ユダヤ人の子育てとハブルータに関するQ&A 【ユダヤ式教育】
更新日:ユダヤ人の天才頭脳は遺伝なのか?ユダヤ人の子育てとハブルータに関するQ&Aをご紹介します。
これまで11記事にわたり解説してきた「ユダヤ式教育法」。思いがけず多くの反響をいただきました。ありがとうございます。
最終回となるシリーズ12では、これまでに読者の皆様からお寄せいただいた質問にお答えしていこうと思います。
ユダヤ人に関するQ&A
もしそうなら日本人の親がどんなに頑張っても意味がないのでは?
ユダヤ人には、ノーベル賞受賞者や経済界における成功者が 数多く存在します。そのため「ユダヤ人=天才集団」といったイメージが持たれやすいことも事実。
しかしユダヤ人のIQは、世界ランキングの中でも36位と、実はトップ10にも入っていません。
※ 英アルスター大学心理学者 リチャード・リン教授の調査
つまり、彼らは生まれつき天才というわけではないのです。ユダヤ人が優秀な理由は、ひとえに その独特な「教育法」ゆえと言ってよいでしょう。
下記は、彼らの頭脳が遺伝ではない「実例」の一つです。
ある韓国人女性が、米国系ユダヤ人家庭の養女となり ユダヤ式教育法によって成長。彼女(韓国人女性)は後にハーバード大学へ進学し、インタビューで次のように語りました。
「ユダヤ人家庭教育が、自分と同じルーツを持つ韓国系学生に比べ 明らかに私の人生を豊かにしてくれた。」
この内容は、ユダヤ式教育法を学び実践することで、彼らと同じ結果が得られることを証明していると言えるでしょう。
ユダヤ人って、みんなユダヤ教徒(信者)なの?
ユダヤ人が全てユダヤ教徒かというと、必ずしもそうではありません。ユダヤ人の中にも無神論者やクリスチャンなど様々です。
現在 約1500万人のユダヤ人が世界各国(アメリカに580万人、イスラエルに460万人。いずれも推定)に住んでいますが、ユダヤ教の発祥地であるイスラエル市民でさえ、35%はシナゴーク(ユダヤ教の教会)に行ったことすらないとされています。
過去には、迫害からユダヤ教徒としてのアイデンティティと信仰を守り続けるために、同族間結婚を奨励してきました。
しかし現在は、結婚を含め「他民族・他宗教文化への同化」が、ユダヤ人にとってアイデンティティ維持への脅威となっています。
そもそも「ユダヤ人」とは、必ずしも血統のみを指すわけでありません。ユダヤ教へ改宗することによって、誰でもユダヤ人になることができます。
例えば、イバンカ・トランプ氏(トランプ米大統領の娘)は、ユダヤ人男性と結婚するためにユダヤ教へ改宗しています。
このように「結婚のために改宗した人」もユダヤ人としているため、実際のところ「どこまでを正統なユダヤ人」と定義するかは 曖昧な点も多いのです。
また、著名なユダヤ人すべてが、篤実なユダヤ教信徒というわけではありません。
ただし 彼らが成長過程において、「ユダヤ教をベースとした家庭環境」と「ユダヤコミュニティの独特な文化圏」から影響を受けたことは、間違いないでしょう。
ユダヤ人は一般の小学校で学びますか?また習い事などはするのでしょうか?
篤実なユダヤ教徒の家庭では、3歳からヘブライ語を学び始め、5歳から2大経典である聖書とタルムードの教育を始めます。
小学校に上がると 通常の学校教育に加え、ユダヤ教独自の学校や宗教施設(シナゴーク)に通わせるのが一般的。それらの機関に通わせるのは「宗教教育」という目的があるため、日本でいう「習い事」とは異なる概念です。
そこでは宗教指導者(ラッピ)からユダヤ教信仰について学びます。ユダヤ教では、聖職者などの宗教指導者を、他宗教のように特別神聖視したりはしません。
ラッピとは、尊敬できる知恵深い先生というポジション。日本の寺子屋でいう 師匠と弟子の関係に近いかもしれません。
知恵深いラッピは、解答を与えるのではなく ハブルータによって生徒達の意見を引き出していきます。そして 学生たちがより高い次元&広い見識を持てるよう、そっとガイドするのです。
ちなみに韓国在住のラッピ家庭(子供が5人)では、周囲にユダヤ教徒の特別学校が無いため、一般学校には入れず12年間ホームスクール。その後イスラエルに留学させたのだとか。
13歳の成人式を迎えるまでは、親の責務である「信仰の確立」のためにホームスクールを選択するユダヤ人も多いと聞きます。
高額な祝賀金を渡すことによるトラブルなどは無いのでしょうか?(友達同士で金額比べや浪費, etc)
成人した子供に「自立した人生」を歩ませることは、親としての重要な責任(金銭管理を含む)。
ユダヤ人にとって成人式の祝賀金は「遺産相続」という意味も含まれるため、高額になることが多いようです。
また、同じユダヤ人といっても経済事情はピンキリ。全ての家庭が高額な祝賀金を渡せるわけではありません。親がしっかりと子供と相談しながら運用をさせていきます。
彼らにとって大切なことは、金額の大小に関わらず「お金の主人」となる生き方を幼い頃から教えていくこと。
※ ユダヤ人のお金と祝賀金に関する内容は、ユダヤ式教育法7・ユダヤ式教育法8 で詳しく解説しています。
ユダヤ式教育「ハブルータ」に関するQ&A
ハブルータは何歳から始めるのが良いですか?
