人生の荒波の中で、夫婦を固く結びつけるもの―。それは“愛情”である前に“信頼”でしょう。
“信頼”に裏打ちされた愛だけが、夫婦の間に“安定”や“安心”をもたらすのです。
信頼とは言わば、“夫婦”にあって“恋人”にはないもの。
もし、互いの気持ちを常に確かめないと不安になる―という状態であるなら、たとえ二人が強く惹かれ合っていようとも、それはまだ“恋”(=未成熟な愛)の段階に過ぎません。
そこから、互いに対する“関心”を育くみ、“理解”を深め、さらに“信頼”を築きながら、本物の“愛”が培われていくのです。
さて、今回は愛に至る第三のステップとして、この“信頼”をテーマに話を進めてみたいと思います。
今日のコンテンツ
★夫婦が“家族”になるとき
★トラブルの原因は信頼不足!?
★信頼残高―信頼を深める方法
★困難な時ほど信頼が大切
★二人で人生を共有する
信頼が“家族”になるとき
夫婦は本来“赤の他人”。 これがいつから“家族”になるのでしょうか?
子どもが生まれた時でしょうか?
同居を始めた時でしょうか?
籍を入れた時でしょうか?
精神面から言うなら、それは恐らく“信頼”が生まれた時でしょう。
人は皆、何かしら“仮面”をかぶり、心に幾重もの“バリア”を張り巡らせながら、人と交わり、コミュニケーションを結んでいるに違いありません。
恋愛中は勿論のこと、新婚初期の夫婦においても、何かしら自分をさらけ出すことに不安を抱えているに違いありません。
しかし、それが“関心や理解のステップ”を通して、「自分の素の姿をさらしてもいいんだ」「ありのままの自分でいいんだ」と感じ始めた時、二人の間にあった、見えないバリアが一つずつ取り除かれていくのです。
それにより、心の距離は近づき、互いが家族(兄弟姉妹)のように思えてくることでしょう。
“信頼”というパイプによって結ばれると、人は互いに、家族や親友と共にいるような安堵感や安心感、親密感や親近感を覚えるようになるのです。
トラブルの原因は信頼不足!?
650組の夫婦を対象に14年間、“結婚の成功と失敗”について研究してきたジョン・ゴッドマン博士は、「幸福な結婚生活は、夫婦の“深い友情”から成り立つ」と結論づけています。
仲睦まじい夫婦でも、大きな価値観の違いを抱えていたり、口論や衝突も頻繁にある―。違いはひとえに、夫婦の間に“友情”があるか否かだ―という話です。
博士はこの“友情”という言葉を“ポジティブな感情”と説明し、それは互いへの理解や尊重、共感や信頼によって築かれる、としています。
実際、皆さんが職場で注意や勧告を受けたとしましょう。
それが信頼している相手であったなら即、「あ、自分に課題があったんだな」「自分のことを思って注意してくれたに違いない」と思うことでしょう。
ところが、これが信頼していない相手となると、同じ注意・勧告でも、「はぁ?」「何言ってんの?」「ケチつけたい訳?」「どうせ嫌がらせでしょ」…などと思ってしまうのではないでしょうか?(汗)
夫婦間のすれ違いや離婚の危機も、“信頼”が破綻した時に起こるのです!!
逆に、二人が“固い信頼”で結ばれていたなら、トラブルが生じたとしても、また“ポジティブな感情”を取り戻せるでしょう。
信頼残高―信頼を深める方法
夫婦間の信頼は、“関心”と“理解”を土台として築かれます。特に、人は「自分が理解され、受け入れられた」と感じた時に、“信頼”を抱くことでしょう。
『7つの習慣』では、信頼を“貯金”に例えて説明しています。
すなわち、相手に理解を示さず、相手が「受け止めてもらえなかった~!!」と感じた時、あなたの“信頼貯金”は減少し、逆に、相手に理解を示し、相手が「受け止められた~!!」と感じた時、あなたの“信頼貯金”は増えるというもの。
夫婦間のポジティブ・ネガティブ感情は、この“信頼残高”に左右される訳です。
さて、下記は信頼残高を増やす方法(=信頼預金)です。
その1.相手を思いやる
“愛”とは、「相手を満たそう」とする思いや行動をいいます。相手の意向や立場を尊重し、理解し、配慮する、そんな思いや行動が二人の信頼を深めるのです。
特に男性は、自分が立てられ、頼りにされていると思えた時に自己重要感や安心感を覚え、女性はまた、自分が愛され、大切にされていると思えた時に自己重要感や安心感を覚えるでしょう。
「ああ、やっぱりこの人しかいない」と思うのです。
その2.感謝する
夫婦間に信頼が生まれると、互いの存在が“ごく自然”に感じられるようになる一方で、互いの思いやりや好意まで“当たり前”に思えてしまうでしょう。
夫が毎日働き、家族を養ってくれていることも、妻が(専業主婦なら)毎日家事をこなし、食事を作り続けてくれていることも…。
そうした“当たり前のこと”にこそ感謝を示す―、それが夫婦の信頼を深める方法です。
その3.約束を守る
どんなに小さなことであっても、夫婦で交わした約束は守ること。また、守る努力をすること。逆に言うなら、最も信頼を損なう行為が“約束を破ること”なのです。
やると言ってやらない、調子のいいことを言うけれど、その通りに行動しない―となっては、相手に信頼を求められなくなるでしょう。
“信頼”(Trust)は“信用”(Credit)と違って、“過去”の客観的実績がなくとも、“未来”の相手を信じようとする主体的姿勢をいいます。しかし、とことん“信用”を損ねておいて、「信頼してくれ~」というのは困難でしょう!!(汗)
その4.謝る & 許す
人は失敗を犯すこともあります。また、約束が守れない時もあるでしょう。
その時は、心から反省して謝ること。これを怠ると、信頼残高が一気に落ち込みます。
と同時に、一度、約束を破ると、その後の約束の言葉が重みをなくすように、一度、謝って許してもらった過ちを “また繰り返した”場合、その後は“謝罪”すら信頼されなくなり得ます。
失敗は二度と繰り返さないこと(!!)
