『タルムード・ハブルータ』の起源とやり方 - ユダヤ人の天才脳を育んだ英才教育について
更新日:従来の詰め込み式に比べ、18倍もの学習効果がある ユダヤ式勉強法「ハブルータ」。
※ ハブルータの詳細は 下記を参照。
ハブルータは 今でこそ多くの教育現場で採用されましたが、もとはタルムード(=ユダヤ教の経典)を勉強するために開発された学習方法。
ユダヤ人は「神に選ばれた特別な民族」という強いアイデンティティと伝統を、2千年間も継承してきました。その伝承方法が まさに「ハブルータ」なのです。
彼らを「ハブルータで聖書とタルムードを学び 実践してきた民族」と表現しても過言ではありません。
子々孫々にタルムードを伝え続けることに成功したユダヤ人。本稿では、ユダヤ人が実際に行っている「タルムード・ハブルータ」について解説します。
ユダヤ教の信仰が生んだハブルータ
タルムードを習得する方法として誕生したハブルータは、なぜ質問討論式なのでしょうか。
その理由を一口に説明するなら、「タルムードが余りにも難解だった」から。
ユダヤ教の経典「タルムード」は、単に読むだけでは全く理解できないシロモノ。
そのため、タルムードを実践するには「多くの質問 & 深い討論を通して、内容を消化する」といった作業が必須。
信仰生活を忠実に守ろうとした彼らは、結果的に 明晰な頭脳も手に入れたのです。
タルムード・ハブルータがおすすめの理由
私が「タルムード・ハブルータ」をおすすめする理由は、タルムードには自分の頭で考えさせる仕掛けが豊富なため。
例えば、書店に並ぶタルムード絵本を読んでみると「結局これって何が言いたいの?」という結末が多くあります。
ユダヤ教徒でなくとも学べる 面白教材「タルムード」。ぜひ皆さまも「タルムード・ハブルータ」の良さを実感してみてください。
それでは、本稿でタルムード・ハブルータの教材として使用するお話を 下記に掲載します。
三兄弟の三つの宝物 by タルムード
ある三兄弟が三つの宝をそれぞれ持っていた。
長男はどこでも見ることができる望遠鏡を。
次男はどこでも行くことができる絨毯を。
三男はどんな病気でも治すことができるリンゴを持っていた。
ある日、長男が望遠鏡で隣の国の宮殿を見ていた。
「おい、弟たちよ、これを見てごらん。隣の国のお姫様が深刻な病気にかかったよ。」
次男は絨毯を広げて言いました。
「私の絨毯で、すぐにお姫様を助けに行こう!」
三兄弟は絨毯に乗って、隣の国に飛んでいきました。
お姫様は深い眠りに落ちたように、青白い顔で横になっていました。
三男がお姫様の横に行き、鞄からリンゴを取り出しました。
すると、長男と次男をそれを止めました。
「弟よ、もう一度よく考えてみろ。お前のリンゴは一回食べたら永遠になくなってしまうではないか。」
「大丈夫です。魔法のリンゴよりも人の生命の方がもっと大切ですから。」
三男はそう答えると、なんの迷いもなく魔法のリンゴをお姫様に食べさせました。
そうするとお姫様はすぐに目を開いて回復したのです。
王様は心から喜びました。
「起き上がった!姫がついに目を覚ました!」と。
王はお姫様の病気を治してくれた三兄弟の中から婿を選び、王位を継承しようとしました。しかし、三兄弟のうち誰を選ぶべきか迷いました。
長男は「私が望遠鏡でお姫様の病気を見ることができなければ、ここに来ることができませんでした」と主張。
次男は「私の絨毯がなければこんなに早くお姫様の元に来ることはできませんでした」と主張。
三男は「私のリンゴがなければ、お姫様は目覚めることはなかったでしょう」と主張しました。
果たして誰を婿として選ぶべきなのか、王様は長い沈黙の末、
「姫と結婚する者は・・・三男だ」と言いました。
王はどうしてこのような決定をしたのでしょうか。
ーおしまいー
タルムード・ハブルータの進行手順
それでは上のお話を教材とし、タルムード・ハブルータを行ってみます。
(①と②は一人で、③と④はペアと行います)
① ゆっくりと教材を最後まで読む
まずは、用意した教材(テキスト)を読んでみましょう。
② 4種類の質問作り
※ 4種類の質問作りの詳細は 下記をご参照ください。
(1) 事実確認の質問例
- 望遠鏡って何かわかる?
