豊洲市場の本当の問題とは? −喫煙編−
前回記事では、大手メディア報道に反して豊洲移転が、東京卸売市場にとってポジティブな結果をもたらしている事実をご紹介した。
今回は逆に、豊洲市場に潜む本当の問題について迫りたい。
結論から言うとその本質は「文化」「マナー」。
現実問題として見過ごせない事象も現れている。
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豊洲市場における 喫煙問題
水産市場の関係者らが喫煙する問題は、築地時代から変わらない問題だ。
以前の築地市場では、場内を歩いていると 必ず喫煙者を見かけた。
トイレ前に設置された喫煙所は、特にヒドかった。
トイレへは、スモーク(タバコの煙)を避けて通れないのが 築地市場だったのだ。
場内に散乱する吸い殻
移転した豊洲市場では、場内で喫煙者を発見すると、係員が注意する建前にはなっている。
築地市場よりは分煙化が進んだとの声もあるが、市場周辺には今でも ポイ捨てされた吸い殻がチラホラ見える。
設けられた喫煙所の周辺は、特にヒドい。
豊洲移転問題では、土壌汚染の心配を訴える声が 市場関係者の中からも聞こえていた。
ところがもし、市場関係者たち自身でニコチン汚染を拡大させているとするならば、信じ難い行為だ。
「誇り高い本物の職人たち」はタバコを触らない。
一部の喫煙者たちによって、そういった方々までが「水産を金儲けとしか考えていないのではないか?」と見られかねない…。
名作「美味しんぼ」では岡星良三君も
そもそも食品を扱う職人たちが、同じ手でタバコを触っても良いのだろうか?
美食漫画「美味しんぼ」にて、
天才芸術家・海原雄山にその才能を見出された岡星良三君のエピソードが思い出される。
海原雄山の美食倶楽部を、とある理由でクビにされた良三君。
兄の店「岡星」に身を寄せ修行中。
そこへ主人公であり、常連客である山岡士郎が来店した。
こっそりタバコを一服した良三君は、素晴らしい手さばきで刺身を切る。
見事な腕前だが、山岡に喫煙した事実を見破られてしまう。
新鮮な魚に漂ってしまった かすかなヤニの匂いを、鋭敏な山岡の感性は見逃さなかったのだ。
何度もしっかり手を洗ったのに・・・、これでは料理人失格。
山岡士郎が社会人失格(?)なところは さて置き、その山岡から料理人失格の烙印を押された純朴な良三君は、激しい自責の念に苦しむことに。
実は良三くん、師匠である海原雄山にも 刺身料理から喫煙を見抜かれていた。
美食倶楽部破門の理由は、まさかの タバコだったのだ。
喫煙した手で鮮魚を納品?
しかし、考えてみてほしい。
良三君が禁煙に成功したとして、そもそも「岡星」に納品された魚がヤニ臭かったら?
これでは いくら板前さんが手を清潔にしていようと、せっかくの鮮魚が台無しだ。
豊洲市場では、一部の職人たちが「喫煙した手で鮮魚を扱っている」現実がある。
これは築地時代からも変わらないが、日本の伝統文化・和食の価値を傷つける行為ではないのだろうか?
伝統文化の担い手たちがこれでは、先人たちに合わせる顔がないだろう。
納品先や 一般消費者を裏切る行為と言える。
豊洲市場の職人が社会で一目置かれるのは、「日本の伝統文化を伝承している」という点があることを忘れてはいけない。
誇りを持って、鮮魚を取り扱って頂きたいものだ。
ましてや、吸い殻のポイ捨てなど もっての外。
土壌汚染を自ら推進する愚行を犯してはならない。
世界の潮流に逆行する豊洲市場のタバコ問題
WHO(世界保健機関)が発表した2018年の統計によると、日本人男性の喫煙率は33.7%。
これはG7の中で、フランスに次ぐ 2番目の多さである。
豊洲から世界へ、日本産の鮮魚を輸出する仲卸も多い。
しかしこのデータからは、日本国の課題が浮き上がる。
「日本」「豊洲」ブランドを確かなものにしたいのならば、私たち一人一人のマナーが問われる。
昨今の言葉で言うと「One Team」だ。
豊洲ブランドを守る誇りを
各種統計を調査すると、喫煙率が高いグループの属性には ①学歴が低い ②低収入 が挙げられると言う。(参考資料:厚生労働省HP)
本稿は学歴や収入がどうのという話ではないし、それがそのまま豊洲市場の関係者に当てはまらないことも知っている。
重要なのは、世間が豊洲市場をどう見るのか? だ。
つまり、それこそが「豊洲ブランド」を決定する。
それなのに、タバコの吸殻が散乱している姿は みっともない…。
豊洲市場を訪れて、喫煙者を見ない日は無い。
現状を ややマイルドかつ率直に言ってしまうならば、「ヤンチャな印象」を持たれることが多いだろう。
それは市場関係者たち自らが、自覚しているはずだ。
では、「ヤンチャ・ワイルド」なだけでなく「不衛生」というイメージを持たれたら?
