AI(人工知能)の進化の歴史:誕生〜ニューラルネットワークまで
更新日:AI(人工知能)の進化の歴史について、特に重要なポイントをご紹介します。
昨今 ありとあらゆる場面で活躍中のAI。しかし そんなAIも、誕生当初から高性能だったわけではありません。
現在のAIは、多くの天才技術者たちによる、まさしく努力の集大成。そしてAIの進化には、いくつかの「技術革新」とも呼べる節目がありました。
AIの誕生 〜 最新のニューラルネットワークに至るまでの流れを 学んでみましょう。
ロボットという言葉の誕生:1920年
チェコの作家であるカレル・チャペックは、1920年に「R.U.R.」という戯曲を発表しました。
R.U.R.は、世界で初めて「ロボット」という言葉を使った 歴史的な作品です。
このR.U.R.のあらすじは、以下の通り。
「ロッサム万能ロボット会社」が開発・販売している人造人間たちのお陰で、人類は労働を全くしなくなり、退化。
心を与えられたロボットたちが反乱を起こし、アルクイスト以外の人間は 皆殺しにされる。
何故アルクイストは殺されなかったのか? 仕事が大好きだったアルクイストだけは、「手を動かして働いている以上、我々の『同志』だ」と、ロボットたちから認められた為であった。
1人以外の人類を皆殺しにした後、ロボットたちは、ロボットの世が来たことを高らかに宣言する。
・・・こうして「ロボット」という概念は、衝撃的なストーリと共に 世の中へ広まっていきました。
ロボット工学三原則の発表:1950年
SF作家であるアイザック・アシモフは、自らの小説において「ロボット工学三原則(ロボット三原則)」を発表しました。
それは、次のような内容です。
第一条:
ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条:
ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
第三条:
ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのない限り、自己を守らなければならない。われはロボット(I, Robot)
(アイザック・アシモフ著)source:wikipedia
アシモフのロボット三原則は、上述の R.U.R.や フランケンシュタインなどによる、「ロボット = 創造主である人類を絶滅させる怖い存在」というイメージを払拭するものでした。
「ナイフに柄が付いているように、人間の製作物なら何らかの安全装置があって然るべき」
「確かに科学技術は危険を孕んでいるが、それらを放棄して猿に戻るのではなく、英知をもって克服すべきである」
というアシモフの主張は、その後のSF小説界だけではなく、現代のロボット工学にも影響を与えています。
ダートマス会議:1956年
AI(人工知能)の歴史を語る上で、1956年のダートマス会議を外すことはできません。
米ダートマス大学に 計算機科学(=コンピュータ科学)の天才たちが集い、お互いの研究成果を発表し合うイベントが開催されました。
このダートマス会議は 1956年7月〜8月の約1ヶ月間に及ぶものでしたが、ここで初めて 『 Artificial Intelligence (AI:人工知能)』 という言葉が使われたのです。
「人工知能」という言葉を初めて使用したのは、ジョン・マッカーシーという人物。ダートマス会議の発起人の一人です。
「AIの生みの親は誰か?」という問いかけに 明確な答えを見つけるのは困難。しかし、「その後のAI進化に最も影響を与えた人物」ということならば、筆者はジョン・マッカーシーを推します。
彼は、プログラミング言語である「LISP」の生みの親であり、現代のITシステムにおいて無くてはならない「タイムシェアリングシステム」の概念を一般化させた男です。
タイムシェアリングシステム(TSS):処理時間を細かく分割し、1台のマシンで複数の作業を同時に処理するシステム。
ルールベースAI:〜1980年代
ルールベースAIとは、AIの開発者が あらかじめルール(=動作・判断の基準)を全て定めておき、それに忠実に従うだけのコンピュータ・プログラムです。
初期のAIはルールベースであり、人工 "知能" とは名ばかりのものでした。
「こういう場合は こうする、また別の場合は こうする」といったルールを、何百〜何万通りも、人が AIに埋め込んでおく必要があったのです…。
そのため、AIを稼働させるだけでも一苦労。そしてAI稼働後に、AI開発者が予想できなかったアクシデントが発生した場合には、AIは対処できません。
このように、ルールベースAIとは、学習能力・自己判断能力が 全く無い人工知能でした。
第三次産業革命
しかし「学習能力が無い」とはいえ、オセロ(リバーシ)のような単純ゲームの場合には、ルールベースでも AIが人間の強者に勝利します。
また、コンピュータの持つ「疲れない」「間違わない」「超高速処理」という特性は、人類の発展に大きく寄与しました。
すなわち、第三次産業革命の始まりです。
機械学習(統計・確率)AI:1990年代〜
1990年代に入ると、ビッグデータ(=過去の膨大な量のデータ)を事前に読み込んでおき、それらを基に最適な判断を下せるAIが登場。
これらのAIに搭載されていたプログラムは、現代でも使われている「機械学習」の元祖ともいえるものでした。
AIの内部で 数学的な統計・確率を用いることで、予め人が定めたルール以外の現象にも対応可能。
つまり、「過去の経験を基に、現実の問題を判断する」という "人の思考パターン" を、AIが模倣できるようになったのです。
この時期のAIで最も有名なものは、IBMが開発したチェス専用マシーンである「ディープ・ブルー(Deep Blue)」。
ディープ・ブルーの内部には、当時チェスの世界チャンピオンであったガルリ・カスパロフの過去棋譜データが 大量に保持されていました。
