夫婦のすれ違いはなぜ生じるのか―。
共働き夫婦であれば、スケジュールが合わなくて二人の時間がとれていない等、“スケジュール調整”から求められる場合もあるでしょう。
しかし、根本的な問題は恐らく、“コミュニケーションの取り方”にあるのです。
夫婦の相談に応じてみると、多くの場合、コミュニケーションが噛み合っていないことに気づかされます。互いの愛情が“うまく伝わっていない”のです。
キャッチボールで言うなら、双方が“相手のミットを見ずに投げ込んでいる”ようなもの。そのため、「自分は相手のためにこんなにやってるのに~!!」と双方が思っているのです。
そこで今回は、“夫婦のすれ違い”に焦点を当て、“互いのミットを見る”(=互いのニードを知る)というテーマで、夫婦円満の秘訣を紹介してみたいと思います。
今日のコンテンツ
★夫婦のすれ違いーその原因とは
★夫婦で求めるものが違う?
★愛の言語―5つの愛情表現
★タイミングが合わない!!
★大切なことは思いやり
★賢者の贈り物
夫婦のすれ違い―その原因とは
以前、ある男性にこう尋ねられました。「自分がして欲しいことを相手にしてあげる、って、間違ってませんか?」
彼曰く、奥さんが落ち込んでいた時、自分だったら「一人にしてほしい」と思うはずだと考え、奥さんを一人にしておいてあげたのだとか。(汗)
結果、奥さんからは非難轟轟(ごうごう)だったそうです。
「あなたがして欲しいと思うことを相手にもしなさい」というのは、バイブルにも記されている黄金律。
大方の場合、人間関係はこれでうまく回るのでしょう。
ところが―。“夫婦”となると、話は変わります。
夫婦間にすれ違いが生じるのは、実は“相手も自分と同じように思うはず”という勘違いに起因する場合が多いからです!!
二人は、育った環境も人生経験も異なります。何より、男女の特性に違いがあるのです。
そのため、夫婦関係における黄金律とは、恐らく、「あなたがして欲しいことを相手にもしなさい」ではなく、「相手のして欲しいことを相手にしなさい」なのです!!
これが即ち、“相手のミットを見る”ということに他なりません。
夫婦で求めるものが違う!?
例えば、男性は「あなた、お願いね」と、ちゃんとお願いされ、感謝の一つでもされれば、喜んでサービスに応じるでしょう。
男性が欲しているものは、感謝と称賛、尊敬だからです。
恐らく、「それぐらい言わなくても察してよぉ~」と思うから、すれ違いが起こるのでしょう。(汗)
一方で、女性が欲しているのは、愛情と関心、そして共感です。
たとえ妻が感情的に物を言ってきたとしても、気持ちを受け止め、共感を示し、慰労してあげれば、すぐに冷静さを取り戻すでしょう。
恐らく夫が「もっと冷静になれよぉ~」と急き立てるから、感情的になる訳です。(汗)
男女の感じ方の違いは「言葉」や「行動」となる時、さらに大きなすれ違いを生むでしょう。
まずは女性の言葉、遠回し・逆説的な物言い―。これは、殆どの男性にとって解読不能…と言われています。
時として、女性の「大丈夫」は、全然、大丈夫でなかったり、「いいから気にしないで!」は「大いに気にして!!」、「やらなくていいわよ」は「当然やってくれるわよね!?」だったりします!! (汗)
言葉だけでない、語調や表情から醸し出される、ちょっとした“サイン”に気付く必要があるのでしょう。
また、同じ行動でも、例えば、“男性の沈黙”と“女性の沈黙”とは違います。
女性の沈黙は、“コミュニケーションの断絶”であり、即対応が求められますが、男性の沈黙は単なる“考え中”の表示。
パソコンで言えば、“ただ今、処理中”という状態ですので、「何これ、動かないわ!」と、キーボードをむやみに叩かず、温かく見守ってやってください(汗)。時々、“フリーズ”もしますが、勝手に“再起動”しますので。
尚、女性はストレスが溜まるとしゃべりまくり、男性はストレスが溜まると一人の世界に閉じこもる―というのも、よく挙げられる違いの一つ。
女性には理解し難いかもしれませんが、ひたすらゲームをやり続けたり、ボーっとテレビを見続たり。あれが男性のストレス解消法なのです。
「ボーっと生きてんじゃねぇよ~」と責め立てないでやってください。(汗)
互いが求めるものは違うのです!
愛の言語、5つの愛情表現
“愛情表現の違い”が夫婦のすれ違いを生む場合もあるでしょう。
例えば、妻は具体的な“行動”を欲しているのに、夫は「愛しているよ」を連呼するだけで何もしてくれないとか、逆に、女性は優しい“言葉”が欲しいだけなのに、男性は一生懸命、皿を洗い、掃除機をかけ、さんざん外に連れ回した挙句、妻から逆に「疲れた」と言われる…等々、要求のすれ違いが起こってくる訳です。
『愛を伝える5つの方法』の著者、ゲーリー・チャップマン氏は、夫婦間の愛情表現を“愛の言語”と記しながら、心に響く愛の言語は人それぞれ異なる、と説明しています
例えば、下記のうち、あなたの心に響く言語はどれでしょうか?
