レジリエンスを高めるコツ - AQ(逆境指数)とRQ(心の弾力性)について
昨今、教育界やビジネスにおいて「レジリエンス」という言葉を耳にするようになりました。
レジリエンスとは「逆境に負けないメンタルの強さ」のこと。
これだけを聞くと抽象的な概念のようですが、レジリエンスは下記の指標によって体系化されています。
- Adversity Quotient(AQ):
逆境指数 - Resilience Quotient(RQ):
心の弾力性・回復力
昨今のアメリカでは、「成功者・カリスマリーダーの条件」として AQ・RQが大注目。
なぜなら IQや EQ以上に、AQや RQのスコアは 人生へ影響を与えることが 明らかになった為です。
成功者の条件として、IQやEQは時代遅れ?
いわゆる「地頭の良さ」を測る際に用いられる指標が、ご存知「IQ(Intelligence Quotient:知能指数)」。
学歴や教養などにとらわれない「脳の性能」そのものを表す値として、クイズ番組の難易度や多分野の天才ランキングなどに、度々登場しています。
IQの高さと成功は無関係
ところで、高IQの人が社会的に成功するかといえば、決してそうではないことを歴史が証明しています。
もちろんIQが高い(=頭の回転が速い)に越したことはありません。しかし いくらIQが高くても 他人の気持ちを汲み取れない人は、決して成功者として名を残すことは不可能です。
EQは、頭の良さではなく精神性を重視して誕生
そうした状況を踏まえ IQ重視の風潮が見直された結果、新たに「EQ(Emotional Intelligence Quotient:心の知能指数)」と呼ばれる指標が制定されました。
このEQとは「他者との良好な人間関係を築く能力」、言い換えるならば「良好な社会生活を営む能力」を表す値です。
高いIQ(=頭の回転が速い)に加え、高いEQ(=他人の気持ちを察するのに長けている)を兼ね備えていることが、成功者の条件であると言われるようになりました。
・・・ところで、EQが始めて学術的に用いられたのは1987年のこと。
かれこれ30年以上が経過した現代では、EQが用いられ始めた当初に比べ、社会の様子が大きく変化しました。その変化の最たるものは、何と言ってもインターネットの普及です。
AQとRQは、情報化社会における成功者の条件!?
情報は瞬時に世界を駆け巡り、様々な思想・技術が目まぐるしく生まれては消えていく情報化社会。現代では、もはや成功者の条件を IQとEQだけでは判定しきれなくなりました。
そこで昨今アメリカで脚光を浴びているのが、IQ・EQに次ぐ 新たな指標 AQ(Adversity Quotient:逆境指数)と RQ(Resilience Quotient:心の弾力性)です。
※ AQもRQも ほぼ似たような概念ですが、AQの方がより学問として体系化され、知名度があります。
なお、本稿の冒頭でご紹介したように、日本社会においては「AQ」「RQ」ではなく「レジリエンス」という名称が一般的です。
前置きが長くなってしまいましたが、以下では「現代の成功者に欠かせない要素」と言われる「AQ」と「RQ」について解説します。
AQ(Adversity Quotient)、RQ(Resilience Quotient)とは?
AQは「Adversity Quotient」の略語であり、日本語訳では「逆境指数」。
RQは「Resilience Quotient」の略語であり、日本語訳では「心の弾力性(回復力)」となります。
「逆境指数」「心の弾力性」とは、すなわち「メンタルの強さ」のこと。
- 逆境に遭遇しても、ストレスを溜めること無く どれだけ平常心を保って対応できるか
- 落ち込んでしまった場合に、どれだけ早く立ち直れるか
の度合いを表す指標です。
「AQ・RQと成功」の関係は、庶民感覚ともマッチする
AQ・RQに関する研究は、ようやく始まったばかりです。数十年間の歴史があるIQに比べると、測定方法や論文数が劣っている感は否めません。
しかし変化の著しい現代社会において、「どれだけ上手にストレスを受け流せるか」が成功の条件だというのは、納得のいく話。
いくら高いIQ・高いEQ(=頭の回転が速く、他者の気持ちを察するのに長けている人)であったとしても、たびたび胃に穴が空くほどストレスを溜め込んでいたのでは、・・・およそ成功しないだろうということは 素人目にも明らかです。
現代社会における成功者の条件
高いIQ・高いEQ・高いAQ(高いRQ)を兼ね備えた人。
すなわち
- 頭の回転が速い
- 他者の気持ちを察するのに長けている
- 予期せぬトラブル・逆境に巻き込まれても、冷静に対処できる
- 過去の失敗を、いつまでも思い悩まない
・・・そんな完璧人間が 果たしてどれ程いるのかは疑問ですが、少なくとも「現代における成功者の条件」として研究者たちが考えているのは、上記のような人物像だというわけです。
AQが高い人、RQが高い人とは?
さて、では「AQやRQが高い人」とは、具体的に どのような人物なのでしょうか?
