ジカ熱の症状・感染経路・妊婦への影響・予防法について
ジカ熱(ジカウイルス感染症)の症状・感染経路・予防法・妊婦への影響などについて、ご紹介します。
ジカ熱とはジカウイルス(Zika virus)によって引き起こされる感染症です。
そして2016年2月1日、ジカ熱はWHO(世界保健機構)よりPHEICを宣言されました。
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PHEICとは「Public Health Emergency of International Concern(国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)」の略語であり、世界的な伝染病の発生時などに通告される「非常事態宣言」のことです。
ジカ熱を含め、PHEICは過去に4回しか宣言されていません。(2009年のインフルエンザ、2014年のポリオ、2014年のエボラ出血熱、2016年のジカ熱)
2016年3月現在、南米地域ではジカ熱の感染者が急増中。そして日本や韓国においても、感染者が確認され始めています。。。
ジカ熱の症状について
ジカ熱の主な症状は、発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、腹痛、嘔吐、目の充血、斑点状丘疹(=皮膚の赤いブツブツ)など。
この症状が 4〜7日ほど続きますが、同じく蚊を媒体とするテング熱に比べ、症状は比較的軽めです。
なお今のところ、有効な薬・ワクチンなどは見つかっていません。(専門家の話では、ワクチンの開発には数年を要するとのこと。)
ジカ熱の人への流行は、2007年ミクロネシア連邦-ヤップ島が最初だと言われています。
そして、2015年12月にアメリカ大陸で発生したジカ熱の流行は、2016年2月にWHOが非常事態宣言をするに至ってしまいました。。。
ジカ熱の感染経路
ジカ熱への感染経路は、以下の4つが考えられています。
- 蚊(ヤブカ)
- 母子感染
- 性行為
- 血液感染(輸血・血液製剤 など)
このうち、最も大きな感染経路だと言われているのが「蚊」です。
(ジカ熱患者を吸血した蚊が 他者を吸血し、ジカウイルスが拡散)
2016年のジカ熱では、ブラジルを中心とする中南米地域において、特に流行が深刻化しています。
北半球において 12月〜3月は冬〜初春であり、蚊とはほぼ無縁。
しかし南半球では夏真っ盛りであるため、蚊による感染拡大が発生しやすい季節なんです。
8月(オリンピック開催期間)のブラジルでも蚊は活動する
ブラジル-リオデジャネイロでは、2016年8月に夏季オリンピックが開催される予定となっています。
南半球に位置するブラジルは、8月が冬。そのため12月〜3月に比べると、オリンピック開催期間中は 多少なりとも蚊の活動は収まりをみせることでしょう。
しかし リオデジャネイロは赤道からさほど離れておらず、冬であっても18〜26℃の温かい気候となります。
そのため、「蚊の活動ピークではないものの、ある程度の蚊はリオ五輪中でも活動している」と考えるべきです。
オリンピック開催に合わせて 世界中から(もちろん日本からも)大勢の人々がリオデジャネイロに渡航し、現地で蚊にさされ、帰国時にジカウイルスを持ち帰る ・・・という悪魔のシナリオは、何としても防がなければなりません。
性行為によるジカ熱の感染
ジカ熱は、蚊, 母子感染(=妊婦 → 胎児への感染), 輸血など、基本的には血液を通して感染する病気です。
しかし、ジカ熱患者(男性)の精子中にジカウイルスが存在し、セックスによってジカ熱が感染したという事例が報告されています。
なお、患者男性 → 女性 への感染は報告されていますが、患者女性 → 男性 への セックスによるジカ熱感染は、未だ不明とのことです。
ジカ熱の何が危険なのか?
上でご紹介した通り、同じく蚊を媒体とするテング熱に比べると、ジカ熱の症状は比較的軽いのが特徴です。
他に持病を抱えていない成人が ジカ熱によって死亡することは、非常に稀。
さらに、ジカウイルスに感染しても症状が出ない人の割合は、60〜80%だと言われています。
・・・これだけを聞くと、WHOがジカ熱に対して非常事態宣言をする理由に、疑問が湧いてきますよね??
