「新自由主義 = 共産主義」? - 唯物思想・拝金主義という共通項
更新日:政治経済に関心がある方でも誤解しやすい「新自由主義」。「正体が左翼(共産主義)なのに、右翼の仮面を被っている」のが、新自由主義だ。
したがって、保守派でもその看板に騙され、つい賛同してしまっていることもしばしば。
アメリカの共和党や日本の自民党で、新自由主義者(ネオリベ)が多いのは、確信犯か議員自身の勉強不足によるもの。
新自由主義には「伝統文化を破壊し、世界をフラット化」してしまう問題もある。
しかし、今回は「新自由主義 = 共産主義」に絞っての解説を試みる。
新自由主義とは?
新自由主義は「小さな政府」「経済の完全自由化」を目指す、マネー至上主義。
有名な新自由主義者(ネオリベ)
- 【学者】
ミルトン・フリードマン、フリードリヒ・ハイエク、竹中平蔵、堺屋太一、大前研一 - 【政治家】
マーガレット・サッチャー、ロナルド・レーガン、中曽根康弘、小泉純一郎、橋下徹
参照記事
新自由主義は「反共産主義」を旗印に右派のフリをしたので、レーガン、中曽根など、一般的には保守とされる政権に潜り込めた。
新自由主義3つの柱
新自由主義には①民営化、②自由化、③緊縮財政の三本柱がある。
これらは国家インフラの外資売却の一方で、国民福祉を削減するなど、本来とても保守とは言えない理念。特に、明治新政府が取り返すことに苦労した関税自主権を撤廃とは、まさに国家主権の放棄を意味する。
経済自由化 = 国家主権撤廃 = 国家資産の外資買収
南半球の多くの地域では、新自由主義はしばしば「第二の植民地略奪」と呼ばれるナオミ・クライン
経済自由化の建前は「個人の自由を保護するため」。個人の自由を最大化するためには、政府の介入を最小にした方がいいというわけだ。
しかし「個人的経済活動の自由」を極端に進めると、やがて「国家による規制の撤廃」へと行き着く。つまり、国家に邪魔されず、外資が国家資産を自由に買えるシステムが誕生。
これでは国家主権の放棄。つまり国境の廃止、グローバリズムだ。しかし、それこそ新自由主義の正体。
この観点で新自由主義が提唱する「小さな政府」を見ると、ずいぶん印象が変わる。
新自由主義の欺瞞① - 小さな政府
「小さな政府」とは、民間でできることはすべて民間に任せ、政府の役割は最小限だけで良いとするもの。
これは前述と同じく、国家政府の力を弱めることで、外国資本による国家資産の略奪を自由化するロジックなのだ。
では、外国資本の正体が共産主義勢力だったら? 外国の共産党による国家支配の誕生だ。
実際に中国共産党マネーは、日本の優秀な企業や、北海道の水源地、空港隣接地などの国家安全保障上、重要な不動産を買い漁っている。
大きな政府 = 小さな政府 = 左翼支配
市場経済化を進めていくと、やがて国家も民営化されるジャック・アタリ
実際は、大きな政府と小さな政府の正体は同じ。共産党エリートも、ウォール街の国際金融資本家も、マネー至上主義、唯物主義という同じ左翼思想なのだ。
大きな政府を追求すると、共産党が国家を上から支配する体制に行き着く。
小さな政府 → 国際金融資本による支配
一方 小さな政府は、政府の力を制限し、代わって国際金融資本家が大きな力を持つ。つまり国際金融資本家という外国人が、国家の上に君臨するというロジックだ。
小さな政府は外見上、保守思想の場合が多い。しかし その力は抑制され、国際金融資本家が国家を支配。大小の政府いずれも、結局は左派が国家を支配するトラップと言える。
新自由主義の欺瞞② - トリクルダウン
新自由主義は「経済さえ好景気ならば あらゆる問題が解決する」ことが前提だ。
そのため富裕層/大企業には減税して大いに経済活動を推奨。すると、富裕層/大企業は大いに潤う。そのマネーが「国内市場」へ再投資されることで、みんなが裕福になるのではないか?
この仮説を新自由主義者は「トリクルダウン」と命名。
小泉改革で多くの保守層もこれを信じたが、今は誰も信じていない。トリクルダウンは発生しなかった。旗振り役だったはずの竹中平蔵元大臣自身が「そんなのあるわけない」と否定している。
トリクルダウン失敗の原因:マネーの海外流出 → 国民所得は減少
その理由はグローバリズム。日本で儲けたマネーを、富裕層/大企業は「海外」へ投資した。トリクルダウンの前提である、国内への再投資をしなかったのだ。
日銀がいくら市場にマネーを供給しても、海外へじゃんじゃん流出。国民所得が増えないわけだ。
新自由主義の欺瞞③ - 消費税増税 + 法人税減税
新自由主義者(ネオリベ)は、企業へ「法人税減税」する一方、国民へは「消費税増税」を推進する。
百歩譲り 金持ちへの減税はいいとして、なぜ弱者へ増税するのか?
そもそも消費税を増税すれば、消費が冷え込み不況となる。しかし日本で消費税増税の旗振りをしたのは、なんと経団連。どういうことか?