・・・もはや 日本水産業界の死活問題 である。
行政が営業停止をしなくとも、消費者が鮮魚を買わなくなる。
そして6,000億円とも言われる豊洲移転費用が、全てムダに…。
受動喫煙を外国人はどう見るか?
いよいよ2020年である。
東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、選手村の隣にある豊洲市場に 外国人観光客が来ないはずはない。
一般的に、海外では喫煙率が減少傾向だ。受動喫煙にとても敏感な国もある。
では、彼らが世界一の水産市場である Toyosu Market に胸を踊らせて訪れた時に目にするものとは・・・?
これは豊洲市場に限らず、日本ブランドの威信にも関わる問題だ。
安心、安全、平和、清潔。
それが日本ではないのか?
私たち自身 日本を誇りたいし、外国人観光客にもそう感じてほしいのが 自然な感情だろう。
小さな動きも
一方で、取材中に変化も見て取れた。
路上喫煙を禁ずる貼紙に、以前よりパワーを感じるのだ。
豊洲市場内でも、誇りある人々が自浄作用を起こそうと奮起しているのが伝わる。(参考:東京都HP)
豊洲市場内の鮮魚は輝いている。
美しい魚体の光沢とシルエットは、足を運ぶたびにほれぼれする。
本当に美味しい鮮魚が溢れている。
こんなに面白い市場は 世界のどこにもない。
魚の話をすると、図鑑に載っていない話を山ほど聞かせてくれる。
だからこそ言いたい!
これからも豊洲市場関係者には、誇りを持って日本の文化と魚たちを守る番人であり続けて頂きたい。
なぜ報じない?
ところで、報道関係者らが こうした問題を知らないはずがない。
あれだけ毎日 豊洲市場に事件が転がっていないか、ネタを探し続けているのだ。
では一体なぜ、豊洲市場におけるタバコ問題は報じられないのか?
不注意なだけなのか?
不作為ではないのか?
喫煙者の多いマスコミ業界
考えられる理由が一つある。
報道関係者たちの中に、喫煙者が大勢いるのだ。
東京都内ではドラマや報道の現場に出くわすことも稀ではない。
筆者もたまに遭遇するが、印象として喫煙者が多いように思う。
JTからの圧力があるのか?
もう一つの理由。
それは、日本禁煙学会が 2017年1月 外国特派員協会 で会見した内容 が指摘している。
日本メディアが、そのスポンサーであるJTの顔色を伺っているというのである。
身も蓋もない表現をすると、「800億円とも言われる巨大スポンサーに、報道各社が忖度をしている」と言うのだ。
それどころか、「厚生労働省や禁煙派を 誹謗中傷する記事」が掲載されることさえあるという。
ここだけの話、健康番組でも タバコ問題はタブーとされているとか…。
そう言えば、TVでも あまり観たことがないかもしれない・・・、怖い。
(筆者も身の安全のため、記事にしなければよかったか??)
気骨ある報道人が もし本稿をご覧になられたならば、奮起を促したい。
東京五輪開催前に、せめて豊洲市場におけるタバコ問題は取り上げられて然るべきだろう。
社会をよくしたい、巨悪をペンで倒したいと言うならば、ぜひ取り上げて頂きたいものだ。
この記事のまとめ
豊洲市場の本当の問題とは? −喫煙編−- 豊洲市場における問題点の一つは、設備ではなく「タバコ問題」などの文化・マナー面。
- 土壌汚染問題を乗り越えて「安全、安心、衛生的」が売りの豊洲市場におけるタバコ汚染は、消費者への裏切り行為ではないのか。
- 大手メディアがタバコ問題を黙殺しているのは、「JTが数百億円ともされる広告主として大きな力を持っているから」と日本禁煙学会の会見で言及があった。