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【2020年 教育改革】これからどうなる?センター試験廃止の理由と今後の展開

【2020年 教育改革】これからどうなる?センター試験廃止の理由と今後の展開

教育改革2020は、「大学入試センター試験」が廃止され「大学入学共通テスト」が始まることで幕開けします。


「大学入試センター試験(以下、センター試験)」が廃止される理由は、教育改革の重要な指標である「思考力・判断力・表現力」を センター試験で測定できないため。


「大学入学共通テスト(以下、共通テスト)」を含む大学入試改革では

  • 「センター試験」とは違い「共通テスト」の国語・数学の解答欄の一部が、記述式
  • 英語を民間の英語試験で代替
    (従来の「英語を読む・聞く」能力に加え、「英語を書く・話す」能力も評価)
  • 筆記試験以外にも高校での活動を評価し点数化する
    (例えば数学オリンピック銀賞、〇●コンテスト入賞 など)

などの入試の特徴があります。


この共通テストは 既に2回の試行調査を終えており、後は試験本番を迎える段階。


安倍政権が「明治以来の教育改革」と謳っている教育改革(大学入試改革など)は、もう実行目前のところまで来ているのです。


・・・しかし筆者は、この教育改革は失敗すると考えています。

【2020年 教育改革】これからどうなる?センター試験廃止の理由と今後の展開

課題だらけの大学入学共通テスト

「教育の画一化」を支えるはずの共通テストは、試行調査の段階において 既に形骸化し始めています。

大学入試改革の主目的は「思考力・判断力・表現力」の測定。

しかし、受験者50万人を越えるような全国一斉試験において「短期間で不公平なく厳密に点数化することが難しい」ことが露呈しています。

※ もっとも、AIの進化による高速採点の可能性は否定できません。


筆者は、教育改革2020が 日本における「教育の多様性」の幕開けだと予想します。

大学教育の多様性が求められる時代

政府主導の教育改革は課題が山積み。では、一体どうするべきなのか。


それは「大学ごとの個別対応」です。それぞれの大学に、各々の特色に合う入学試験を施行してもらいましょう。

国が拠出している補助金を人質に、文部科学省が大学運営を統制するやり方は古い。

「文部科学省が全国の大学受験を指揮する」というトップダウンのモデルは、捨て去るべきなのです。


なお、筆者は「文部科学省が無くなれば良い」と言っているのではありません。「文部科学省の果たすべき役割が変わってきている」ということを訴えたいのです!

「教育改革を促進する橋渡し役」もしくは「教育改革によって生じる格差の解消」こそが、文部科学省の新たな役割になってきます。

まず文部科学省が自己改革すべき

そもそも「教育改革2020」とは、先行き不透明な時代を若者世代が たくましく生きていくための教育改革です。

そのような意図があるのであれば、当然「改革を行う側(=文部科学省)」が まず自己改革をして、模範をみせるべきでしょう。

自分たちは変わらないが、あなたは変わりなさい

そんな都合の良い論理で、国家を支える人財が育つわけがないのです。


前回の記事で書いたように、教育改革2020は「ゆとり教育の復活」という野心も見え隠れする政策です。

現在 日本の教育システムは、大学教育をピラミッドの頂点として、学習指導要領が 高校 → 中学校 → 小学校 へ降りていく構造になっています。

すなわち、大学入試改革を行うことで、小学校〜高校までの全教育過程も 合わせてチューニングされてしまう ということ。


教育改革は もはや後戻りできませんが、・・・文部科学省が 各大学に改革のバトンを手渡すことを 強く願います。

大学入試の歴史と偏差値教育

センター試験のような全国一律の大学入試は、センター試験の前身である「共通一次試験」から始まっています。

「共通一次試験」は国公立大学の受験生が対象であり、一律5教科7科目の選択問題でした。

この流れを踏襲し、現在の「大学入試センター試験(センター試験)」が誕生。

センター試験には私立大学も参加を表明したことで、国公立大学〜私立大学まで 日本全国の大学を巻き込んでの一大受験イベントとなりました。


「共通一次試験」 → 「大学入試センター試験」という一連の流れによって、「偏差値」という物差しで受験生の学力が測られることが定着しました。

「偏差値」という「限られた時間内に正しく課題を解く能力」が、大学教育を受けるための尺度となったのです。

偏差値教育は、貧富の差による教育格差を小さくする?

従来の偏差値教育は、「貧富の差による教育格差」の解消に役立っています。

世界的にみて、日本の中学卒業までの基礎学力は非常に高い水準にあるという事が、PISA(国際的な学習到達度に関する調査)の結果から証明されています。


現在の教育システム(偏差値教育)は、国際基準において高パフォーマンスを発揮中。

しかし教育改革2020において、「偏差値」の尺度だけでは「思考力・判断力・表現力」を持った人財を輩出することは難しい、と判断されているのです。


問題の焦点は、「思考力・判断力・表現力を養うこと」と「大学入試改革」の組み合わせが、日本の国力アップへ実質的に繋がっているのか、ということです。

教育改革2020が格差社会を促進する

日本の教育界では「2018年問題」と呼ばれ、高望みさえしなければ 希望者全員が大学へ入学できる「大学全入時代」に突入しました。

義務教育ではない高校までが "ほぼ義務教育" のような立ち位置にあり、高校の授業料無償化が始まっています。


実は、高校・大学への進学が一般化した日本では、これまでの「偏差値入試」の方が「貧富の差による教育格差」を軽減できる可能性があるのです。

「思考力・判断力・表現力」を評価基準にするという大学入試改革の肝ですが、こうした能力を兼ね備えている学生は、従来の基準でいう「偏差値の高い高校」に多く在籍していると予想します。


大学入試改革で言うところの「思考力・判断力・表現力」を証明する材料とは何でしょうか?

例えば国際数学オリンピック・国際物理オリンピックなどでの入賞経験や海外留学でのプロジェクト経験 などは有力な材料と考えらえれています。

こうした実績を持つ高校生たちの「偏差値が高い」ことは、一目瞭然でしょう。


昨今は「高校の偏差値」と「親の経済力」の関係が物議を醸しています。

「偏差値」だけではなく 上記のような「思考力・判断力・表現力」までもが大学の進学条件に加わるとすれば、ますます「高校の偏差値」が高い生徒が有利になり、「親の経済格差」と「子供の教育格差」は ますます広がる一方です。

「思考力・判断力・表現力」を養うのは、「大学入試改革」の課題ではなく、入試を終えた後の「大学教育改革」の課題とするべきではないでしょうか。

この記事のまとめ

【2020年 教育改革】これからどうなる?センター試験廃止の理由と今後の展開

本稿では、

  • 教育改革2020の目玉である大学入試改革は、すでに形骸化し始めている。
  • 大学入試改革は不要。入学後の大学の教育改革が必要。
  • 教育改革を進めるならば、教育改革を行う側(=文部科学省)の自己改革が必要。
  • 従来の「日本の偏差値教育」は 一定の成果をあげている。
  • 大学入試改革は格差社会を生み出す元凶となる。

という内容をご紹介しました。


記事タイトルの「センター試験廃止後の影響」には、日本人が底力を発揮するという 筆者の期待があります。

教育改革は形骸化し、議論が噴出するでしょうが、時代の変化は待ったなしです。

日本の歴史を支えている民衆の底力を、筆者は信じています。