茂木誠『政治思想マトリックス』の要約と感想 - ノーランチャートで政治思想を分類すると米大統領選挙がわかる!
更新日:2020年11月「世界の今を読み解く『政治思想マトリックス』 茂木誠著」が、PHP社より発刊。さすがは人気予備校講師、本書における政治思想の分類が非常にわかりやすい。
- ナショナリズムて何?
- グローバリズムを説明できる?
- リバタリアンて誰?
- 自分の政治思想を診断
きっぱり断言できるが、この一冊で政治・国際ニュースを理解する土台ができる。あとは枝葉の知識を都度知るだけだ。もちろん それらの理解度もグッと深まる。
高校生でも理解できる文章でマトリックス図解してあるため、社会人ルーキーにもおすすめだ。
- 右派・左派がわからないまま、社会人になってしまった。
- 右派・左派だけでは、もうニュースがわからなくなった。
「政治思想マトリックス」は、こうした悩みにスッキリ、シンプルに応えてくれる。
政治思想マトリックスとは?
本書の帯にはこうある。
- 各国の政治的・経済的スタンスを俯瞰する「魔法のコンパス」。
- 分断する世界の「リアルな姿」が見えて来る!
「政治思想マトリックス」で 何が解決?
2020米大統領選で露わになった米国の分断。トランプ支持者 vs バイデン支持のマスコミは、一体何を必死に争っているのか?
我が日本国も不思議だ。右派(保守)とされる自民党内に、なぜ親中派やリベラル議員がいるのか? 多くの有権者が疑問に思うはず。
現在の政治思想は「左右対立軸」では もはや理解できない。その理由は、対立軸が「グローバリズム vs ナショナリズム」にシフトしている為だ。
ここで政治思想マトリックスを用いると、視覚的に理解しやすい。
ノーラン・チャート
本書最大の特長は、2次元座標軸ノーランチャート*。
上の画像は 典型的なノーランチャートのパターン。それが本書では、茂木誠氏の手により さらにわかりやすくなっている。ぜひご覧頂きたい。
- x軸 - 経済的自由
- y軸 - 政治的自由
*ノーランチャート - 米国リバタリアン党創設者の一人であるデイビッド・ノーランにより発明された 政治思想の概念図
「政治思想マトリックス」著者 茂木誠氏はどんな人?
東京都出身の作家であり有名YouTuber。駿台予備学校 世界史科講師。ネット配信のドワンゴN予備校 世界史講師。
Webサイト | もぎせか資料館 |
---|---|
YouTube | もぎせかチャンネル |
著書 | 他多数 |
以下はもぎせかチャンネルではないが、YouTubeで声を聴くと渋い。迫力あるので、大河ドラマのナレーションをするとぴったりだろう。
海外歴史モノでも、例えば独立宣言文を読んだら カッコ良さそうな声だ。
「政治思想マトリックス」概要
政治思想マトリックスを読むと、フランス革命〜現在までの政治対立軸が スッキリ理解できるようになる。
第1章. ナショナリズムとグローバリズムの「シーソーゲーム」
左右対立の基礎である「保守 vs リベラル」。これをわかりにくくしたルーズベルト大統領のリベラル宣言が、政治思想マトリックスで一目瞭然に。
第2章. 「米中冷戦」の思想史と 強いロシアの復活
ネオコンが積極的に戦争を始める理由が納得。謎めいたプーチン露大統領の政治思想も、政治思想マトリックスでスッキリ。一帯一路の特徴を押さえると、正体が帝国主義だと判明。
第3章. 「超国家EU」崩壊の序曲
「EU = 平和機関」という幻想が、理路整然と溶解。ドイツ第四帝国が浮かび上がる。イギリスのブレグジットで鮮明になった反グローバリズムが、今後世界のトレンドになることを予感させる。
第4章. グローバル化するイスラム革命
キーとなるのはイラン。「シーア派 vs スンナ派」争いの理由に 今度こそ納得。イスラム教はグローバル宗教。現在 泥沼の中東情勢が「イラン革命の輸出」という視点で理解できる。
第5章. 日本の思想史と未来
宏池会、経世会、清和会 を軸にした日本戦後史を、政治思想マトリックスにすることで明確に。第1次、第2次で安倍内閣がどうシフトしたのかも鮮明に。
「政治思想マトリックス」の特徴
- 視覚化でわかりやすい
- 難解な著書の内容が さりげなく要約
- ユダヤ系国際金融資本にも切り込んでいる
「国際金融資本」で霧が晴れる
近現代史において、誰しもが不可解な矛盾に出くわすことだろう。通常の世界史授業では 詳細は触れられず、説明があったとしても無理がある。
例えばこうだ
- 米ソがなぜ手を組んだか?