棋譜データの活用と 1秒間に2億手の先読みを行った結果、1997年 ディープ・ブルーは 人類頂点のカスパロフに勝利を収めたのです。
ビッグデータ解析と機械学習の限界
「ルールベース → 統計・確率による判断」というAI進化は、画期的な技術革新であることは間違いありません。
しかし、人の思考パターンに近づいたとはいえ、まだまだこの「機械学習AI」には限界があります。
それは、過去のビッグデータが何も蓄積されていない "全く新しい現象" については無力 だという点。
また、先読みしなくてはいけない手数が チェスよりも遥かに多い将棋、将棋よりも遥かに多い囲碁では、AIが人類に勝つのは数百年後だと言われていました。
そう、この時までは…。
【 豆知識 】
チェスで先読みしなくてはいけない手数を「1」だとした場合、将棋は 1000000...(1に0が百個続く) の手数を先読みする必要があります。
そして、将棋で先読みしなくてはいけない手数を「1」だとした場合、囲碁は 1000000...(1に0が百二十個続く) の手数を先読みする必要があります。
なんと、囲碁で先読みしなくてはいけない手数は、宇宙に存在する原子の数以上なのだとか…(驚)
ニューラルネットワークAI:2010年代〜
2015〜2017年にかけて行われた「AlphaGo(アルファ碁)」の快挙は、世界中を震撼させました。
「人間のプロに勝利するのは数百年先だ」とまで言われていた囲碁において、なんとAIが人間のプロを圧倒。
このアルファ碁を始めとした 最新のAIに搭載されている仕組みが「ニューラルネットワーク」です。
ニューラルネットワークでは、人の脳機能(=学習メカニズム)を AIが模倣。
人の脳は「ニューロン」という神経細胞が無数に繋がりあって構成されています。五感を通して外部から様々な刺激を受け取ることで、特定のニューロン同士の繋がりが強化。すると、脳内を情報が速やかに流れるようになります。
そのようにして、人の脳は「経験」を通し、全く新しい出来事に対処(=学習)することが可能です。
ニューラルネットワークでは、この脳機能をAIへと応用。
「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれる手法を用いることで、AIは「全く未知なる出来事を、自ら学習して判断する能力」を手に入れました。
一段階前の「機械学習」では、人がAIへ「何を学習するのか」を指示。
しかしディープラーニングでは、与えられたデータを基に「何を学習したらよいのか?」さえも、AIが自ら思考するようになりました。
これは驚くべき進化です。人に頼らずとも「AIが自ら学び、勝手に賢くなっていく」ということなのですから…。
定石を覆し、創造性さえも兼ね備えたAI
将棋や囲碁などで使われる「定石」という言葉。定石とは、人類が数千年の歴史で培った「こういう局面の場合はこうするのだ」という経験則です。
上述のアルファ碁では、定石にとらわれない奇想天外な指手で、AIが人類の最高峰に勝利しました。
医療分野では、人間の医師が見落としていた大病をAIが発見した というニュースもあります。
また、作詞作曲、小説の執筆、絵画の描画 といった創作活動までをも、AIが行えるようになりました。
第四次産業革命
このように、「人があらかじめ教える必要が無い」ということは、「AIが人よりも先に正解を見つける場合がある」ということになります。
- コンピュータの持つ圧倒的な処理速度
- ますます高速化するモバイルインターネット網
- IoT(様々なモノがインターネットへ接続)
を考えると、その可能性は 今後どんどん大きくなっていくことでしょう。第四次産業革命の始まりです。
科学、医学、金融、軍事、政治、etc…。今後はAIが、ますます多くの分野において重宝されそうですね。
シンギュラリティ(技術的特異点):2045年
AI研究の世界的権威である米レイ・カーツワイル氏は、著書の中で「技術的特異点(technological singularity:シンギュラリティ)」を発表。
同氏は「1,000ドルで手に入るコンピュータの性能が、全人類の脳の処理速度を上回る時点」として、シンギュラリティを定義しています。
「人類の脳」の性能を超え、自ら進化することが可能なAI
・・・それは人類にとって「大いなる福」にも「大いなる厄災」にもなりえます。
「車椅子の天才科学者」として有名な 故ホーキング博士。ホーキング博士は生前、AIの軍事利用に対し 警告を発していました。
高度なAIには、開発者のモラルが要求されます。映画『ターミネータ』の世界と、アニメ『ドラえもん』の世界。人類へどちらの未来が訪れるかは、今後のAI活用に掛かっています。
感情を持ったAI:2112年ドラえもん誕生
ニューラルネットワークを更に進化させ、AIに感情を持たせようという研究が、現在 進んでいます。
ドラえもん、鉄腕アトム、ベイマックス、…のような、優しくて正義感の強いAI、人と一緒に喜怒哀楽を感じて笑ってくれるAIは、果たして登場するのでしょうか?
原作によれば、ドラえもんの誕生日は 2112年9月3日。今から一世紀ほど未来のお話です。
果たして我々の子孫は、2112年にどのような文明社会を築いているのでしょうか?
・・・想像すると、胸が熱くなりますね ^^
この記事のまとめ
AI(人工知能)の進化の歴史:誕生〜ニューラルネットワークまで- 「ロボット」という言葉の誕生
1920年 - ロボット工学三原則の発表
1950年 - ダートマス会議
1956年 - ルールベースAI
〜1980年代 - 機械学習(統計・確率)AI
1990年代〜 - ニューラルネットワークAI
2010年代〜 - シンギュラリティ(技術的特異点)
2045年 - 感情を持ったAI
2112年 ドラえもん誕生
AI(人工知能)の進化の歴史について、要点をまとめてみました。
今後ますます進化するAIの動向に、目が離せません。
と同時に、AIが平和目的のために使われる 世の中でありますように(祈)