アクティブラーニングのデメリット(問題点)と教育現場の課題
2020年 大学入試改革に伴うアクティブラーニング導入の問題点(デメリット)と教育現場の課題について、考察していきます。
皆さんは普段、このような会話を耳にしたことはありませんか?
「昨日のあのニュース見た?」
「そうそう、あれね。サイテーだよね。」
「わかるわかる…。」
これは、いわゆる同調圧力(私もそうなんだからアナタもそうだよね、という無言の圧力)がかかっている状態。
「大多数が同じ意見」という状況下におかれた場合、別の意見は言い出しにくくなるものです。
もし、アナタの子供が通っている学校現場が、このような「同調圧力」によって動いているとしたら、・・・大切な我が子を安心して任せられるでしょうか。
本稿では、今後の教育改革に対して、一人ひとりが賢く向き合っていくヒントを提供したいと思います。
2020年に施行される教育改革には、プラス面だけではなくマイナス面もあり得るということを、覚えておくことが大切です。
大学入試改革の目的
2020年より執行される大学入試改革。従来のセンター試験が2019年度(2020年1月実施)を持って廃止され、新しく「大学入試共通テスト」が導入されることになりました。
現在日本では、この大学入試改革と共に 新しい教育制度が整備され、実行を待つ段階に入っています。
国が大幅な教育改革を進める目的は、子供たちに「学力の3要素」を身に付けさせるため。
「学力の3要素」とは、2007年に学校教育法が改正された際、「今後 子供たちに身に付けさせるべき力」として国が定義したものです。
(※ 2007年は小学生が対象でしたが、2014年には高・大学向けに新たに定義され、最終改定は2016年となっています。)
従来の「知識・技能」教育を基礎とした「思考力・判断力・表現力」に加え、「主体性・多様性・協働性」を養う必要があるという考え方です。
21世紀型教育
「学力の3要素」を身に着けさせる教育手法として
- アクティブラーニング
- グローバル教育
- ICT教育
- キャリア教育
の必要性が頻繁に叫ばれており、これらの教育手法を総称して「21世紀型教育」と呼んだりもします。
国が教育現場に「学力の3要素」を求める目的は、日本社会のグローバル化やAI化によって、従来の職場環境や職業自体が 目まぐるしく変化することが予測されるため。
変化の激しい時代に対応できる人材の育成。すなわち「一人ひとりが課題を発見し解決する力」「自分とは異なる文化・言語の人々とも協働していく力」が求められています。
・・・文部科学省から発表されたこれらの内容は、理論上は許容できる内容です。
しかし、「ゆとり教育」に代表される これまでの "教育改革" と銘打った政策は、決して功を奏していません。
そうした実態を鑑みるに、今回の教育改革がもたらす影響に関しても、楽観視はできないでしょう。
アクティブラーニングの問題点(デメリット)
近年 何かと話題の「アクティブラーニング」を例に挙げながら、教育改革の課題について考えてみます。
従来の教授法(教え方)は、教師が生徒に対して一方的に「知識・技能」を伝えていました。
アクティブラーニングとは、「知識・技能」を教授された生徒が ディスカッションや調査、プレゼンテーションなどの主体的・能動的な学習行動によって、「知識・技能」をより深めていく教育手法です。
「ゆとり教育」によって設置された「総合的な学習の時間」も、これに該当します。
昨今では アクティブラーニングを取り入れる教育現場も多くなりました。大学においても「知識・技能」を一方的に学ぶよりは、むしろアクティブラーニングの方が良い と発言する学生も増えてきているほどです。
これだけを聞くと、日本の教育現場は知識偏重型から脱却して、良い方向に変化していると感じられるかもしれません。
しかし、ここには一つの落とし穴が・・・。
アクティブラーニングばかりがもてはやされた結果、アクティブラーニングで行われるディスカッションの中身が「大変薄い・理解が深まらない」などの問題が生じています。
教育現場の課題
本来アクティブラーニングは、学んだ「知識・技能」の理解を深め 主体的に使えるようにするためのもの。
しかし、ある程度「知識・技能」の土台がないと、形だけで中身の無いアクティブラーニングが横行することになるのです。
大学で学生が受ける授業時間には限りがあり、この限られた時間をどのように配分するのかが大きな課題。
アクティブラーニングは有効な教授法ですが、授業でアクティブラーニングを取り入れることで、そのぶん「知識」を教える時間が減るのです。
これは、実際に授業運営した人であれば 痛感されることでしょう。
アクティブラーニングばかりをやっていると、指導要領の内容に沿って「知識・技能」を教授する時間が足りなくなるわけです。
アクティブラーニングを有効活用するためには、「知識・技能」を身に着ける時間をどう確保するのか ・・・が課題となります。
さらに もう一点付け加えると、
「アクティブラーニング」という教授法に関して、現場の教員がどれだけその教授法に対して訓練(研修)を受けているのか、馴れているのか、といった「教員自身の課題」も無視できません。
同調圧力に押された上辺の改革
大学全入時代を迎え、学生募集に力を入れなければ生き残れない大学は、こうした「教育トレンド」に対して敏感にならざるを得ません。
そのため、「知識」を重点的に教授すべき法学などの分野においても、「カリキュラムには必ずアクティブラーニングを導入すべき」という 同調圧力がかかっている現状。
国から補助金を受けて大学運営を行っている限り、右にならえの文化で トレンドには抗えない空気があるのです。(現場の状況はさておき…)
本来ならば、教育の成果によって入学対象者を惹きつけ、学生を募集できることが最善。
しかし、その成果を出すためのプロセスが困難であることから、・・・周囲からの評判を良くするために ひとまずトレンドを取り入れ、入学対象者の関心を惹かざるを得ないのです。
日本は欧米とは異なり、急激なリストラ政策を取らない傾向にあります。
今後は私立大学の法人統合や、公立大学に鞍替えするといった、大学の延命策が取られることが予想されます。
今後も、こういった「教育トレンドの犠牲」は残り続けることでしょう。
また、改革トレンドの波に乗っていくことができる基礎力のある学校と、そうでない学校に分かれていくことも予想されます。
そうなると、各大学間において 今まで以上に 学生の資質や教育の質に格差が生じ、就職実績や収入の格差へとつながる可能性を否定できません。
教育改革のトレンドに流されない視点
アクティブラーニングを例に挙げながら、今後の教育改革が与える影響を考えてみました。
現在進行形の教育改革に関する話題は、アクティブラーニングに限らずとも 巷に溢れています。
その話題1つ1つを整理し、メリット・デメリットや社会に及ぼす影響を理解していくことで、日本の教育現場における諸問題の本質に迫ることができます。
それらを正しく見極めることができれば、今後起こりうるであろう格差問題についても、知恵を持って賢く対処することが可能です。
日本の教育力・国際競争力低下の解決策を提示できるとみています。
この記事のまとめ
アクティブラーニングのデメリット(問題点)と教育現場の課題- 大学入試改革で求められる学力
- アクティブラーニングの問題点と教育現場の課題
- 大学入試改革を始めとする教育改革が、上辺だけの改革になる可能性
- 教育改革のトレンドに流されない視点
今後もこういった教育改革に関わる話題を通して、皆さん一人ひとりが日本の教育現場と賢く付き合っていけるヒントを提供していきます。