韓国のセンター試験『スヌン』 "世界一受験戦争が激しい国" の文化とは?
更新日:韓国在住歴21年のユナママ(主婦)が、現地から韓国の「今」をお届けするコーナー。
今回は「韓国の大学入試(スヌン)」について。
韓国において いよいよ明日(2020.12.3)は、2021年度 大学入試センター試験日です。
※ 韓国版センター試験:韓国語での正式名称は「大学修学能力試験」、略して「修能(スヌン)」。
ユダヤ式英才教育1 でお伝えしたように、韓国は「世界で最も受験戦争が激しい国」だと言われています。
「出身大学で人生が決定する」といっても過言ではない韓国社会。・・・日本人の感覚からすると 異様なまでの受験戦争と、親の過干渉をみることができるこの時期。
韓国のスヌン・シーズンに見られる 独特な光景をご紹介します。
大学修学能力試験(スヌン)とは?
熾烈な受験大国として有名な韓国。「スヌン」は受験生家族にとって一大イベント!
早ければ小学生のうちから、スヌン(=大学入試)に向けて 親子二人三脚で準備しています。
韓国のスヌンと、日本のセンター試験の違い
日本のセンター試験とは異なり、韓国のスヌンは「丸1日」で終了します。
朝8時40分から開始し 17時40分まで、5科目のテストが一気に進行。
スヌンの等級区分
スヌンは5科目で500点満点となっており、満点が最高等級(最高評価)。そこから9つに等級分けされる仕組みです。
※ 上位4%が1等級、そこから7%(累積11%まで)が2等級、…となり、それぞれの等級に合わせて希望大学・専攻を決め志願するという流れ。
スヌンだけではなく内申点でも、大学入学が評価
日本の大学進学率が50%台なのに比べ、現在 韓国の進学率は70%ほど。しかし2009年 韓国の大学進学率が80%近かったことを考えると、だいぶ低下したといえます。
その理由の一つは「スヌンの結果次第で大学が決まる」という90年代までの常識が崩れてきたため。
韓国では90年代後半から「学生簿総合全衡(日本でいう 内申点)」と呼ばれる先般的な評価や「論述と面接による入学」が徐々に浸透しはじめました。
子供の環境や性格によっては「たった1日の一発勝負」で決まるスヌンよりも、中学・高校時代の学校生活全体*を評価してもらった方が、有利な場合もあるようです。
※ 内申の評価基準:奉仕活動、学生会活動、各種大会での受賞経験、自己紹介文、教師の推薦 など
韓国における内申制度の問題点
ただし韓国における内申制度には、問題点も指摘されています。
上述のとおり「出身大学で人生が決まってしまう」といっても過言ではない韓国社会。子供の内申点を上げるための「高額な闇ビジネス」が横行しているというネガティブな一面も…。
具体的には、大会に出す作品や論文を 塾講師が代わりに請け負ったり、等があるようです。
スヌン入学と内申点入学の比率
要約すると、韓国の受験生には 下記2つの道が提示されていることになります。
- スヌンの一発勝負にかける
- 長い時間(お金も)を費やして内申点を上げていく
現在は、おおよそ「内申入学者が4割」「スヌン入学者が6割」という割合です。
しかし どちらの道を選ぶにせよ、大学進学を目指す韓国の学生達は、高校生になると 朝から晩まで受験戦争へ突入。
スポーツ、芸術、趣味活動などは二の次となり、青春を謳歌できないのは可哀想に感じてしまいます。
※ 韓国の高校には、日本のような部活が ほぼありません。
我が子の受験成功にかける親たちの情熱!
スヌンへの想いは、受験生の親たちも凄まじいです。
スヌンの約100日前になると、近所のキリスト教会やお寺では、一斉に「合格祈願祈祷会」がスタート! 毎日続くこの祈祷会には 特に母親たちが通い、その熱心に祈る姿が印象的。
(日本の教育ママたちもビックリ…)
韓国はクリスチャン人口が多い国というイメージですが、実は壮年・老年世代の仏教徒も大勢います。
日本の受験生のように「お寺でおみくじを買う」どころではない、熱~い祈祷が飛び交っています。
牧師さん・神父さん・お坊さんも総出で「スヌン一色!」の韓国です。
スヌン受験日の当日は、飛行機も飛ばない
スヌン受験日の午後は「英語のリスニング試験」。
騒音が受験生を邪魔しないようにと、その試験時間(約40分間)は 飛行機の発着陸を全国規模で禁止する、という徹底ぶり。
しかし今年はコロナの影響で、そもそも1日に数着しか運航していないため「飛行機騒音による受験妨害」は全く心配なさそうです。
白バイやパトカーが、スヌン受験生のために出動
そして毎年、寝坊・遅刻したスヌン受験生のために 白バイやパトカーが出動。
もはや韓国では お馴染みの光景です…。
縁起を担ぐ「スヌン祈願」の食べ物が販売
街のパン屋さんには、ハロウィン? バレンタイン? かと疑いたくなる派手な商品が並びます。もちろん「スヌン祈願」…。
韓国では受験生に「ヨッ」と呼ばれる「べたべた歯にくっつくキャンディ」をあげるのが一般的。
※ 韓国語では、「試験に合格する」を「試験にくっつく」と表現するためです。
また 昨今は、文房具とセットになっている「お餅やキャンディを入れたアイテム」が、高額で販売されています。
縁起を担いだ「わかめスープは滑るから食べない」などの風習も。
新型コロナ陽性者は、病院で隔離されながら受験
スヌン受験生のコロナ陽性者に関しては、2週間前から病院や自宅で隔離されていました。
どうやら今年は144名の学生が、個人病室で受験をすることになるようです。
当日 コロナ陽性が確定した受験生は、受験場に別室を用意して「陽性者クラス」を作る予定だとか。
今年 韓国では、54万人のスヌン受験生がいると言われています。
(昨年比4万6千名マイナス、現役の高校3年生が73%、浪人生が26%、その他2%)
2020年 春からのコロナ騒動で、学校の授業はほぼオンライン化。陽性患者が増えるたびに、塾、スタディカフェ、図書館の利用が、続々と禁止されて来ました。
コロナ蔓延で心身ともにストレスを感じてきた受験生達へ、心から健闘を祈りたいと思います。