ハブルータは何歳からでも始めることができます。
もちろん未就学児でも可能。逆に低年齢であればある程チャンス! 幼児期の子供たちは好奇心のカタマリ、質問の王様です。
絵本や日常会話に積極的にハブルータ対話法&勉強法を取り入れながら、「質問対話が当たり前」の家庭習慣と親子関係を作っていきましょう。
筆者の場合、長女が4歳の時にハブルータを開始。ママとのおしゃべりが大好きだったため、想定よりも早くハブルータを我が家へ習慣付けることができました。
息子にハブルータ(質問)しようとしても、面倒くさがってちゃんと答えてくれません。何か秘訣はありますか?
男の子の場合、そもそもママ(女性)とは脳の構造が異なります。女性にとって "未知の世界" を生きている彼らにハブルータを習慣づけさせるには、相当の忍耐力と知恵が必要。
ちなみに筆者にも息子が一人います。お姉ちゃんと違って 深〜く話を継続することが難しいことは、日々実感しています(汗)
男の子は大抵、自分の気持ちや 幼稚園・学校生活のことは、いくら聞いても返事をしません。その一方で、興味を持っている分野(恐竜・昆虫・ロボット・車など)に関しては、博士並みの知識を披露したがる、という傾向があります。
男の子とハブルータをする際は、このような特性をよく理解してあげること。彼らのマニアックな関心事にまず反応してあげましょう。
「すごいね~、そんなことも知ってるんだ! もっとママに教えて!」と喜ばせつつ、彼らの口を開くことから始めてみてはいかがでしょうか?
ママは女性特有の共感能力を生かしながら、どうしたら男の子が質問&対話に興味を持って楽しんでくれるかを、ゆっくり見守っていただければと思います。
ハブルータが上手くなるためのコツを教えてください。
ハブルータが当たり前の環境で育つユダヤ人家庭。一方、ハブルータに初めて接する私達は「今」がスタート地点。焦らずに ゆっくりと子供の心を開いてあげてください。
子供であれば必ず親に望むこと、それは「自分を信じてくれる、どんな意見も受け入れて聞いてくれる」姿勢。ハブルータは親子の信頼関係なしには成り立ちません。
子供の意見を100%受け入れる、ハブルータの始まりはココからです。突拍子もない質問であっても、馬鹿にしたり否定しない態度を見せ続けることが大切。
また、親御さん自身の質問力も鍛えましょう。成人であっても、ハブルータを継続していくことで他者への共感能力や意思疎通能力が上昇していきます。(幼い子供ならより早くその効果を実感できます!)
これらが結局のところ、親子間のより発展したハブルータ対話に繋がるのです。
高い「質問力」というのは、「イエス or ノー」で答えられるような単純な質問づくりではありません。
※ 良い質問づくりについては、ユダヤ式教育法9・ユダヤ式教育法10 で詳しく解説しています。
ハブルータは絵本でしかできないの?
そんなことはありません。筆者の住んでいる韓国では、すでに様々な教育現場で活用されています。実例をご紹介すると下記の通りです。
- 聖書ハブルータ
- キリスト教牧師が信者への聖書指導のためにハブルータを使用 - 幼稚園でのお話ハブルータ
- 美術ハブルータ
- 絵画に関する質問を作り合い、ハブルータをしながら互いに意見交換 - 国語ハブルータ
- 教材に関する質問を作り、ペアやグループで討論 - 算数ハブルータ
- 各自理解できない点を質問し合い、ペア同士教え合うことで好奇心と論理的な説明能力を養う - 英語ハブルータ
- ペア同士英文の質問を作り、対話することでスピーキングと英作文両方に効果的 - 道徳ハブルータ
- ある事柄に対して質問を作り合い討論することで、詰め込み教育ではなく、実生活に基づいた人格教育が可能 - 時事ハブルータ
- 新聞記事やテレビのニュースをピックアップし、それに対する互いの意見を交換。特に親子間で毎日実践できるハブルータ - 企業ハブルータ
- 改善すべき社内文化や、顧客へのより良い製品やサービス提供のため自由な討論の場として活用
なお、グーグル創業者の ラリー・ペイジ & セルゲイ・ブリン は、学生時代からのハブルータ・パートナー。
彼らがグーグルにもたらした自由な討論文化は、革新的な企業文化のモデルとして世界中から注目されています。
このように 大人同士でも学生同士でも、パートナーとテキスト(テーマ)さえあれば、いつでもどこでも始めることができる、それがハブルータです。
大切なのは「教科書の質問や問題を解くのではなく、自分自身が質問を作る」ということ。
どんな状況においても「自分自身の質問」「他者への質問」を作り続け、行動に移していく。これらは、変動の激しい21世紀を生きる私達にとって 必須能力と言ってよいでしょう。 その能力を養う最適な方法が、まさに「ハブルータ」です。
この記事のまとめ
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「ユダヤ人みたいな天才に育てたい! ユダヤ式家庭教育のすべてを我が家に適用する!」と、意気込む方もおられることでしょう。
しかし、ユダヤ人でさえ数千年という長い歳月をかけて定着させてきた教育法です。私たちが一朝一夕に習得できるものではありません。
ユダヤ式家庭教育の核心は「信じること」だと、筆者は考えます。
自分の人生を心から信じ、受け入れ自立する。他者との共感を通して共生していくことで、より豊かで幸福な人生を自ら創っていくのです。
親が子供に示すことのできる最高の愛情とは「信じること」ではないでしょうか。焦らずゆっくりと、親子で楽しく与えられた人生を歩んでいきたいですね。
子育てのお役に立てましたら幸いです ^^