- 絨毯ってどこで使うものか分かる?
- なぜ魔法のリンゴなの?
- 王位を継承するってどういう意味か分かる?
いわゆる「用語解説」です。お子さんとのハブルータでは、特にこの「事実確認の質問」は必須。
お子さんへ単語の意味を正確に伝えることができ、ボキャブラリを増やすことにも役立ちます。
(2) 想像質問の例
- 三人はどういった経路で三つの宝を手に入れたと思う?
(親から譲り受けた? 拾った? 自分で作った? 等) - 現代では望遠鏡・絨毯・魔法のりんごは何だろう?
- なぜ長男は隣の国のお姫様を見ていたのだろう?
- なぜ三人全員で宮殿に向かったのだろう?
- 深刻な病気とは何だったと思う?
- そもそもなぜリンゴだったのか?
(他の果物でない理由は? リンゴが比喩する事とは? など) - なぜ王様は病気を治した三男に王位まで継承しようとしたのか?
(ただお金をあげてもいいのでは? どんな意図があった?)
(3) 適用・実勢質問の例
- あなた(私)ならこの三つの宝物の中で何が欲しい?その理由は?
- あなた(私)が長男なら、どういう行動をしたと思う?
- あなた(私)が次男なら、どういう行動をしたと思う?
- あなた(私)が三男なら、どういう行動をしたと思う?
- あなた(私)がお姫様なら、この王様の行動をどう思う?
(ただ従う? それとも抵抗する?) - あなた(私)は王様の結論についてどう思う?
- あなた(私)が王様ならどんな褒美を三人に与えると思う?
ここまで質問が作れたら、最後に「この教材を通して学んだ内容を整理する質問」を作っていきます。
(4) 総括質問の例
- どんな宝物を持った人が一番幸福だと思う?
- 病気を治す一番の秘訣は何だと思う?
- 三兄弟それぞれの主張には同意できる?
(アナタだったらどう主張する?) - あなたが王様ならどんな結論を下す?
(一人に王位を継承させるなら、他の二人にどんな褒美を与えるべき? それとも全員に同一の褒美を与える?等)
上記が、私の考えた総括質問です。
ハブルータの「4種類の質問作り」が難しいと思う方は、(1) (2) だけでも挑戦してみてください。まずは質問作りに慣れることが大切です。
③ ペア討論
親子でハブルータをする際は、まず大人同士で事前に練習しておくとスムーズ。
ぜひ仲良しのママ友と討論し合ってみましょう。
④ 全体への共有
筆者が開催しているハブルータ同好会には 5~6名のママ達が集うため、常に2~3組のペアが誕生します。
「全体への共有」とは、それぞれのペアで討論した質問内容やテキストの感想などを 自由にシェアし合う時間です。
以上の ①〜④が、タルムード・ハブルータの一通りの流れになります。
ハブルータ = 互いの違いを楽しむこと
- 人生において、有限的な価値を持つモノと無限的な価値を持つモノとは何だろうか?
- 私は今有限的なモノと無限的な価値を持つモノ、どららを追い求めて生きているだろうか?
- (実生活の中で)様々な意見を主張する子どもたちに対して賢明な結論を下す母親になるためにどんな努力をすべきだろうか?
同じ教材でハブルータを行ったとしても、各々が感じた教訓、得た知恵や結論は 十人十色。それぞれが抱えている課題、悩み、現在の心境、価値観が 色濃く反映されます。
「互いの違いを楽しむこと」これこそがハブルータの楽しさでもあるのです。
ハブルータを通して、皆さんは何を経験され、何を学ばれるでしょうか。
ぜひ挑戦してみてください ^^)