- 「保守 vs リベラル」で、なぜ説明できないのか?
これらは 背景に国際金融資本(ディープステート)の存在を知ることで、やっと理解できるようになる。「受験におけるカンニング」と表現すると誤解を招くが、それくらい問題解決が容易になるのだ。
世界史のタブー解禁
しかしディープステートの存在については、一般的に学術界・言論界において「陰謀論」のレッテルが貼られがち。すなわち「タブー視」される。
ディープステートが力を発揮するには、彼らの姿が見えないことが重要。それゆえ隠されて来た歴史がある。
ところが茂木氏の本著では、「陰謀論ぽさ」を感じさせず国際金融資本に言及。したがって、わかりやすく受け入れやすい。
これまで政治思想や近現代史に関心を持ちつつも、それを複雑に感じて来た筆者を含む多くの読者にとって 本書は有益である。
「政治思想マトリックス」読後の感想と提案
とても勉強になる名著であり、大学教養課程で使えるテキストにもなりそうだ。一方で一読者として提案したいこともある。
① 政治思想をキャラクター化
ゆとり教育ぽくなってしまうが、政治思想をそれぞれキャラクター化するのはいかがだろうか。右派・左派の外交姿勢をそれぞれタカ派・ハト派と呼称するのも、すでに一般的でわかりやすい。
※ これはレッテル、ステレオタイプにも繋がりかねないが、広く国民に政治思想への理解を促進する一助になり得る可能性がある。
② 政治思想 YES/NO診断チャート
政治思想を自己診断できれば、読者にとって非常に有益となるだろう。
③ 保守思想に特化した新著出版
著者 茂木誠氏の足場は、地政学の観点から世界史にアプローチすること。そして本業は予備校講師であり、人々にそれらを伝えるプロだ。
したがって、保守思想を深めること自体は専門外なのかもしれない。それでも茂木誠氏の解説はわかりやすい。
例えば日本における保守思想は、皇室・天皇陛下を語らずしては本質に迫れない。こうした目に見えない精神世界への理解が、現代の政治経済にも反映されている。その理解を国民へ広く平易に伝えることには 意義があるだろう。
④ 外国語版を出版
各国の建国理念・思想を相互理解することで、世界平和の実現が近づくはずだ。政治思想マトリックスや日本の保守思想を 外国語で出版することには、大いに意味がある。
あくまで本稿筆者の勝手な願望だが、著者である茂木誠氏には ご検討頂けたら幸いだ。
明るい日本の未来のために
テレビ・新聞は、今や左翼思想や利害関係を持った連中のプロパガンダ機関。むしろ意図的に、国民には政治争点を見えなくすることさえある。
国民が自力で 政治家たちの思想・立場を理解できるようになれば、偏向報道だらけのマスコミは不要となる。
参考記事
茂木誠氏の狙いは?
国民が正しく政治背景を理解できるようになることで、健全な投票行動が期待できる。プロパガンダに騙されないのだから。ひいては国民全体の利益となる。
茂木誠氏が本書を出版した願いの一つは、そこにあるのではないだろうか。
民主主義には国民の教養が不可欠
民主主義とは、全国民に「良識」という責任が求められるシステム。国民のニュースリテラシーが脆弱だと、民主主義システムは 時にヒトラーを生み出すことさえある。
民主主義国家の一人一人が 教養を高めることは 国益にかない、同時に各自の人生を豊かにするだろう。
「知ってはいけない近現代史」
ところで「政治思想マトリックス」と前後して読むと有益なのが、馬渕睦夫著「知ってはいけない現代史の正体」。
著者同士はもちろん意識されていないだろうが、それぞれの長所を補完する関係にあると筆者は感じた。どちらが先でも構わない。両書を続けてご覧頂くことをおすすめしたい。
参考記事
*もぎせかチャンネルでご紹介頂きました。ありがとうございます。
この記事のまとめ
茂木誠『政治思想マトリックス』の要約と感想 - ノーランチャートで政治思想を分類すると米大統領選挙がわかる!- 茂木誠著「政治思想マトリックス」は、フランス革命〜現在の政治対立軸が図解。わかりやすい。
- 茂木誠氏は有名予備校講師で世界史を教えている。著述家、YouYuberでもある。
- 「保守 vs リベラル」などの左右政治的対立軸をマトリックス化。政治的自由、経済的自由、ナショナリズム、グローバリズムを、X軸・Y軸による2次元座標軸で表現するノーランチャートに。
- 国民の政治的教養を高めることは、民主主義国家の国益にかなう。