【ユダヤ式学習法】ハブルータのやり方(後編)
更新日:前回の ユダヤ式教育9 では、「良い質問の仕方4つ」のうち「事実の質問」と「想像の質問」について解説しました。
今回の記事では、残りの「実践の質問」と「総合の質問」について解説していきます。
私たちが読書をする目的とは、一体何でしょうか。
もちろん娯楽という側面もありますが、その本から教訓(学び)を得ること。これが最も重要な目的といえます。
「本の民族」と称されるユダヤ人にとって、本(特に聖書とタルムード)とは彼らの人生指針。その大切な本から深〜い学びを得ようとして生まれたのが、ハブルータ勉強法です。
ユダヤ式ハブルータの実践は、いわば「本から人生の教訓を得る」方法。
レベルの高い討論をくり返すことで、彼らは柔軟な思考を持った「天才脳」と篤実な「信仰心」をつくりあげていくのです。
良い質問の仕方3:実践に関して
「事実の質問」と「想像の質問」の次は、「実践の質問」となります。
ハブルータでいう「実践の質問」とは、自分自身に置き換えて考えることです。
前回と同様「3匹の子豚」を例に挙げてみましょう。
例えば、以下のような質問を、親が子供に投げかけます。
「アナタがこの3匹の子豚の中の誰かだとしたら、どんな家を作ったと思う?」
「アナタなら、どんな家を作ってオオカミの攻撃から身を守る?」
「もしも主人公が "私" だったら?」という、現在の自分と置き換えて思考させる訓練です。
これは、子供がテキスト内容を十分に理解した土台の上でのみ、質問することが可能となります。
独自の方法を模索させることで「自分だったらどうするか」をシミュレーション。
この「自分に置き換えるシミュレーション能力」は、ハブルータでより深い討論を導き出すために必要不可欠なものです。
このような発想転換が可能になれば、 ・・・学校のいじめ問題や、政治家の横領事件、各地の自然災害などを、自分自身の問題として受け止められるようになります。
私達が今まで受けてきた学校教育は、「いかにして多くの知識を蓄えるか」に焦点が置かれてきました。
しかし、知識は「蓄えるだけ」では意味がありません。知識を「どのように活用して行動に移していくのか」が、人生においてより重要です。
「知識」を「知恵」や「知性」に変え、人生を生き抜く術を教育する必要があります。その能力を育てる手法が、正にこの「実践の質問」なのです。
良い質問の仕方4:総合
総合の質問とは、テキスト(絵本・教科書)を通して得た「教訓・知恵・価値観・示唆点」について、質問し合い討論すること。
「総合の質問」は 質問の集大成であるため、高い知能レベルが要求されます。
具体的には、テキストの内容自体を評価、判断し、新たに自らの見解を提示する過程です。
この最終段階では、ある程度の語彙表現力、意思疎通力が必要となります。
親が幼い子供に対する時、大抵の場合「きっと理解できないだろう」と考えます。そのため親の価値観や教訓を、ただ一方的に提示しがち。
しかし子供とは、時に大人では想像もつかない奇抜な意見を持っていることがあるのです。
実際に私は、子供たちに何度も驚かされてきました。
巷に溢れている教育用の絵本や、学校の教科書などには、ページの最後に「このお話の教訓、知恵」が整理されて載っています。
しかし、教訓や知恵を大人目線で整理してしまうと、子供の想像力はそれ以上働かなくなってしまうのです。
テキストを通して何を感じ、何を悟るかは十人十色。
子供が自らの言葉で、思ったこと感じたことを自由に発言する経験が、次の学びへの情熱に繋がっていきます。
良い質問の仕方 - 具体例
ちなみに、我が家でも「3匹の子豚」を読み聞かせしながら、「総合の質問」をハブルータしてみました。
「良い質問の仕方」の具体例として、7歳と5歳の子供たちと討論した結果をご紹介します。
- なぜ3匹が別々の家をつくって暮らそうとしたのだろう?
- 初めから働き者の三番目の知恵を聞いて、一緒に丈夫な家を作ればオオカミの攻撃を受けずに済んだろうに。
- 一緒に作って一緒に住めばもっと楽じゃないかな。
- 作る時は大変だろうけど、この先ずっと安心して暮せることを考えて、私(長女7歳)だったら三番目の子豚のような丈夫な家を初めから作りたい。
- なぜ同じ親ブタからこうやって全然違う性格のコブタが生まれのだろうか。
- オオカミの攻撃によって互いの違いを認め合い、団結することで勝つことができた。
- 私たち兄弟も互いに性格が違い、好きなものもそれぞれ違う。でもそれを家族として互いに認め合い、得意なことを褒め合いながら、一緒に仲良く暮らしていくことができるのだと思う。
いかがでしょうか。
親は質問を投げかけ、後はそっとガイドするだけ。
これだけで子供たちは、「絵本1冊から学んだ深い教訓を 自分自身の言葉で表現する」という、重要な経験ができるのです。
大人が提示する教訓や知恵に頼るのではなく、その次の段階である「アナタが持つ他の見解、意見を聞かせてみて」ともう一歩踏み出すこと。
こうした発想力の訓練こそが、「ユダヤ式ハブルータ勉強法」最大の魅力です。
良い質問の仕方 - まとめ
深い討論を導き出す、良い質問づくりのポイントについて解説しました。
質問づくりに関しては、ここでご紹介した順番を厳守する必要はありません。
お子さんの年齢や成長段階に合わせ、臨機応変に質問の段階を調整してください。
そして、「ハブルータ勉強法を始めてみたいけれど、何をどう討論していいか分からない」という場合には、ぜひ「良い質問の仕方4つ」を参考にしていただければ幸いです。
何よりもまずは、親自身が質問を作ってみることが大切です。
「質問をつくる」癖は、普段から物事を深く考える習慣を身に付けることに繋がります。
作った質問に対して、まずは親が自らの考えをよく整理し、次にお子さん(または大人同士でも)へ質問し、お互いの考えについて話し合ってみましょう。
このような、"深く対話をする" というサイクルを、ぜひ日常生活に取り入れてみてください。
「ハブルータ勉強法」は、正解のある質問討論ではありません。
討論を楽しみ、その中で二人が互いに知恵を出し合い、考えを融合させ、より良い解答を探し出していく。ハブルータはそのための手段です。
対話の中ではきっと、一人では想像もできなかった新しいアイデイアや悟りを得ることができるでしょう。
この記事のまとめ
【ユダヤ式学習法】ハブルータのやり方(後編)前回に引き続き、「良い質問の仕方4つ」によるハブルータ実践編をご紹介しました。
まずは親である私たちが、この質問づくりと対話を楽しむことが大切。
「本を読む子供に育ってほしければ、親が読書する姿を見せろ(つまり、手本を示せ)」という教育格言があります。
質問ができる子供に育ってほしければ、 ・・・まずは親が一生懸命「質問づくりをする姿を見せる」こと。
ハブルータ勉強法は、知ってみれば(図書館から借りてきた絵本さえあればいいので)1円もかからない英才教育です!
その上、親子&兄弟&夫婦間でこうした深い対話の習慣を作ることは、家族の関係性をも向上させます。
学びとは楽しいもの
これはユダヤ人ならば 共通して持っている価値観です。
幼少時だからこそ、親だからこそ植え付けてあげることができる このような価値観を、ハブルータ勉強法で ぜひ子供たちへプレゼントしてあげてください。
次回は「ハブルータ実践編・日常会話」をご紹介いたします。お楽しみに ^^
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