消費税増税を推進した経団連
これは法人税減税で減少した国家の税収を、国民から吸い上げさせるためのトラップ。
経団連は「必要な税収は国民から消費税で吸い取って、私たち大企業は減税してください」と国へ提言して来たのだ。
こんな理不尽な話はないが、経団連と癒着した愛国心のない政治家、官僚はこれに同調してしまった。
新自由主義の結果
- 超格差社会の誕生
- 政治・経済エリートの癒着(コーポラティズム)
新自由主義の結果① - 超格差社会の誕生
巨大な外資が突然大量に入り込むので、全体としては経済規模が拡大することもある。また、自由競争を徹底するので 安い商品が市場を支配。国民がそのメリットを "初めは" 享受する。
新自由主義 → 給料は下がり、リストラも
しかしその結果、国民の給料は下がる。価格競争で商品の値段を下げるため、従業員の給料はコストカットの対象になるからだ。これがいわゆるデフレ構造。やがて好景気なのに、国民がそれを実感できないと気づき始める。
また、マネー至上主義なので、大規模なリストラが正当化されるのも新自由主義の特徴。
こうして新自由主義社会からは中間層が消え、もれなく貧富二極化する。
新自由主義 = 拝金主義 = 共産主義
参考記事:
あらゆる規制が撤廃されたため、富裕層/大企業が搾取し放題。これではまるで 共産党エリートが 人民の強制労働で搾取しているのと同じ構造だ。拝金主義という意味では、新自由主義 = 共産主義と言える。
- 2019年、国際貧困支援NGOオックスファムの報告によると「世界のトップ26名が、全人類下位半分である38億人と同じ資産額を所有」。
- 中国の李克強首相が2020年5月「月収1,000元(約1万5000円)が6億人もいる」と暴露。後述するが、太子党(=共産党幹部の子弟)2,900名の資産は 約28兆円(2006年)。
格差はあって当然だし、努力した者が報われるのも当然。しかしこの現実は、1%による99%奴隷支配体制。
新自由主義の結果② - 政治&企業エリートたちの談合
ショックドクトリン*を利用して、国際金融資本が各国政府に送り込んだ シカゴボーイズ*。彼らに支配された政治エリートと、大企業エリートが癒着。
この癒着はロシアではオリガルヒ、チリではピラニアなどの新興富裕層を生み出す一方、中間層の多くが貧困層に転落する社会構造を誕生させた。
*ショックドクトリン - 天災・テロ・戦争などのパニックに乗じて、強引に新自由主義経済の導入を推し進める「火事場泥棒資本主義」。
*シカゴボーイズ - 新自由主義を世界で推進するために、ノーベル賞経済学者ミルトン・フリードマンがシカゴ大学経済学部で築いた学派。アメリカ政府の奨学金を利用して、有望な学生を教育。世界銀行、IMF、各国の中央銀行総裁が不自然なほど多く誕生した。日本の白川元日銀総裁も、シカゴ大学院経済学修士号を取得。
*コーポラティズム - 新自由主義下で政治+経済界の癒着により富が独占される体制を、「ショックドクトリン」著者ナオミ・クラインは「コーポラティズム国家」と命名。
ショックドクトリン等の参考記事:
新自由主義とグローバリゼーション:なぜ名前を変え続ける?
「ショックドクトリン」著者ナオミ・クラインも述べているように、「彼ら」は自身の名称を常に変化させて来たので、正体もごまかされて来た。
日本の民主党がよい例だが、これは左翼がよく使う手口。
- 自由貿易、自由市場
- 自由放任主義(レッセフェール)
- グローバリゼーション、グローバリズム
ミルトン・フリードマン自身は リベラルを自称。一方 弟子であるシカゴボーイズ達は、新自由主義(ネオリベ)、新保守主義(ネオコン)など 右派・保守を連想させる名称を名乗った。
しかし「国家資産を国民から奪い、外国資本に売却する」行為が保守のはずがないのだ。今でも日本・自民党、米国・共和党に新自由主義者は多いが、彼らは保守の仮面を被りたいだけの左派というのが真相。
これらすべての中身は同じ。対立しているはずの 左派・共産主義もこのリストに含んでもよい。一部エリートが国民を奴隷化し、国家資本を独占するという構造はまさしく共産主義なのだから。
共産主義なのに大儲け
天安門事件によって明らかになった真実のひとつは、共産主義独裁政権とシカゴ学派の資本主義の戦術が 驚くほどよく似ているということだ。ナオミ・クライン
1980年、ミルトン・フリードマンは 鄧小平の招待で北京を訪問。共産党幹部 数百人を前に、なんと市場原理主義の講演。
1989年、天安門事件発生後、中国は市場経済を導入。
2006年、中国の億万長者の90%が太子党(=共産党幹部の子息)であることが判明。太子党2,900名の資産は総計2,600億ドル(約28兆円)。
結論:新自由主義 = 共産主義
新自由主義も共産主義も、国家の上に共産党を置くか、国際金融資本家を置くかの 違いに過ぎない。新自由主義と共産主義の共通項は グローバリズム。ともに拝金思想である ディープステートが育てたものという見方が拡大している。
日本の失われた20年間は、新自由主義経済の時代。令和の日本が正しい道を探るためには、今一度 新自由主義、経済グローバリズムを総括しておく必要があるだろう。
この記事のまとめ
「新自由主義 = 共産主義」? - 唯物思想・拝金主義という共通項- 新自由主義は、「市場の完全自由化」を目指すマネー至上主義。
- 新自由主義は、「国境廃止」を狙うグローバリズム。
- 新自由主義は、右派のフリをした左翼・共産主義が実態。
- 「新自由主義 = 共産主義」
→ 共産党エリート、ウォール街は、ともに拝金思想、唯物主義。 - 新自由主義を追求すると、国家が弱体化し、国際金融市場が国家を支配するようになる。