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テトリスの著作権について【自作テトリスを公開したら違法?】

テトリスの著作権について【自作テトリスを公開したら違法?】

テトリスには著作権(および商標権)が存在するため、自作テトリスを公開する際には注意が必要です。

例えば、テトリスクローン(=テトリスの完全な模倣)と言われたiPhoneアプリの「Mino」は、アメリカで2012年に著作権侵害の有罪判決を受けてしまいました。


・・・ところで、著作権うんぬんを抜きにして考えるならば、テトリスの「自動でブロックが落ちる」「ブロックが回転する」「ブロックを積み上げて消す」という規則的な動きは、コンピュータ・プログラミングの練習材料として最適。

そのため、プログラミング学習用の書籍や講座などでは、初心者向けにテトリスの作り方が度々解説されています。


それでは、仮に自作テトリスが完成したとして、それを公開したら違法(=著作権侵害)となってしまうのでしょうか?

また、現在AppStoreやGoolePlay、Web上などに出回っているテトリスゲームは、果たして合法と言えるのでしょうか?

「落ち物ゲームの王様」と言っても過言ではないテトリス。ここでは、テトリスの著作権に関する疑問を解決していきます。

テトリスの著作権について【自作テトリスを公開したら違法?】

1.テトリスの著作権・商標権を管理している団体

テトリスの著作権・商標権は「テトリス・ホールディング(Tetris Holding, LLC)」と呼ばれる会社が保有しています。

そして、テトリスの販売ライセンスを取得するためには、テトリス・ホールディングの子会社である「ザ・テトリス・カンパニー(The Tetris Company, LLC)」を介する必要があります。

また、日本でテトリス販売のライセンス契約を結ぶ場合には、「テトリスオンライン・ジャパン」という会社が窓口になっているそうです。


それでは、これらの会社と無関係に自作テトリスを作成・公開した場合、それが即、テトリス・ホールディングの「テトリス著作権」を侵害することになってしまうのでしょうか?

・・・いいえ、必ずしもそういうワケではありません。

2.アイディアは著作権保護の対象とはならない

まず、著作権を論じる上で知っておくべきは、「アイディアは著作権保護の対象にならない」ということです。

著作権法第2条によれば、著作物とは「思想 または 感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術 または 音楽の範囲に属するものをいう。」と定義されています。

つまり、著作物とは「思想(=アイディア)を形に表現したもの」であり、「アイディア」それ自体は著作物と見なされないということです。参考:gihyo.jp


そして、この「アイディアは著作権保護の対象とはならない」については、アメリカの裁判事例においても当てはまります。

冒頭でご紹介した テトリスクローンの「Mino裁判」においても、「ゲームをプレイしているユーザが、ボタン等でブロックを操作し、ブロックが横に隙間なく揃った行を消す」というルールは「アイディア」と見なされ、著作権保護の対象とは認められませんでした。

3.日本の裁判では、ソフトウェアの機能が類似していても著作権侵害にはならない

過去の日本において「他社のソフトウェアに画面構成や入力項目が類似したソフトウェアを作成し、裁判沙汰になる」という事件がありました。

この件について東京地方裁判所は、平成14年9月5日の判決において「思想・アイディアが同じなだけであれば著作権侵害には該当しない」という趣旨の内容により、著作権侵害の訴えを退けています。参考:gihyo.jp


この「著作権侵害に該当しない」と東京地裁が認めた「思想・アイディア」には、ソフトウェアであれば「機能・画面構成」、ゲームであれば「ルール」も含まれると解釈することができます。

テトリスについて言及するならば、テトリスの肝とも言うべき「4つの■を組み合わせた落下ブロックの形状」については、「アイディア」であるため著作権保護の対象ではないと考えるべきでしょう。

本家テトリスの「アイディア以外の部分」、即ち「外観(デザイン)」を模倣さえしなければ、日本の裁判所において、自作テトリスが著作権侵害と見なされる可能性は低いと言えます。


ただし、これには2つ落とし穴があるんです。

4.アメリカの裁判では、テトリスのアイディア自体に著作権が認められた

上述のように、(過去の判例を鑑みて)日本の裁判所では テトリスのアイディアが著作権侵害だと見なされる可能性は低いです。しかしながら、アメリカの裁判所では話が別。

冒頭の「Mino裁判」では、テトリスの「横一列に隙間なくブロックが揃った行を消す」というルールについてこそ著作権侵害となりませんでしたが、なんと「7つの落下ブロック形状 と ゲームフィールドのサイズ」については、裁判所がテトリスの著作権を認めました。そのため、Mino側がテトリスの著作権を侵害したという判決が下ったのです。

※ なお、この判決はアメリカの著作権法に照らし合わせても異例とのこと。(個人的には、Minoが余りにも本家テトリスを模倣しすぎたため、制裁の意味も含まれているのではないかと推測しています^^)


アメリカの裁判で認められたテトリスの著作権を、より具体的に見てみましょう。

本家テトリスは「横10マス x 縦20マスのフィールドに、下記7つのブロックがランダムで落下してくる」という落ち物ゲームです。

テトリスのテトリミノ(ブロック)例


テトリスは元々 旧ソ連の科学者が開発した教育用ゲームであり、このフィールドサイズ・ブロック形状が、数学的に計算して最も理に適っており、プレイヤーが楽しいと感じる組み合わせなのだそうです。

