【韓国不動産の裏事情】ソウル市内「チョンセ」マンションが74週も連続高騰!?
更新日:韓国在住歴21年のユナママ(主婦)が、現地から韓国の「今」をお届けします!
初投稿は「韓国の不動産事情」について。
2020年の夏以降、韓国の不動産市場は大荒れ状態。定期的に発表される不動産価格は「わずか数か月の間に数千万ウォン上昇」という異常事態です。
※ 数千万ウォン:およそ数百万円
特にソウル市内の高級アパートが著しく、なんとソウル・首都圏の住宅価格は 74週も連続して上昇中!
その原因は、文在寅政権によって 2020年7月30日に発令された新しい不動産法。
これによって、韓国の「伝貰(チョンセ)」と呼ばれる賃貸システムが 崩壊しつつある為だと言われています。
韓国独特の不動産 賃貸システム「チョンセ」とは?
韓国独特の不動産 賃貸システム「チョンセ」。
家を借りる側が あらかじめ高額の保証金*を大家に預けておき、引っ越す場合は 保証金の全額が返金されるというシステムです。
* 高額の保証金:不動産価格の5〜8割が一般的
この賃貸システムは、金利が10%以上だった時代に制定されたもの。大家はこのチョンセ金を銀行に預けることで利子が発生。それを家賃として受け取っていました。
チョンセのメリット
つまり 不動産を借りる側としては
- 実質、資金が減らない。
- 「家賃の支払い」と「物件の購入資金を貯める」を、同時にできる。
これがチョンセの大きなメリットです。
通常2年ごとの契約更新となり、更新時にチョンセ金(=大家へ預ける保証金)が上乗せされるケースがあります。
チョンセのデメリット
理想的な不動産賃貸システムのように思える「チョンセ」。しかし下記のようなデメリットもあります。
- 2年ごとの契約更新時に、大家がチョンセ金(保証金)を上乗せする可能性がある。
- チョンセ金の上乗せに応じれないと、引っ越しを余儀なくされる。
実際に、チョンセでの賃貸は一か所に定着しずらく、子育て家庭にとっては かなり不便。
そのせいもあり低金利の時代になってからは、チョンセ物件が姿を消しつつあるのです。
頭金があれば「マンション購入」
韓国で持ち家をゲットする方法は チョンセだけではありません。
頭金を払ってアパート(=日本でいうマンション)を購入する方法もあります。
その場合、不動産抵当による利子を数十年 銀行に払い続けるという、日本同様の長期ローン。
新法案でチョンセ物件が高騰
持ち家の購入資金を貯めたい韓国の若者にとって、チョンセは非常にありがたいシステム。
しかし昨今「銀行利子が低いこと」を理由に、チョンセ金(保証金)の値上げが続いています。
具体的には、大家が2年ごとの契約更新時に 数千万ウォン(数百万円)単位で保証金を上乗せ。チョンセ暮らしにとっては かなり苦しい状況でした。
新・不動産法「賃貸借3法」の成立
2020年7月30日、新・不動産法「賃貸借3法」を あっという間に成立させた文在寅政権。
チョンセの値上げ率(=保証金の上乗せ)を「5%以内」に制限し、契約期間も2年間から4年間へと変更。状況改善を試みました。
賃貸借3法が施行された結果
しかしこの法案、本来は 借主を守る制度となるはずでしたが、フタを開けてみると全く別の結果が…。
大家たちは借主(=今 住んでいる住民)との契約更新を渋り出したのです。
※「大家の家族が住む」という条件ならば 法的に借主を追い出すことが可能なので、大家自身や子ども・孫が住むことを理由に、現在の住民を追い出すことになってしまいました。
追い出され行き場を失った「持ち家無し & マンション購入できる頭金もない世帯」は、また違うチョンセ物件を探すはめに。
結果的にチョンセ需要が急上昇し、それに伴い価格も高騰…。
マンション購入と変わらないお値段のチョンセ物件が多数出現という、最悪の不動産事情となりました。
チョンセ高騰で、ソウルに持ち家が持てない!
韓国で首都圏の不動産価格(特にアパート)全体が上昇し続けることで、若い世帯は ソウル郊外や地方への引っ越しを余儀なくされることに。
当然「庶民のための政治」をアピールしていた文政権に対する 深~い恨み(もう不信どころじゃないです)を抱える、子育て世代・若者世代が急増。
生涯を懸けて「自分の家をソウルに(もしソウルが無理なら、せめて首都圏に)持ちたい!」と必死だったのに…ですよね。
韓国人の「持ち家」と「ソウル定住」に対する憧れ
韓国人にとって「持ち家に対するロマン」は、日本の団塊世代が抱いていたようなもの。
「不動産だけは信じられる資産」という思想が根強いのと「子供の教育」のために、ソウルでの定住は不可欠です。
良質な教育環境(=有名大学への進学率が高い中学・高校や進学塾)が密集するソウルの江南地区は、アパートのチョンセ金が20〜30億ウォン(2~3億円)も珍しくありません。
韓国の不動産事情:一般市民はソウル市内に住むことが難しい
・・・いくら引っ越し時に戻ってくるとはいえ、「2億円の保証金」なんて一度に支払えますか?
高騰するチョンセ価格(もちろん購入価格も上昇中)のゆえに、ごく一部の超お金持ち以外は、江南地区はもちろん ソウル市内に住むことすらも、難しくなってしまったのです。
文政権の愚策「家が無ければホテルに住め」?
文政権の不動産政策は大失敗。しかし与党は、この失策を補うために「コロナで潰れた都心のホテルやモーテルを買い取って、改造してから市民へ貸そう」と言い出しています…。
チョンセ難民となっている世帯のほとんどは、子育て中の30~40代。
観光客が去った都心のホテル(=おそらくワンルームか、それに近い)と 実際に住む人の希望が、まるで合致していません。
この代案は、まるでマリーアントワネットの
「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」
という言葉を連想させると、マスコミや市民から猛反発。
※ これは彼女の言葉ではないとの説も
韓国の与党「民主党」の今後
次期 韓国大統領選挙と、ソウル市・プサン市*の市長補欠選挙が迫る韓国。
* プサン市 - 首都ソウル市に次ぐ韓国第2の人口を誇る街。ソウル市とプサン市は、どちらもセクハラ疑惑で市長が不在状態。
若年層や社会的弱者を支持層としてきた、文政権を支える与党「民主党」。
韓国国民の不満が爆発しそうで、どうも今後ヤバいのでは? と思わされる状況です…。