亡したとの指摘も。本当に1100万人も死ぬ必要があったのか?
何のために?
誰のために?
チェイニー副大統領は軍事企業のCEO、大株主
湾岸戦争、イラク戦争で大儲けした一人がディック・チェイニー副大統領。
- 国防長官も歴任
- 石油関連会社ハリバートン社長(95~2000年)、最大個人株主
- リン・チェイニー夫人もロッキード・マーティン社の取締役
- 911テロへの関与を指摘する声も
ハリバートン社はイラク復興事業で入札を経ず、大量の契約獲得に成功。ペンタゴンからハリバートン社への発注には、BBCなど多くのメディアも疑惑を指摘。
ネオコン一家
長女のリズ・チェイニーは共和党の有力議員。しかし、同じ共和党のトランプ大統領の弾劾裁判に賛成票を投じた。
トランプ大統領は、新しい戦争を起こさなかった稀有な米大統領。軍需産業の武器弾薬が 4年間 消費されなかった。
チェイニー家は典型的なネオコンファミリーであり、RINOと言えるだろう。愛国心があれば、アメリカの若者を ビジネス目的で イラクの戦場へ送り出すことはしない。
戦争ビジネス - 恐怖による成長
ウクライナ危機のような恐怖は、軍事産業の大好物。戦争の予感、恐怖だけで、各国は国防費を増大させざるを得ないからだ。
冷戦でも成長
米ソ冷戦構造がまさに典型。
- キューバ危機という核戦争一歩手前までの恐怖は、むしろ東西両国の国防強化をこの上なく正当化するチャンスだった。
- 1991年にソ連が崩壊するまで、両国は結局 戦火を交えることはなかったが、軍事費は増大。レーガン政権は戦場を宇宙まで拡大。スターウォーズ計画と命名。
軍縮という茶番
銀行家たちは軍縮ですらビジネスに変える。1930年代の軍縮運動は、各国の古い兵器を廃棄させ、新兵器を売りつける準備だった。
事実、その後に発生したのが第二次世界大戦。新兵器が戦場で大活躍。
この歴史を踏まえると、ウクライナ危機でドイツが突如軍備費2倍に増加したのは、第3次世界大戦の予兆ではないのか。警戒せざるを得ない。
戦争ビジネス - ウクライナ危機はエキシビジョン?
NATO加盟国に課せられた国防費の目標値は、2024年までに「GDP比2%」。つまり、軍需産業界はNATO諸国のGDP2%を 毎年受け取る。
NATO加盟国のGDP計は約43兆ドル(約5000兆円)。つまり毎年約100兆円の受注を固定化できる寸法だ。
恐怖は軍事力を増大させる
ウクライナ危機という恐怖の発生で、シュルツ独首相が国防費を6.5兆円から13兆円にすることを宣言。ドイツの国防費は突如2倍。GDP比2%をあっさり達成。
今後NATO加盟国の防衛費は増大
欧州の核戦争リスクが高まった一方、米国の軍事産業からは歓喜が聞こえて来そうだ。
NATO加盟国の軍事費増大の流れは英国、デンマーク、スウェーデン、ポーランドにもすでに波及。軍事産業の未来は明るい。
ウクライナ危機は武器の見本市?
ところで、2022年9月には武器の国際展示会がキエフで開催予定。
2014年から発生していたウクライナ危機は、武器のエキシビジョンだったのか?
2014年にウクライナでロシアの侵略が始まったことで、防衛と安全保障の予算が毎年増加し、軍事インフラの回復、防衛産業の発展、軍事技術協力の拡大、国の防衛能力と安全保障の向上につながりました。
(中略)
8年間、戦闘で得られた経験は、常に既存の兵器システムのアップグレードと新しい兵器システムの開発を伴いました。
キエフで開催の
武器国際展示会HP挨拶文より
結論:戦争ビジネスのカラクリを広く知らせよう
戦争ビジネスが広く知られることで、人類は戦争を回避できるかもしれない。
死の商人たちだって、ブッシュ政権だって、人々の熱狂的な支持がなければ開戦はできなかった。つまり、私たち人類は戦争を止められる。
正常な精神ならば、人類のほとんどは有史以来、戦争に反対しているのだ。戦争ビジネスのカラクリを一人でも多くの人々に知らせよう。
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この記事のまとめ
戦争ビジネス②軍需産業編 - 「死の商人」独り勝ち!? 戦争はなぜ起こるか?- 「死の商人」が広く知られるようになったのは、銀行家たちの戦争への関与を調査したナイ委員会。
- 「死の商人」は、政府の庇護を受けるので公になりにくいが、実在。
- 戦争がなければ、軍事企業は倒産。
- アメリカは軍需産業が基幹なので、構造的に戦争をする宿命。
- ブッシュ政権閣僚の多くが、戦争ビジネスに関係
- 恐怖を創出することで、戦争ビジネスが儲かる。