1)肯定的な言葉(Words of Affirmation)
愛情や感謝を言葉で示すこと。相手を尊重する言葉をかける。
2)クオリティ・タイム(Quality Time)
相手のために時間を作り、共に過ごすこと。相手にだけ関心を注ぐ。
3)贈り物(Receiving Gifts)
相手への気持ちを贈り物で表すこと。値段よりも気持ちが大切。
4)サービス行為(Acts of Service)
心を込めた料理、家の掃除や修理など、愛情を行動で表すこと。
5)スキンシップ(Physical Touch)
手をつなぐ、抱き合う、寄り添って座る等の身体接触や性的触れ合い。
大切なことは、あなたが何を求めているかではなく、相手が何を望んでいるか(=相手のミットを見ること)なのです!!
タイミングが合わない!!
その他、“タイミングのズレ”が生じることもよくあるでしょう。
夫の帰りを待ち続け、「どうして電話一本よこさないのよ~!」と思っている時、夫は本当に“それどころではないトラブル”に巻き込まれ、打ちひしがれているのかもしれません。
また、「こんな遅くまで何やってんのよ~」と、ブチ切れたメッセージを送りつけてくるあなたの“鬼嫁”は、もしかしたら今日、あなたのために最高のもてなしをしようと早くから準備し、あなたの帰りだけを待っていたのかもしれません。
後で知ってみると、相手は精一杯、あなたのことを思ってくれていた―。そんなことって多いのではないでしょうか?
一方が頑張ろうと思っている時、他方はそっぽを向いていて、逆に他方がようやく反省し、努力を始めた頃には、頑張っていた方が心を閉ざしてしまった―、そんなすれ違いも目にしてきました。
二人に悪気はありません。問題は“タイミング”にあるのです!!
大切なのは「思いやり」
“自分の事情”しか見えていない場合、投入した分だけ、憤りも増すのでしょう。
「こんなにしてあげたのに!」「あり得ない!」「誠意がない!」…。
その思いはよく分かります。でも、コミュニケーションの基本は“相手への思いやり”なのです。
上の例で言うなら、スマホを両手で握りしめ、目を皿にして、相手からの返信を待ち続けるよりも、相手の事情を気遣い、「あぁ、忙しいんだな」「何か事情があるに違いない」と考えてあげる―。
それが“思いやりの心”なのかもしれません。
逆に「無理し過ぎないでね。食事済ませて待ってるよ」等と言ってあげられたなら、相手はそうしたあなたの配慮に、心底、感謝することでしょう。
また、自分が大変な時も、「今、それどころじゃないんだ!」と考えず、連絡をくれる相手のことを気遣い、「ありがとう。落ち着いたら連絡するよ」など、最低限の誠意を示しましょう。
その僅かな気遣い、相手への思いやりが、二人のすれ違いを未然に防いでくれるのです。
愛は“心を受ける”と書きます。相手を思いやり、相手の気持ちを受け止めましょう。
大切なことは、“相手のミットにボールを届けること”だからです。
さいごに ― 賢者の贈り物
O・ヘンリが『賢者の贈り物』という夫婦の物語を書きました。よく知られる物語です。
彼らはとても貧しい生活をしていましたが、互いにクリスマスの贈り物をしてあげたいと考えました。
妻は、夫の宝物であった“懐中時計”を首から吊るす鎖を買うために、自らの“美しい髪”を売り払います。彼女は夫ががっかりしないか心配しながら、彼の帰りを待ちました。
家に帰った夫は、短くなった妻の髪をみて驚き、こう言いました。「僕のプレゼントを開けてごらん、そうしたら僕が驚いた理由が分かるよ」。
夫のプレゼントは、妻が欲しがっていた、彼女の長い髪に差す櫛だったのです。
妻は気を取り直して、夫にプレゼントを渡します。が、例の時計を吊るす鎖を見た夫は、笑みを浮かべながら言いました。
「プレゼントのことは忘れよう。僕はその“櫛”を買うために、あの時計を売ったんだよ」。
二人のプレゼントは、客観的に見れば、「愚かな贈り物」であったに違いありません。しかし、この物語のタイトルは「賢者の贈り物」なのです。
それは恐らく、彼らが“幸福な夫婦”になる上で最も大切なこと、“互いを思いやること”を知っていたからに違いありません。
まとめ
- 夫婦間のすれ違いをなくすには“自分がして欲しいこと”を相手にするのではなく、“相手がして欲しいこと”を相手にすること。
- 夫婦は互いに求めるものが異なり、心に響く愛情表現も異なるため、“相手のニードを知る”(相手のミットを見る)ことが大切。
- 夫婦のコミュニケーションに完全なマニュアルはないため、相手に関心を注ぐことが大事であり、思いやる心が大切である。