日本人だけが知らない未来のオリンピック論争!?存続危機の五輪を救う「オリンピック アイランド計画」とは!?
2017年9月、国際オリンピック委員会(以下IOC)は「2024年パリ五輪」と「2028年ロサンゼルス五輪」のオリンピック開催を同時決定した。
2大会同時決定の背景は、2028年以降のオリンピック開催が危ぶまれているためだという。
招致に手を挙げる都市が激減しているのだ。
・・・一体どういうことか?
五輪シリーズの今回は、日本で未だほとんど紹介されていない「未来の新しいオリンピック」についてレポートする。
- 目次 -
- オリンピック開催国が悩む巨額の「赤字」
- オリンピック開催費用の最高額は4兆円!?
- 税金が1セントも使われないオリンピック
- 承継されないインフラ資産「開催ノウハウ」
- オリンピック 開催の新しい方法とは?
- ギリシャの孤島をオリンピックアイランドへ
- 世界分散開催計画
- 平和の祭典よ永遠なれ
オリンピック開催国が悩む巨額の「赤字」
※ オリンピック開催国決定の瞬間
五輪が開催されることで、招致都市の名は世界に轟く。
その一方で、輝かしい業績とは裏腹に 各開催都市は巨額の赤字を抱えてきた。
莫大な開催費用が、オリンピック存続を深刻な危機に直面させている。
財務マネジメントだけが原因とは言えないが、開催後に廃墟となったオリンピック施設は多い。(※ オリンピック選手村その後 を参照)
2016年リオ五輪関連施設の荒れ方は 目を覆うばかりだ。
このままだと、ロシア、中国、カザフスタンなどの独裁的国家による「国威発揚型開催」でもなければ、オリンピック招致レースの参加都市がなくなるという懸念がある。
オリンピック開催費用の最高額は4兆円!?
オリンピックの歴史は人類に夢と感動を与えてきた。その精神も素晴らしい。
では、その開催費用はいくらだったのか?
- 2012年ロンドン五輪費用
- 1兆2000億円 - 2020年東京五輪費用
- 3兆円(当初予定は7000億円) - 1992年バルセロナ五輪費用
- 約4兆円
この巨額コストの深刻さが決定的となったのが、1976年モントリオール五輪だ。
当時の「赤字額10億ドル」は現在の貨幣価値で約1兆円と言われる。 そのうち2億ドルは、モントリオール市民が2006年までの30年をかけて返済した。
直前にあった1974年ミュンヘン五輪テロ事件の影響により、警備費が大幅に上昇した不運もある。
しかしもっと根本的な問題は、官僚主導による開催であったため コスト意識がなかったことだ。
この大会後、オリンピック招致に名乗り出る都市が、ロサンゼルス1つを除いて無くなってしまった…。
税金が1セントも使われないオリンピック
1932年に続いて二度目の開催となったロサンゼルス大会は「商業オリンピック」と呼ばれている。
自ら創業した大手旅行代理店の社長だったピーター・ユベロス氏が 大会組織委員長となった。
ユベロス氏はオリンピック開催に集中するため、自社を売却・辞職した上で就任。
彼が主導したことで、「規格外のTV放映権料」と「1業種1社限定のスポンサー協賛金」が 黒字化に大きな役割を果たしたことは有名だ。
しかし最も重要な戦略は「既存施設を徹底的に活用した」ことにある。
幸いにも大都市ロサンゼルス近郊には、オリンピック開催基準に耐えうる既存のスポーツ関連施設がいくつもあった。
この既存施設の活用こそが、オリンピック黒字化成功を導いた要因なのだ。
最終的にロサンゼルス五輪は「1セントの税金も使われないオリンピック」として大成功を収めた。
承継されないインフラ資産「開催ノウハウ」
空港、高速鉄道、道路、スタジアム、宿泊施設、etc…。
五輪開催にはこうしたハード面だけではなく、ソフト面のインフラも投資されている。
緻密な物流システム、警備システム、ボランティア運営力、競技マネジメント、情報発信力、など、「おもてなし」に代表される 国民のホスピタリティも重要なソフト資源だ。
こうしたノウハウは とてつもない資産なのだ。五輪開催都市では何年も前から 官民一体で準備を進めている。
ところが閉会後、都市はそのノウハウを最大限に用いる機会を突如失う。時にはオリンピック施設建設のため、地元住民を追い出してまで準備してきたのに、だ。
この100年間に渡り、人類は4年に一度 このような愚行を繰り返してきた。
オリンピック開催の新しい方法とは?
2028年以降も、オリンピック開催能力を伴った都市が現れ続けるのか?
IOCは岐路に立たされている。そこで新たな提案がいくつかなされている。
以下に代表的な2つの案を紹介する。
- オリンピックアイランド計画
- 世界分散同時開催計画
ギリシャの孤島をオリンピックアイランドへ
ギリシャ孤島 メリーランド大学のジョン・レニー・ショート教授は、IOCに「ギリシャの孤島の買収」を提案している。
一つの島を、まるごと恒久的なオリンピック施設にしようというのだ。
それにより、新たなスタジアム建設の必要がなくなる。大会スタッフが築いたノウハウは、未来永劫 円滑に承継されて行く。
ギリシャが孤島を売却することで、経済危機を和らげることもできる。
なにより、古代オリンピックはギリシャが起源だ。
世界分散同時開催計画
ダートマス大学のポール・クリステセン教授は「世界分散同時 五輪開催」を主張している。
各国の開催都市が「自国で人気のスポーツ」に入札し、落札することで開催権を得るなどの手法だ。
自国で人気のスポーツならば、既存施設は十分。観客動員も問題ない。
例えば
開会式はオリンピア、テニスはロンドン、トライアスロンはハワイ、サーフィンはゴールドコースト、ハンドボールはカタール、陸上はナイロビ、卓球は北京、柔道は東京、空手は沖縄
・・・なんていうのはどうだろうか。
「新種目セパタクローでマレーシアが五輪開催国に立候補」という道も拓けてくる。
ホッケーはインド・パキスタンで共催することを通じて、両国の和平に貢献できるかもしれない。
平和の祭典よ永遠なれ
テニスといえば ウィンブルドンが有名だ。
他にも、ゴルフといえば オーガスタ。 F1といえば モナコ。 競馬といえば パリ凱旋門。 相撲といえば 国技館。
毎回同じ場所で開催するスポーツイベントは数多くある。
既存施設と確立されたノウハウ。ヒントは十分あるのではないだろうか?
オリンピックの感動はすごい。東京オリンピック招致に反対した方々ですら、そう思ったことがあるはずだ。
日本人の記憶に新しいところでは、2018年平昌大会。スピードスケートの小平奈緒選手と李相花選手の名場面がある。
スポーツが平和に貢献することのできる最高のパッケージがオリンピックなのだ。
老若男女。もっと言えば 独裁者・共産主義者・今は牢屋にいる囚人たちですら、心の奥底にある美しい感性を刺激されるはずだ。
そんなパワーを持つものが 他にいくつあるのか?
4年に一度の「平和の祭典」は人類の恒久的遺産と言える。 今こそ人類が知恵を寄せ合う時ではないだろうか。