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9月入学は日本のグローバル化をガラパゴス化させる

9月入学は日本のグローバル化をガラパゴス化させる

新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、日本の教育改革はまた世間の注目を集める話題となってきた。

3月からの休校要請の影響で遅れてしまった数か月の学習の遅延を一気に取り戻す提案として、9月入学の議論が持ちだされた。

一見、とても創造的な提案だと思える9月入学だが、やはりそれは根本的な解決策とは言えず、

かえって改革の機会を先延ばしし、日本の教育をグローバル化の真反対のガラパゴス化へ導く改革となることを今回の記事で書いてみたい。

目次
9月入学は日本のグローバル化をガラパゴス化させる

9月入学と日本のグローバル教育

東京大学がグローバル化をにらんで議論を進めた9月入学。結局は2012年に9月入学を断念したことで、教育改革の話題から9月入学は一旦消えることになった。

9月入学の話題が消えた後、日本のグローバル教育は衰退したかと言えばそうではなく、1ヶ月以内の短期留学を中心に、海外に留学する若者の数は増え続けていた

日本人の留学生数
・「外国人留学生在籍状況調査」及び「日本人の海外留学者数」等について(PDF:493KB)

日本では、グローバル教育を進めていく議論が、やもすれば制度改革に議論が集中してしまう傾向がある。大学入試改革や9月入学といったように。

でも、根本的な発想が変わらない限り、今後どのような妙案に思える改革案が出されようと、それは絵に描いた餅に終わることを指摘したい。


当然、改革の骨組みを作っていくのは官僚組織であるので、制度改革の政策議論に落とし込まなければ予算さえも獲得できないプロセスがあることは良くわかる。

しかし、その議論の結果として私たちが目にしてきたものは、改革とは程遠い結末であることはここ最近の教育改革の議論を思い出してみても明らかだろう。


そして、皮肉なことに教育改革の目的は「先行きが不透明な時代へ対応できる人材を育成するため」であるのに、先行きの読めない新型コロナウィルスの感染拡大を目の前にして、改革の主体がその不確実さに対応できていないことを露呈したわけだ。

新型コロナウィルスの感染拡大が与えたチャンス

心から改革を願う教育者なら、この事態に直面して何を願うだろうか。

それは、まさに先行きの読めない不確実な現実に直面している「今」を最高の教育の題材にすることではないだろうか?

そういった機会をみすみす逃しておきながら、課題の先送りにも思える9月入学を議論の遡上に乗せてくるとは、どれだけ現実逃避をすれば気が済むのだろうか。


以前、筆者は大学入試改革は中央集権的なやり方で改革を前進させるのではなく、各大学にバトンを渡すべきである、という提案をした。【これからどうなる?センター試験廃止の理由と今後の展開】

今回の提案の本質も、その時と全く同じ主旨である。9月入学云々という議論ではなく、現場の権限や裁量を大きくする方向で調整をかければ良いだけのことである。

中央政府の役割は、現場の改革を支援し、過度に格差が広がらないようにボトムアップの支援を行うことである。現場の教育機関に改革のバトンを渡すべきである。

今は全ての人が同じグローバルイシューの当事者になった

実は、今回筆者が自論を考えるにあたって、筆者自身の家庭も3月から子どもたちが学校に行くことができず、家庭で学習を進めざるを得ない状況に直面させられ、課題の当事者になってしまったことが大きく影響している。

隣の国、韓国ではここ十年来の教育のICT化が功を奏し、この混乱の中でもオンラインで授業が提供できていると聞く。

それと比較し、筆者の子どもが所属する中学や高校では課題の設定はされたものの、夏休みの宿題のようなもので、

課題に対するフィードバックがあるわけではない。いわば、一方的なやりとりのみで終わっている。

日本の教育現場の大半がもしかすると、筆者が経験している現状と大きく変わらないのかもしれない。

もしそうだとすると、ただ現実にほんろうされ、流されていくだけの教育現場になっていないのかが、とても気がかりである。

そのような中でも、広島県では生徒がオンライン授業を受けることができるように、県内すべての児童・生徒のクラウドアカウントを確保したとのニュースはとても明るい材料である。

おそらくこういった危機意識をもった現場のリーダーは一人だけではないはずだ。

9月入学が良いとか悪いとかではなく、過度の教育の均質性を担保するためのこれまでのやり方は、不確実なことが突発的に起こる時代においては、古い革袋になってしまったという現実である。

新型コロナウィルスの感染拡大は、世界の人々を同じ課題の当事者に変えてしまった。

このような究極的なグローバルイシューに直面して、創造的に課題を克服する鍵は、やはり現場への権限移譲、中央集権的なシステムの役割変化しかないだろう。

現状のシステムを変えずに9月入学が決定され瞬間に、日本の教育はグローバル化の絶好の機会を逃し、ガラパゴス化の道を辿ることになるだろう。

この記事のまとめ

9月入学は日本のグローバル化をガラパゴス化させる

●急場しのぎ的な改革は、次世代の人財を育成するどころか次世代の重荷となる

●教育改革の本質は改革主体である組織の自己変革であり、中央集権的なシステムから現場への権限移譲を大胆に行うシステムの変更である

●新型コロナウィルスの感染拡大は究極のグローバルイシューであり、これを教育の機会と捉えるところにグローバル化の鍵がある