現段階において、ジカ熱の危険性は大きく2つ指摘されているんです。
ジカ熱は、胎児に小頭症・先天性障害を引き起こす
妊婦がジカ熱に感染すると、胎児の小頭症・胎児水腫や先天性障害(奇形 など)の割合が高まることが報告されています。
※ 小頭症とは、脳の発達が正常に行われず、脳サイズが平均と比べて著しく小さくなる症状のことです。知的障害・運動障害を伴い、現代医学での治療は困難だとされています。
※ 胎児水腫とは、胎児の体内に水が溜まり、胎児の内臓を圧迫してしまう症状のことです。死産 または 生後まもなく亡くなってしまうケースが多いとされています。
ブラジル保健省には、既に5,000件以上ものジカ熱による小頭症の事例が報告されています。
またフランスの研究所は、妊娠初期(〜3ヶ月)の妊婦がジカ熱に感染した場合、小頭症のリスクが50倍に高まると警告しています。
妊婦 もしくは 妊娠を考えている女性が身近にいる人の場合、ジカ熱が流行している地域への渡航は避けるべきでしょう。
また、子供が欲しいと考えている人で ジカ熱流行地域へ渡航せざるを得ない場合は、帰国後の2ヶ月間程度は 子作りを避けた方が無難です。(詳細は後述)
ギラン・バレー症候群を引き起こす
ジカ熱はギラン・バレー症候群との関連性が指摘されています。
※ ギラン・バレー症候群とは神経疾患の一種で、全身の麻痺(特に手足)による運動障害が特徴です。重症化した場合は 呼吸不全なども発症します。
未だ医学的に因果関係が立証されたわけではありませんが、多くの研究者たちが ジカ熱とギラン・バレー症候群との間に、何らかの関連性があると考えています。
ジカ熱の予防法
ジカ熱の予防法は、「感染拡大を防ぐ環境作り」「個人での予防」の2つに大別することができます。
そのどちらにおいても、最大の感染源とされる「蚊」への対処が重要となってきます。
ジカ熱の感染拡大を防ぐ環境作り
- 建物周辺にある水気の多い場所を除去。(ex 水たまり、小川など)
- 周辺に水気の多い場所がある建物の利用を避ける。
- 浄化槽を修理し、清潔に保つ。
- 網戸・蚊帳を完備する。
- 屋内へ蚊が侵入しそうな場所には、防虫剤を設置。
- 蚊取り線香をつける
ジカ熱に対する個人での防御
- ジカ熱流行地域への渡航を避ける。
- 防虫剤(虫よけスプレーなど)を使用する。
(日焼け止めの類は、防虫剤の下に塗るようにする。) - 全身を清潔にする。
(蚊は人の体臭に惹かれる習性がある。) - 肌の露出が少ない衣類(長袖・長ズボン)を着用する。
- 白や黄色など、明るい色の衣類を着用する。
(蚊は暗い色に惹かれる習性がある。)
また、何らかの事情によりジカ熱流行地域へ渡航せざるを得ない場合、帰国後は以下の点に注意してください。
ジカ熱流行地域から帰国後の注意点
- 帰国後2週間以内にジカ熱の症状(ex 発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、腹痛、嘔吐、目の充血、斑点状丘疹 など)が現れた場合、すみやかに専門の医療機関を受診する。
- 献血は1ヶ月間避ける。
- 男性の場合:コンドームを使用しない性行為は2ヶ月間避ける。
- 女性の場合:妊娠を望んでいても、2ヶ月間は避妊する。
ジカ熱に対する正しい理解を!
最後となりますが、「ジカ熱患者を差別しないでください」という内容をお伝えしておきます。
人は得体の知れない病気に恐怖(嫌悪感)を抱き、その患者を迫害してしまう習性を持っています。
これは、エイズ患者やハンセン病患者への差別など、過去の歴史を鑑みても明らかです。
病気による事実無根の差別・偏見を無くす為には、正しい知識を得ることが必要不可欠。
例えばジカ熱の場合、蚊に気をつけてさえいれば、患者と日常生活を共にしても、感染する可能性はほぼゼロです。(ジカ熱は空気感染しません。)
もし仮にジカ熱に感染したとしても、上でご紹介した通り ジカ熱で重篤な症状が出ることは稀です。
また、神経疾患であるギラン・バレー症候群との関連性が疑われているジカ熱ですが、統計データ上は確かに関連性が見受けられるものの、ジカ熱患者全体からすると、ギラン・バレー症候群の発症件数は極めて僅かとなっています。
ジカ熱に対してWHOが非常事態を宣言したのは、母子感染により小頭症・先天性障害の子供が大勢産まれてしまったからなんです。
しかし これすらも、「正しい知識で 政府・個人が早急に対処していれば、大多数の事故は防げていた」と筆者は考えます。
今後もし日本でジカ熱患者が急増しても、パニックにならず、冷静で知性溢れる対応を心掛けたいものですね♪
本記事が、何らかのお役に立てましたら幸いです^^