(上章の内容と被る部分がありますが)AQやRQが高い人とは、ずばり「鋼のメンタル」を持つ人のことです。自らの感情を制御する能力に優れ、たとえ逆境やトラブルに巻き込まれたとしても、落ち込んだりはしません。
そして、「失敗は成功の元」という考え方が とことん染み付いており、失敗を常に良い方向へ捉えます。
つまり、失敗を恐れて何かを躊躇することは 非常に稀なのです。
※ 例を挙げると、エジソン、ヘンリー・フォード、松下幸之助氏のように「失敗が何度続いても、成功するまで粘り強く諦めない」タイプの人。
AQ・RQが高い人は、カッとならない(感情的に怒らない)
人間関係において、怒っている相手に こちらも「怒り」をぶつけると、大きな亀裂が生じかねません。
しかし AQ(RQ)の低い人同士で意見が衝突すると、ややもすると攻撃的になり、火に油を注ぐ結果となることが多いんです…。
(↑相手のグーに、こちらもグーで応戦するようなもの)
一方 AQ(RQ)の高い人は、怒っている相手に流されることなく冷静に話し合い、自然と相手の怒りを発散させ、人間関係に調和をもたらすことができます。
(↑相手のグーに、こちらはパーとチョキを巧みに使って 応戦するようなもの)
言うなれば、悟りを開いたブッダや、マハトマ・ガンジーのような人格者。
そうした側面において、「高いAQ・高いRQを持つ人は、高いEQを持つ人と類似する部分がある」と言うこともできます。
AQ(Adversity Quotient)について、より詳しく
AQは、米ハーバード大学ビジネススクール客員教授のポール・ストルツ博士によって考案されました。
上述の通り、AQとは「逆境に対してどのように反応・対応するのか」を数値化した指標です。
AQの測定方法 - AQの要素である「CORE」とは?
AQでは、以下4つの要素を通して評価レベルが決定します。
- コントロール(Control)
- 責任(Ownership)
- 影響の範囲(Reach)
- 持続時間(Endurance)
それぞれの要素の頭文字を組み合わせて「CORE」。AQを判定するコアというわけです。
AQの評価レベルについて
AQの評価は、レベル1(最も低評価) 〜 レベル5(最も高評価)の5段階に分類。
Level | 評価 |
---|---|
Lv.1 | Escape(逃避) 逆境・トラブルから逃げ出す。 |
Lv.2 | Survive(生存) 逆境下でも生き残る手段を考える。 |
Lv.3 | Cope(対処) 応急処置的な対処で精一杯。臭いものに蓋。 |
Lv.4 | Manage(管理) 逆境を正しく管理し、解決しようとする |
Lv.5 | Harness(滋養) 逆境を糧とし、さらなる成長を遂げる。 |
レベル5のAQをコトワザで表現すると、「雨降って地固まる」「失敗は成功のもと」となります。
リーダーやカリスマ経営者とAQ
組織のリーダーやカリスマ経営者の条件としては、レベル4以上のAQが求められます。
また、AQの高い者がリーダーを務めている組織のほうが、長期的な作業パフォーマンスが低下しにくいと言われています。
なお、組織のAQを低下させるリーダーの特徴は、下記の通り。
- 約束を守らない
- 公平ではない人事評価
- ネガティブワードが口癖
(例:「これは失敗だ」「どうせ◯◯◯だから」など) - 他人や部下を褒めない、認めない
- 自主性、創造性をつぶして型にはめようとする
すなわち、職権を乱用してパワハラをするリーダーは、「自分で自分の首を締めている」ということになります。
AQや RQを高めるトレーニング方法
AQ(RQ)は、トレーニングや経験によって高めることが可能です。
1.プラス思考
最も重要となるポイントが「肯定性」、すなわち「ポジティブさ」。AQ・RQを高めたければ、常にプラス思考を持つことが大切です。
問題解決に楽観的な見方を示し、たとえ予期せぬ逆境に見舞われたとしても、「確かに悪い状況ではあるけれど、でも、もっと悪い状況でなくて良かった〜♪」と笑い飛ばせる心の余裕を創り出しましょう。
2.笑顔と感謝
そして「プラス思考」と合わせてAQ・RQを高めるのに必須の要素が、「笑顔」と「感謝」です。
自身の人生に対する満足度が高い人は、常にニコニコしAQ・RQのスコアも高め。大なり小なり周囲の人々へ感謝の気持ちを抱いています。
「独りで生きているのではなく、多くの人々に支えられながら生きている。」
これを日々感じているからこそ、自己肯定感が生じ 逆境やトラブルに負けない「鋼のメンタル」を持つようになる ということです!
感謝とプラス思考は運命を変える
また、米ハーバード大学の医学・心理学博士のジョーン・ボリセンコ氏は、著書の "It’s Not the End of the World: Developing Resilience in Times of Change" の中で、「RQが高い人は意識的に未来を想像し、自ら未来を創りだす」と述べています。
常に感謝の気持ちでプラス思考を持ちつづけることが、自身の運命すらも変えてしまうというのは、大変興味深い内容です。
この記事のまとめ
レジリエンスを高めるコツ - AQ(逆境指数)とRQ(心の弾力性)について- 成功者の条件として、IQやEQは時代遅れ?
昨今アメリカで注目されているのが、IQ、EQに次ぐ AQ、RQ と呼ばれる指標。 - AQ、RQとは?
「多くの逆境に遭遇したとしても、どれだけストレスを溜めること無く平常心を保って対応できるか」「落ち込んでしまった場合に、どれだけ早く立ち直れるか」の度合い。 - AQが高い人、RQが高い人とは?
「鋼のメンタル」を持ち、自身の感情を制御する能力に優れ、相手の感情に流されることがない人。また、失敗を恐れて何かを躊躇することが非常に稀。 - AQについて、より詳しく
AQは、Control/Ownership/Reach/Endurance の4要素でレベルを評価。AQのレベルは1〜5の5段階。成功者になるにはレベル4以上のAQが求められる。 - AQ や RQ を高める方法とは?
AQ・RQは訓練と経験で高めることが可能。最も重要な点が「ポジティブさ」、次いで「笑顔」と「感謝」。多くの人に支えられながら生きていると感じることで、逆境に負けないメンタルを持つことができる。それは自身の運命すらも変えてしまう。
日本社会においても 徐々に浸透しはじめた「レジリエンス」という考え方。
変化が著しくストレスを溜めやすい現代社会ですが、・・・ぜひ「プラス思考」「感謝」「笑顔」を忘れず、鋼のメンタルを鍛えていきましょう!
お役に立てましたら幸いです ^^)