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懐中時計

夢野久作 著『懐中時計』をご紹介します。

わずか数行の短編ですが、人として大切な心構えを学べます。

懐中時計

 懐中時計が箪笥たんすの向う側へ落ちて一人でチクタクと動いておりました。

 ねずみが見つけて笑いました。
「馬鹿だなあ。誰も見る者はないのに、何だって動いているんだえ」

「人の見ない時でも動いているから、いつ見られても役に立つのさ」
と懐中時計は答えました。

「人の見ない時だけか、または 人が見ている時だけに働いているものは、どちらも泥棒だよ」

 鼠は恥かしくなってコソコソと逃げて行きました。

他人から見えない「影の努力」こそが、偉大な人物となるための鉄則。

プロ意識とは、このお話に出てくる懐中時計のような精神ではないでしょうか?