つまり、自作テトリスを公開する場合は、「10マス x 20マスのフィールドサイズ」もしくは「7つの落下ブロックセット」のいずれかを本家テトリスと異なるようにしないと、アメリカの裁判で著作権侵害と見なされる恐れがあるということになります。

※ 落下ブロックについては、例えば自作テトリスを8つのブロックセット(=上記7ブロックに自作ブロックを1つ追加する)にしたり、逆に 6つのブロックセット(=上記7ブロックから1つのブロックを減らす)にすることで、著作権侵害と見なされる可能性がグッと低くなります。


「数学的に最も理に適っている」と言われるフィールドサイズとブロック形状で 自作ゲームを公開できないのは残念ですが、裁判所が著作権を認めてしまった以上、仕方がありませんね。。。

5.【商標権】テトリスやテトリミノという名称の使用は厳禁

「日本の裁判では テトリスのアイディア(=ゲームルール)には著作権が適応されない。アメリカの裁判では、多少テトリスのルールに独創性を追加すれば 著作権侵害と見なされる可能性が低くなる。」

・・・というのが、ここまでの内容の要点となります。


これらを踏まえ、「アメリカでも問題にならないように多少ルールに独創性を追加し、さぁ自作テトリスを公開するぞ〜」・・・と、意気揚々のあなた。

しかし、実は「著作権」以上にテトリスの版権元が目を光らせているのが「商標権」と呼ばれる権利なんです。

「テトリス」や「テトリミノ」「Tetris」「Tetrimino」という名称は、全て商標権で保護されています。(※ 英語表記の場合、大小文字は不問)

余り深く考えず自作ゲームにこれらの名称を使用してしまい、万が一公開後にテトリスの版権元から訴えられた場合は、一発アウト。良くて公開差止め、最悪の場合 高額の損害賠償請求が待っています。


例えば、「テトリス風」「テトリスっぽい」「テトリスのような」「テトリスもどき」といった、ゲームの説明において プレイヤーの理解を助けるための例として「テトリス」を挙げることは、問題ありません。

しかし、「無料テトリス」「スーパー・テトリス」「デラックス・テトリス」「http://◯◯◯-tetris.net」のように、サービス名・アプリ名やドメインの一部(または全部)に、「テトリス」「テトリミノ」「Tetris」「Tetrimino」といった名称を使うことは、正式なライセンス契約を結んでいる場合を除き、テトリスの商標権侵害となってしまうんです。

つまり、世の中に多数存在している「テトリス」「tetris」と名前のついたアプリ・ゲームサイトは、運営者が正規ライセンス契約を結んでいる極僅かなサービスを除き、そのほとんどが違法(=海賊版テトリス)と言えます。

もし貴方が海賊版テトリスを運営しているならば、ある日突然、版権元のテトリス・ホールディング社が「商標権の侵害だ!」と訴えてきた場合、逃れる術はありませんよ。。。


また、スマホアプリに関して言えば、AppStoreやGooglePlayの著作権・商標権侵害に対する審査は 近年ますます厳しくなってきました。

そのため、おそらくは「スマホアプリの開発者がうっかり商標権を侵害してしまう」ことは、減少傾向に向かうのでは無いかと推測します。

むしろ問題となるのは、Web上でゲームを公開しているサイトではないでしょうか?

Flash・JavaScript・HTML5で自作したテトリス風のゲームに、「無料テトリス」や「フリーテトリス」と言ったタイトルをつけて公開しているサイト。もしくは、ドメインの一部に「tetris」を含んでいるサイトが随所に見られますが、早急にタイトルやドメインを修正したほうが、後々の火種を防ぐことに繋がると思われます。

この記事のまとめ

テトリスの著作権について【自作テトリスを公開したら違法?】
  1. テトリスの著作権・商標権を管理している団体
    テトリスの販売ライセンスを取得するためには「ザ・テトリス・カンパニー」を介する必要があります。また、日本でテトリス販売のライセンス契約を結ぶ場合には、「テトリスオンライン・ジャパン」という会社が窓口になっています。
  2. アイディアは著作権保護の対象とはならない
    日米両国において、著作物とは「アイディアを形に表現したもの」であり、「アイディア」それ自体を著作物とは見なしません。
  3. 日本の裁判では、ソフトウェアの機能が類似していても著作権侵害にはならない
    過去のソフトウェア裁判の判決を鑑みるに、本家テトリスの外観を模倣さえしなければ、日本の裁判において自作テトリスが著作権侵害だと見なされる可能性は低いと言えます。
  4. アメリカの裁判では、テトリスのアイディア自体に著作権が認められた
    アメリカの裁判では、異例とも言える「テトリスのアイディア自体に著作権を認める」判決が下りました。この場合、「10x20のゲームフィールドサイズ」及び「7つの落下ブロックセット」に対し オリジナルのルールを追加すれば、著作権侵害だと見なされる可能性が低くなると言えます。
  5. 【商標権】テトリスやテトリミノという名称の使用は厳禁
    日本で自作ゲームを公開する際は、どちらかと言うと「著作権」ではなく「商標権」に注意。「テトリス」や「テトリミノ」「Tetris」「Tetrimino」といった名称を自作ゲームにつけて公開するのは厳禁です。Webサイトの場合は、ドメインでも商標権を侵害してはいけません。

これから自作のテトリス風ゲームを公開しようと考えている方々の、お役に立てれば幸いです^^


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