一方で、“許すこと”は相手を今一度“信頼してあげよう”とする主体的行為です。その信頼は相手に力を与えることでしょう。
人は自分を本気で信じてもらえた時、心からその信頼に応えたいと思うからです。
困難な時ほど信頼が大切
信頼や安心感が生まれると、同時に遠慮もなくなり、油断も生じて、互いの短所や欠点をもさらけ出すようになるでしょう。
しかし、そんな時こそ、信じて受け止めてあげること―。それがまた“深い信頼”につながるのです。
彼があなたに気を使わなくなったのは、あなたを愛さなくなったからではありません。信頼や安心感が生まれたからです。
彼女が感情的な表現をしたり、今までにない要求をし出したのも、あなたを尊敬できなくなったからではありません。信頼しているからなのです!
男性の皆さん。女性のヒステリックや感情の起伏に右往左往する必要はありません。それは“天候”のようなものだからです。雨が降ったら傘を挿し、雪が降ったらフードを被り、台風が来たら収まるのを待ちましょう。(笑)
天候に一喜一憂しても仕方ありません。そのうち、カラっと晴れるのです。雨の日も、風の日も、変わらずに相手を信じ、受け止めてあげる―。そこに女性は“信頼”を抱くのです。
女性の皆さん。男性は“子ども”みたいなものです。褒められたら有頂天になり、叱られたら自信を無くして殻に閉じこもる―。
調子のいい時は「世界を変える!」とか何とか豪語しておきながら、調子が悪くなると、「世界は僕を必要としていない」と言い出し、家の役にも立たなくなります。(汗)
しかし、それでも変わらずに彼を信じ、励ましてあげましょう。その時、彼はあなたを心の底から“信頼”するようになるのです。
それぞれがうまくいかない時、調子が悪い時にこそ、変わらない信頼を注いであげてください。
また、二人が共に人生の逆境に陥った時こそ、互いの信頼が困難を克服する力になるのです!!
二人で人生を共有する
出会った当初、夫婦はそれぞれが“異なったマップ”をもち、別々に世界を見つめていたに違いありません。
しかし、人生の紆余曲折を共に越えていく中で、二人の間には“共有できるもの”が増え、“同じマップ”を二人で覗きこむことが多くなるでしょう。
信頼とそれに根付いた愛情が、二人の人生を一つに結びつけるのです。
私たち夫婦なんかも真逆のカップルで、出会った当初は何一つと言っていいほど、共有できるものがありませんでした。趣味も、好みも、価値観も、人生経験も…。
しかし、今では、彼女のいなかった人生が思い出せません。一つ一つの共通の思い出が、二人の人生を一つに結ぶのです。皆さんも同じでしょう。
二人で過ごした時間の一秒一秒、共にした体験の一つ一つが、本当の夫婦、“家族”になるまでの二人の軌跡を綴るのです。二人だけしか知らない、夫婦だけが共有できる世界が豊かに広がっていくことでしょう。
ドイツの詩人ゲーテは言いました。「人生で一番楽しい瞬間は、誰にも分からない二人だけの言葉で、誰にも分からない二人だけの秘密や楽しみを、共に語り合っている時である」
まとめ
- 夫婦間の友愛や信頼が二人を“家族”に結び、安定した関係を育む。夫婦間の問題は逆に、信頼の不足や破綻から起こる。
- 夫婦の“信頼残高”を挙げるためには、思いやること、感謝すること、約束を守ること、謝ること・許すこと等が大切である。
- 信頼が生まれる共に、短所や欠点をさらすことも多くなるが、困難な時こそ、互いを受け止め合うことで信頼が深まる。
- 夫婦間の成熟した愛情を育む土台は信頼であり、それが二人の人生を一つに結び、互いに共有できる世界が広がる。